2026年6月15日付の「ITV あいテレビ」が、

『「ショックですし、本当に悔しい」県開発の高級かんきつ“紅プリンセス”中国に流出か…品種登録手続き中で、愛媛からの流出でも差し止めできず』

と題した記事を報じていました。

以下に、この記事を要約し、“紅プリンセス”が中国に流出した背景と影響、および、種苗法や品種登録制度の課題について、考察しました。

 

《記事の要約》

愛媛県が約20年の歳月をかけて開発した高級かんきつ「紅プリンセス」が、中国で販売されている可能性が浮上し、関係者に衝撃が広がっている。

 

紅プリンセスは、「紅まどんな」と「甘平」を掛け合わせて誕生した新品種で、県のみかん研究所が長年の研究開発を経て完成させた。高い糖度と優れた食味を持ち、愛媛県の次世代ブランド柑橘として期待されている。

 

県は苗木の販売先を許可事業者に限定し、県外への持ち出し禁止についても同意を求めるなど厳重な管理を行ってきた。

しかし最近、中国の大手通販サイトで「紅プリンセス」を名乗る果実が販売されていることが判明。苗木や穂木などが海外へ流出した可能性が指摘されている。

 

この事態について、中村時広知事は「本当に悔しい」と怒りをあらわにした。

「研究所の職員たちが十数年、失敗を重ねながら到達した成果であり、厳重管理の中で起きたことは大変ショックだ」と語り、無念さをにじませた。

 

現在、愛媛県は中国や韓国で品種登録の手続きを進めているが、まだ登録は完了していない。

そのため、仮に中国で販売されているものが愛媛県から流出した正規品種だったとしても、現段階では法的な差し止めが難しい状況にある。

 

愛媛県はまず、中国で販売されている果実が本当に紅プリンセスなのか、遺伝子解析なども含めた事実確認を進める方針だ。

今回の問題は、シャインマスカットやイチゴなど過去の品種流出問題とも重なり、日本の農業技術や知的財産をどのように守るかという大きな課題を改めて浮き彫りにしている。

(要約、ここまで)

 

《筆者の考察》

<“紅プリンセス”流出の背景と種苗法・品種登録制度の課題>

 

今回の「紅プリンセス」問題は、単なる柑橘の流出事件ではない。

日本の農業技術と知的財産保護の限界を示す象徴的な出来事といえる。

 

まず、流出の原因として考えられるのは、研究段階や試験栽培段階での苗木・穂木の持ち出しである。

柑橘類は果実が実るまで数年を要するため、中国で既に販売されているとすれば、かなり早い段階で苗木が国外へ渡った可能性が高い。

 

考えられる経路は複数ある。

研究施設や試験農場からの不正持ち出し、試験栽培農家からの流出、関係者による情報漏えいなどだ。

もちろん、中国で販売されているものが別品種で、名称だけを流用している可能性もあるため、まずはDNA鑑定による事実確認が必要である。

 

仮に本物であれば、日本農業への影響は小さくない。

新品種開発には数十億円規模の研究費や長年の人材育成が必要である。

今回も約20年の研究成果であり、その果実を海外で無断増殖・販売されれば、日本側は開発コストを回収できないまま競争相手を育てることになる。

 

実際、過去にはシャインマスカットやイチゴ品種などで類似問題が発生した。

海外で大量生産されることで価格競争が起こり、日本ブランドの価値が低下する懸念もある。

 

一方で、今回の問題は種苗法や品種登録制度の課題も浮き彫りにした。

日本では2021年の種苗法改正で登録品種の海外持ち出し規制が強化された。

しかし、制度が整っていても海外で品種登録が完了していなければ、現地で権利行使できない。

 

つまり、日本国内の登録だけでは十分ではないのである。

 

今後必要なのは三つの対策だ。


1)海外主要市場での同時出願・早期登録
国内登録後に海外登録を検討するのではなく、開発完了時点から国際戦略として進めるべきだ。

 

2)研究施設や試験農場のセキュリティ強化
民間企業の研究所並みの入退室管理や監視体制の導入も検討すべきだろう。

 

3)品種そのものだけでなくブランド戦略を強化すること
ニュージーランドのゼスプリがキウイで成功したように、「愛媛県認証」「正規生産者マーク」などの仕組みを構築し、本物と模倣品を市場で明確に区別する必要がある。

 

農業は食料生産であると同時に知的財産産業でもある。
日本が世界に誇る新品種を守るためには、「作る力」だけでなく「守る力」を高めることが求められている。
 

 

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