2026年7月20日付の「弁護士ドットコム」が、

『地主じゃないのに「この田んぼ貸すよ」、契約書も許可もなし…いまも地方に残る「ヤミ小作」の実態』

と題した見出し記事を報じていました。

以下にこの記事を要約し、この「ヤミ小作問題」が発生する要因と現在発生している多くの問題点と社会への影響について、考察しました。

 

《記事の要約》

農地の貸し借りは、一般の土地取引とは異なり、農地法に基づいて農業委員会の許可を受けることが原則とされている。

しかし実際の農村部では、契約書も作成せず、行政への届け出も行わない「ヤミ小作」と呼ばれる違法な貸借が今なお少なくない。

 

背景には、「昔からこのやり方だった」「近所同士だから信用できる」といった地域の慣習がある。

手続きが煩雑で時間がかかることも、正式な制度を利用しない理由の一つとなっている。

 

しかし、こうした口約束による貸借は、深刻なトラブルを招く恐れがある。

栃木県の農家は、近隣住民から「田んぼを貸す」と言われ、営農計画を立てていたところ、後になって本当の地主が別におり、しかも数十年前から他人に貸していたことが判明したという。

契約内容を知る当事者は既に亡くなっており、返還交渉は難航している。

 

さらに、「貸す」と申し出た人物自身が地主ではなく、自ら借りている農地を無断で第三者へ貸そうとしていたケースもある。

元の貸借契約も口約束だけで続いていたため、誰がいつから耕作しているのかさえ分からない状況だった。

 

農業委員会による許可制度は、こうした権利関係の混乱や無断転貸を防ぐために設けられている。

農林水産省も、農地法に違反した貸借や売買には、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金が科される可能性があるとしている。

 

近年は食料安全保障やコメ価格の上昇を背景に農業への関心が高まっている。

「昔から大丈夫だった」という慣習に頼るのではなく、適正な手続きを通じて農地を管理することが、地域農業の持続的な発展と将来の相続トラブル防止にもつながる。

(要約、ここまで)

 

《筆者の考察》

<「ヤミ小作」が映し出す日本農業の課題――慣習と法制度の狭間で>

 

「ヤミ小作」とは、農地法で定められた農業委員会の許可を受けずに農地を貸し借りしたり、借りた農地を地主の承諾なく第三者へ又貸ししたりする違法な行為である。

本来、農地は食料生産という公共性の高い資産であり、自由な売買や賃貸借は認められていない。

農地法は、農地の適正利用や耕作放棄地の防止、投機目的の取得防止などを目的としている。

 

それにもかかわらず、ヤミ小作がなくならない最大の理由は、農村社会に根付いた「昔からの付き合い」という慣習にある。

地主と耕作者が長年の信頼関係だけで貸借を続け、契約書を作らず、農業委員会への申請も行わない例は少なくない。

さらに、申請手続きが煩雑で時間を要することも、制度利用をためらわせる要因となっている。

 

しかし、この慣習は世代交代や相続を迎えた途端、大きな問題へ発展する。

貸した本人が亡くなり、相続人は「誰に貸しているのか分からない」。

借りる側も「口約束だから権利を証明できない」。さらに、借主が無断で第三者へ貸している「又貸し」が重なると、真の権利関係は一層複雑になる。

こうした混乱は、新規就農者が農地を確保する妨げとなり、地域農業の新陳代謝も阻害する。

 

社会への影響も決して小さくない。

耕作予定だった農地が使えなくなれば、生産計画は狂い、農業経営に大きな損失が生じる。

相続を契機とした訴訟や近隣住民との対立は地域コミュニティーの信頼関係も損ない、耕作放棄地の増加にもつながる。

さらに、行政が実態を把握できないため、農業政策や農地集積の計画にも支障を来す。

 

今後、国や自治体には三つの取り組みが求められる。

1)農地バンクや農地中間管理事業のさらなる活用促進
2)農地の貸借手続きをデジタル化し、申請期間の短縮と利用者負担の軽減を図る
3)相続時や農地所有者変更時に貸借状況を確認する仕組みを強化し、権利関係を見える化する
などである。

 

一方、農業者や地主も「昔から大丈夫」という考えを改め、契約書の作成、農業委員会への届け出、権利関係の定期的な確認を徹底する必要がある。
農地は個人の財産であると同時に、日本の食料生産を支える重要な社会資本でもある。

 

ISO思考では、「問題が起きてから対応する」のではなく、「リスクを事前に見える化し、予防する」ことを重視する。

ヤミ小作問題もまさに同じである。口約束という曖昧な運用を放置せず、ルールに基づく適正な管理へ転換することが、日本の農業を次世代へ引き継ぐ第一歩になるだろう。
 

 

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