2026年8月11日付の東京商工リサーチ(「TSR情報全国版」)が、

『「ケーキや菓子店」の倒産が過去最多 ~ 値上げで帰省土産も我慢、贈答慣習の変化も影響 ~』

と題した見出し記事を報じていました。

 

以下に、ケーキや菓子店の倒産が増加している背景と今後の予想、地域社会への影響について考察しました。

 

《記事の要約》

<ケーキ・和菓子店の倒産が急増 原材料高と「節約志向」が直撃>

 

ケーキや和菓子などを販売する菓子店の倒産が急増している。

東京商工リサーチによると、2026年1~7月の「菓子小売業」の倒産は45件に達し、同期間として過去30年で最多となった。

2025年年間の58件を上回る可能性も高まっている。

 

背景にあるのは、原材料費や光熱費、人件費などの上昇だ。

ケーキや菓子には小麦、砂糖、乳製品、卵、油脂など多くの材料が必要で、円安も輸入原料の調達コストを押し上げている。

農林水産省も、菓子製造では原材料に加え、エネルギー費や人件費など幅広いコストが上昇していると指摘している。

 

一方、店側が値上げすれば、消費者の買い控えを招きやすい。

生活必需品や光熱費の負担が増える中、ケーキや和菓子などの嗜好品は節約の対象になりやすいからだ。

 

2026年に倒産した45件のうち41件、91.1%が「販売不振」を原因としている。

また約7割が資本金1000万円未満の小・零細事業者で、44件が破産だった。

物価高の影響を受けた倒産は15件、人手不足を要因とする倒産も5件発生している。

 

さらに、お中元や暑中見舞いなど従来型の贈答需要が縮小していることも逆風だ。

知名度の高かった「お菓子の太子堂」を運営する太子堂も7月末に破産を申請した。

 

菓子店は単なる販売店ではない。

誕生日、祝い事、帰省土産など地域の暮らしや文化を支える存在でもある。

今後は価格競争だけでなく、「その店でなければ買えない商品や体験」をどう生み出すかが、生き残りを左右しそうだ。

(要約、ここまで)

 

《筆者の考察》

<「ケーキが高い」だけではない 街の菓子店を襲う五重苦>

 

ケーキや和菓子店の倒産急増は、現在の日本経済を象徴する現象と言える。

2026年1~7月の倒産45件の91.1%が販売不振であり、約7割を小・零細企業が占める。

つまり、一時的な資金難というより「売れても利益が残らず、値上げすると客が減る」という構造問題なのである。

 

第一の要因は原材料高だ。

洋菓子なら小麦、砂糖、卵、乳製品、生クリーム、チョコレート、果物、油脂などを使う。

さらに箱や包装材、冷蔵設備の電気代、配送費、人件費まで上昇している。農林水産省も菓子について、原材料だけでなくエネルギーや人件費の上昇が価格形成上の課題になっていると指摘する。

 

第二は、消費者側の節約である。

米や野菜、電気料金など生活必需品が高くなれば、家計はまず不要不急の支出を削る。

600円のケーキを家族4人分買えば2400円になる。

「以前は月2回だったが誕生日だけ」というメリハリ消費が広がるのは自然だろう。

 

第三は競争環境の変化だ。

スーパーやコンビニでも質の高いスイーツが数百円で買え、通販や冷凍スイーツも充実した。

専門店には単なる「甘い物」以上の価値が必要になった。

 

第四は贈答文化の変化である。

お中元や暑中見舞いといった形式的な贈答は縮小している。

一方、「地元の名店」「ここだけの商品」といったストーリー性のある手土産需要は残る。

今後伸びる店は、日常の安売り競争より、誕生日、帰省、観光、季節行事など「ハレの日」に選ばれる店だろう。

 

第五が人手不足と事業承継である。

菓子づくりには職人技が必要だが、早朝勤務や繁忙期の長時間労働もあり、人材確保は容易ではない。

 

今後、倒産はさらに増える可能性がある。

ただし「街の菓子店がなくなる」という意味ではない。淘汰と再編が進み、

1)看板商品の明確化
2)商品数を絞った高効率経営
3)予約・EC活用
4)地域食材との連携
5)観光・ふるさと需要の取り込みができる店に需要が集中
すると予想する。

 

地域への影響も小さくない。
菓子店が消えれば雇用だけでなく、地元農家、乳業、製粉、包材、物流など取引先にも影響する。

そして何より「誕生日はあの店のケーキ」「帰省したらあの和菓子」という地域の記憶が失われる。

 

だから必要なのは、無理に消費を増やすことではない。

普段は節約し、特別な日には地域で価値あるものを選ぶ。「安さ」だけでなく、品質、物語、地域性まで含めて選択する消費である。

企業側も環境変化を読み、リスクと機会を捉えて商品と経営を変える。まさにISO思考で求められる「変化への対応」が、街の菓子店にも問われている。
 

 

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