2026年8月7日付の南海放送が、
『53年ぶりの一歩前進 四国新幹線 国の調査対象路線に選定【愛媛】』
と題した見出し記事を報じていました。
以下に、この記事を要約し、四国新幹線実現の可能性と完成した際の経済効果について、考察しました。
《記事の要約》
<四国新幹線、53年ぶりに前進 国交省が需要・ルート調査へ>
半世紀以上構想段階にとどまってきた「四国新幹線」が、実現に向けて新たな一歩を踏み出した。
国土交通省は2026年8月7日、四国新幹線と東九州新幹線について、将来の整備を検討するための調査を行う事業者の募集を始めた。
四国4県や経済団体などでつくる「四国新幹線整備促進期成会」は、長年にわたり国に整備を要望してきた。
四国新幹線は1973年、全国新幹線鉄道整備法に基づき、将来建設すべき「基本計画路線」に位置付けられた。
しかし、その後53年間、建設を具体化する「整備計画」への格上げには至っていない。
今回の調査では、将来の輸送需要をはじめ、想定されるルートや駅の位置、事業性など、整備の判断材料となる基礎的な検討が行われる。
四国側はこれまで、岡山から四国4県の県庁所在地を結ぶフル規格新幹線を想定し、整備延長約302キロ、概算事業費約1兆5700億円、年間約169億円の経済波及効果などを試算している。
実現すれば、四国4県の主要都市間はおおむね1時間以内、新大阪とは約1時間半、東京とも約3時間程度で結ばれるとの試算もある。
観光や企業立地、交流人口の拡大などへの期待は大きい。
一方、人口減少や巨額の建設費、採算性、地方負担など課題は多い。
今回の調査は着工決定を意味するものではなく、整備計画への格上げを判断するための入口にすぎない。
愛媛県の中村時広知事は「非常に重要なステップ」と評価し、四国が一丸となって実現への取り組みを加速させる考えを示している。
(要約、ここまで)
《筆者の考察》
<四国新幹線は夢から現実へ進めるか 問われる「時間を買う投資」の価値>
四国新幹線が53年ぶりに動き始めた。
ただし、今回始まるのは需要やルートなどを調べるケーススタディーであり、「建設決定」ではない。
新幹線は基本計画から調査、整備計画、営業・建設主体の決定、着工へと進む。さらに着工には、安定財源、収支採算性、投資効果、JRの同意などの条件がある。
実現可能性を左右する最大の壁は、やはり人口と建設費だ。
国立社会保障・人口問題研究所は2050年まで全国の地方圏で人口減少が続くと推計しており、四国も例外ではない。
建設まで20年以上を要するとすれば、開業時の市場規模を現在の人口だけで評価することはできない。
加えて、四国側の従来試算では約302キロで概算1兆5700億円だが、近年は資材費や人件費が大きく上昇しており、実際の建設費が膨らむ可能性は高い。
それでも新幹線には、単純な運賃収入だけでは測れない効果がある。
四国側の試算では年間約169億円の経済波及効果が見込まれ、4県都間が1時間以内、新大阪まで約1時間半となれば、観光客の周遊、企業の営業活動、大学や医療機関への移動、企業立地などの条件は大きく変わる。
特に高松、松山、高知、徳島が一つの経済圏として動けるようになれば、「県ごとの市場」から「四国全体の市場」への転換も期待できる。
さらに南海トラフ地震を考えれば、高規格鉄道を新たな国土軸として整備することには、交通網の代替性を高める意味もある。四国側も国土強靱化の観点を整備理由の一つに掲げている。
一方で注意したいのは、「新幹線さえ造れば地方が活性化する」という発想である。
駅から先の地域交通が弱ければ観光客は広がらず、逆に大阪などへの人口・消費流出を促す「ストロー効果」も起こり得る。
駅周辺開発、在来線、バス、観光戦略を一体化しなければならない。
四国新幹線の本質は、鉄道を造るか否かだけではない。
人口減少時代に巨額の公共投資を行い、「移動時間を短縮すること」が地域の将来価値をどこまで高めるのかを問う国家的な投資判断である。
ISO思考でいえば、期待される機会だけでなく、人口、財源、利用者減少というリスクまで数値で検証することが必要だ。
今回の調査は、その是非を感情ではなくデータで判断する重要な第一歩といえる。
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