2026年7月21日付の「TVQ九州放送」が、
『卑劣な犯行!うきは市の農園から梨5000個盗まれる』
と題した見出し記事を報じていました。
この被害に遭った農家は、昨年も同様の被害があり、さまざまな対策をしてきたそうですが、梨作りは、廃業する意向だそうです。
以下に、この記事を要約し、この手の被害から身も守るための対策と流通経路の実態について、考察しました。
《記事の要約》
福岡県うきは市の梨農家で、収穫直前の梨約5000個が盗まれた。
被害に遭ったのは贈答用として人気の高い「幸水」で、約70本の木のうち50本分が、2026年7月16日から17日にかけてほぼ根こそぎ持ち去られた。
農園を営む佐々木浩喜さんは、2025年にも幸水約6000個を盗まれている。
夏場の主要な収入を失ったことで、経営していた会社は破産。
従業員にも辞めてもらい、個人事業主として再起を目指していた。
今回は、人が近づくと警戒音が鳴るセンサーや柵を設置していたが、二度目の被害を防ぐことはできなかった。
現場は軽トラックも入りにくい細い道の先にあり、農園の場所や収穫時期を知る人物が関与した可能性もある。
5000個もの梨を短時間で収穫し、運び出すには一定の人数や車両、選別や保管の知識も必要とみられ、警察は複数犯や昨年の事件との関連も視野に捜査している。
収穫前の農作物を狙う窃盗は全国で繰り返されている。
果物は収穫期が限られ、外見だけでは正規品と盗品を判別しにくい。
直売、仲介業者、飲食店、インターネット販売など、複数の経路に紛れ込む可能性があり、犯人の特定を難しくしている。
佐々木さんは被害届を提出したが、度重なる被害に「梨栽培を辞める」と語る。
農作物窃盗は商品だけでなく、農家が積み重ねてきた時間、収入、雇用、後継者の意欲まで奪う。警察や自治体、JA、流通事業者が連携し、生産から販売までを守る仕組みづくりが急務となっている。
(要約、ここまで)
《筆者の考察》
<収穫直前を狙う農作物窃盗――畑と流通を一体で守れ>
農作物の大量窃盗が悪質なのは、単に市場価格相当の商品を盗むだけではない点にある。
梨は剪定、受粉、摘果、防除、高温対策など一年近い作業を経て、ようやく収穫を迎える。盗まれれば、その年の売上だけでなく、人件費や資材費も回収できない。
被害が続けば離農や雇用喪失、耕作放棄地の増加を招き、地域の食料供給や栽培技術の継承にも影響する。
大量窃盗では、偶然通りかかった人物が数個持ち去るケースとは異なり、収穫時期、品種、園地への進入路、運搬方法を把握した計画性が疑われる。
盗品の流通経路としては、知人への販売、無許可の仲介、飲食店や小売店への持ち込み、露店、インターネットやSNSを利用した個人販売などが考えられる。
ただし、事件ごとに経路は異なり、外国人や特定の集団の犯行と証拠なく決めつけるべきではない。重要なのは、販売者ではなく商品の出所を確認することである。
農家の防犯は、一つの機器だけでは不十分だ。
防犯カメラは園内だけでなく、出入口や周辺道路に設置し、車両の特徴や進行方向を記録する。
人感センサー、照明、警報器、施錠できるゲート、目立つ警告看板を組み合わせ、収穫期には巡回時間を不規則にする。
近隣農家、JA、自治会、警察が収穫予定や不審車両の情報を共有することも有効である。
地域ぐるみでカメラと巡回を強化し、盗難件数が減った事例も報告されている。
ただし、広い農地を個々の農家だけで守るのには限界がある。
自治体は防犯設備への補助、共同カメラの設置、パトロール、防犯診断を行うべきだ。
被害後は現場を触りすぎず、足跡、タイヤ痕、落下物、映像、販売情報を速やかに警察へ提供する必要がある。
スマート農業用のカメラやセンサーは、生育管理だけでなく、盗難や鳥獣被害の監視にも利用できる。
流通側の対策も欠かせない。
市場、直売所、飲食店、ネット販売事業者は、大量の商品を持ち込む販売者に対し、生産者名、農園所在地、収穫日、仕入れ伝票を確認する仕組みを整えるべきだ。
農林水産省の食品トレーサビリティーの考え方も、入荷元と販売先を記録し、商品の移動を追跡できる状態を基本としている。
ISO思考でいえば、畑の防犯だけを強化する部分対策では足りない。
収穫、保管、運搬、販売という一連の工程を見渡し、盗みやすい場所と売りやすい経路の両方を遮断する必要がある。
農家の自己責任にせず、地域と流通全体で「盗んでも売れない仕組み」をつくることが、最も強い抑止策となる。
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