2026年5月4日付で、東京商工リサーチが、

『2025年度「医療・福祉事業」倒産、過去最多 ~ 健康と生活を支援する事業者の倒産急増 ~』

と題した記事を報じていました。

以下に、この記事を要約し、医療・福祉事業者の倒産が急増している要因とその影響と政府や自治体が実施すべき対応策について、考察しました。

 

《記事の要約》

医療機関や介護事業者の倒産が急増している。2025年度の倒産件数は478件に達し、バブル期以降の38年間で最多を更新した。

金融危機やリーマン・ショック時をも上回る異例の水準で、医療・福祉分野の経営環境の悪化が深刻化している。

 

医療や介護は公的性格が強く、診療報酬や介護報酬といった公定価格に依存しているため、自由に価格転嫁ができない。

その一方で、物価上昇や人件費増加が進み、収支の悪化が顕著となっている。

また、経営者の高齢化や人口減少による利用者減少も重なり、特に小規模事業者の経営が行き詰まっている。

 

倒産の内訳では「老人福祉・介護事業」が最多で182件を占め、続いて療術業や障害者福祉事業などが続く。

原因の7割以上は売上不振であり、収入不足が主因となっている。

従業員5人未満の小規模事業者が全体の7割以上を占める点も特徴だ。

 

コロナ禍では資金繰り支援により一時的に倒産は抑えられたが、その反動もあり、2023年度以降は急増に転じた。

政府は補正予算による支援を実施しているものの、倒産は3年連続で過去最多を更新しており、抜本的な対策の必要性が高まっている。

地域に密着した小規模事業者の淘汰は、医療や介護を必要とする人々にとって重大な影響を及ぼしかねない。

(要約、ここまで)

 

《筆者の考察》

<倒産急増の要因・影響・対応策>

 

医療・福祉事業者の倒産急増は、単一の要因ではなく、「制度的制約」と「経済環境の変化」が複合的に作用した結果である。

 

最大の要因は、公定価格制度とインフレのミスマッチだ。

医療・介護サービスは診療報酬や介護報酬によって収入が規定されており、物価や人件費が上昇しても、即座に価格へ転嫁できない。

このため、電気代や資材費の高騰、賃上げ圧力に対応できず、利益が圧迫される構造になっている。

いわば「デフレ前提の制度」がインフレ局面で機能不全に陥っていると言える。

 

第二に、人手不足の深刻化がある。

介護や看護の現場は賃金水準が低く、労働負担も大きいため、人材確保が極めて困難だ。

結果として、必要な人員を確保できず事業継続が困難になる「人手不足型倒産」が増加している。

さらに、地方では人口減少により利用者自体が減る「需要不足型倒産」も発生しており、地域によっては二重苦の状態にある。

 

第三に、構造的な経営問題である。

過去の報酬引き下げや慢性的な低収益体質により、内部留保が乏しく、外部環境の変化に耐えられない事業者が多い。

特に小規模事業者は規模のメリットが働かず、コスト上昇の影響を直撃する。

 

こうした倒産の増加は、国民生活に直接的な影響を及ぼす。

身近な診療所や介護施設が消えることで、医療アクセスの悪化や介護難民の増加が懸念される。

特に高齢化が進む日本では、需要が増えるはずの分野で供給が縮小するという深刻なミスマッチが起きかねない。

 

では、政府や自治体は何をすべきか。

1)報酬制度の見直し

物価や賃金動向に連動した柔軟な報酬改定を行い、最低限の経営安定を確保する必要がある。

 

2)業務効率化支援

ICT導入や事務負担軽減に対する補助を拡充し、現場の生産性を高めることが重要である。

 

3)地域単位での再編・連携支援

小規模事業者単独では持続困難な場合、医療・介護のネットワーク化や統合を進め、地域全体でサービスを維持する仕組みが求められる。

 

4)人材確保策の強化
賃上げ支援や外国人材の活用、職場環境改善を通じて、働き続けられる環境を整える必要がある。

 

医療・福祉は単なる産業ではなく社会インフラである。
倒産の増加は「市場の淘汰」では済まされず、国家として支えるべき領域である。
今求められているのは、短期的な資金支援ではなく、制度全体の再設計である。
 

 

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