旧聞に属する話題ですが、2025年9月25日付の東洋経済が、
『【全教科下がった】子どもの学力低下、その背景は複雑? 保護者の「無理に頑張らせない」考え、コロナ禍、測る指標が「古い」説も...』
と題した記事を報じていました。
以下に、この記事を要約し、「本当に子どもの学力が低下したのならその原因は何で、国の教育政策としてどうするべきか」および「現状の“子どもの学力”の測定指標の課題(問題点)」について考察しました。
《記事の要約》
2024年度の「経年変化分析調査」の結果を受け、子どもの学力低下が改めて注目されている。
調査は全国から抽出された小学6年生約3万人と中学3年生約7万人を対象に、小6は国語・算数、中3は国語・数学・英語について実施された。
2013年度から原則3年ごとに行われ、ほぼ同一問題で推移を比較できるのが特徴だ。
今回の結果では、500点を基準とする平均スコアが全教科で低下した。
小6は国語489.9、算数486.3、中3は国語499.0、数学503.0、英語478.2と、特に算数と英語の下落幅が大きい。
背景として指摘されるのが、コロナ禍による学習環境の混乱と、保護者の学習観の変化である。
家庭学習時間は減少し、スマートフォンやゲームの使用時間は増加、保護者の関与は熱心層と放任層に二極化しているという。
一方で、調査結果の受け止め方には慎重さも求められる。
学習指導要領は近年、「主体的・対話的で深い学び」「探究的な学び」へと大きく舵を切った。
こうした教育の方向転換が進む中、従来型の知識・技能中心の指標で学力を測り続けることの妥当性には疑問も残る。
宇都宮海星学園理事長の石川一郎氏は、高次の思考力を重視する新学習指導要領の精神を評価指標に反映しなければ、教育の実態を正しく捉えられないと指摘する。
学力低下という言葉の裏側には、教育の「何を測るのか」という根本的な問いが横たわっている。
(要約、ここまで)
《筆者の考察》
<本当に学力は低下したのか、その原因と国の教育政策>
今回の調査結果をもって「子どもの学力が低下した」と断定する前に、二つの論点を分けて考える必要がある。
一つは、基礎学力そのものが弱体化している可能性。
もう一つは、学力を測る物差しが教育の実態とずれてきている問題である。
まず原因論だが、最大の要因はやはりコロナ禍だ。
小6・中3はいずれも学習習慣を形成すべき時期を、休校・分散登校・行事縮小の中で過ごした。
対面での反復演習や即時のフィードバックが不足し、「勉強は毎日やるもの」という生活習慣が定着しにくかった。
学力低下というより、学習習慣の断絶が基礎学力に影響したと見る方が正確だろう。
次に保護者の意識変化である。
大学入試や高校入試の多様化により、「必死に勉強しなくても何とかなる」という空気が広がった。
努力と成果の結びつきを実感しにくい社会環境も、子どもへの期待値を下げている。
ただし、これは短期間で急変した要因というより、コロナ禍によって一気に顕在化した構造的問題といえる。
教育政策として国が取るべき方向は明確だ。
第一に、基礎学力の再定義である。
読み・書き・計算・語彙力といった「考えるための土台」を、探究やICT活用の前提条件として位置付け直す必要がある。
第二に、GIGAスクール構想の軌道修正だ。
端末活用は目的ではなく手段であり、紙教材や対面指導との適切な併用を国として明示すべきである。
第三に、家庭へのメッセージ発信だ。「学習は才能ではなく習慣である」という認識を、行政が責任を持って社会に共有することが不可欠だ。
<学力測定指標の課題>
現行の学力調査の最大の問題は、新学習指導要領が重視する「高次な思考力」を十分に測れていない点にある。
従来の日本型評価は「知識・理解・応用」に強みを持つが、分析・評価・創造といった領域は数値化しにくい。
にもかかわらず、同一指標で経年比較を行い「下がった」「上がった」と議論することは、教育の質的変化を見落とす危険がある。
重要なのは、基礎学力の定量評価と、高次思考力の質的評価を分けて設計することだ。
前者は全国調査で把握し、後者はポートフォリオや記述・探究成果で評価する。
教育政策にも、まさにPDCAを回すような“ISO的思考”が求められている。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ994号より)
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