「環境パフォーマンス」とは、組織が自らの環境方針と目標に照らして、環境影響の低減をどの程度達成できているかを示す定量的または定性的な成果です。
化学製品製造業においては、原材料の特性・工程の複雑性・排出物の多様性から、環境への潜在的影響が極めて高いため、パフォーマンス指標も複数の側面を包括的に捉える必要があります。
特に注目されるのは以下の5点です:
・有害化学物質の漏洩・排出防止
・揮発性有機化合物(VOC)や温室効果ガスの排出管理
・エネルギーと水資源の使用効率
・化学反応工程での副生成物や廃棄物の最小化
・労働者・近隣住民へのリスク配慮と情報開示
《環境パフォーマンスの具体例と取組み方》
【例1】VOC排出量の削減
<指標>
年次のVOC総排出量(kg/年)、製品1トンあたり排出量(kg/t)
<取組み方>
・溶剤系から水系原料への切替
・処理工程における活性炭吸着塔や冷却凝縮装置の導入
・生産工程の密閉化と設備のリーク検知(LDAR: Leak Detection and Repair)強化
・ISO14064等の排出量検証スキームの活用
【例2】化学反応残渣の削減と再資源化
<指標>
廃棄副生成物の発生量(kg/月)、リサイクル率(%)
<取組み方>
・原料配合の最適化による反応効率の向上
・触媒の選定と反応温度の適正管理による未反応物の低減
・残渣を副原料として他用途に再利用(例:道路舗装材)
・廃棄物ごとのトレーサビリティ管理と業者との再資源化連携
【例3】排水中の有機・無機汚染物質の管理
<指標>
COD、SS、重金属濃度、pH、窒素・リン濃度などの月次平均値
<取組み方>
・生産設備からの排水系統を分類し、前処理設備を設置
・化学凝集・生物処理・活性炭吸着の組合せ処理による除去率の最適化
・オンラインモニタリング機器による連続監視と異常値検出の自動通知
・排水処理技術(MBR膜・オゾン酸化等)の定期的な更新と最適化
【例4】製品設計による環境影響の低減(環境配慮型製品の展開)
<指標>
製品ライフサイクルあたりの炭素フットプリント(kgCO2-eq)、非危険物認定数
<取組み方>
・LCA(ライフサイクルアセスメント)による影響評価と設計反映
・バイオベース原料への転換(例:植物由来の界面活性剤)
・梱包材・容器におけるプラスチック削減とリサイクル材活用
・顧客との共同での使用段階の環境影響低減提案
<結論>
化学製品製造業における環境パフォーマンスは、「工程管理の巧拙」だけでなく、「製品設計から廃棄物管理、社会とのコミュニケーションまでを統合的に評価・改善する能力」によって決まります。
ISO14001では、「順守義務の達成」と「継続的改善」を環境パフォーマンス向上の核として位置づけており、化学業界においてはこれを以下のように運用すべきです。
・環境目的・目標をKPIで定量化し、モニタリングと見直しを年次で実施
・緊急時(漏洩・火災など)を想定した訓練とインフラ整備
・社内教育による「作業員の行動」が環境パフォーマンスに与える影響の最小化
・ISO45001やISO50001との統合で、エネルギー・安全・環境のバランスを取る運用
このような視点から、単なるコンプライアンス対応にとどまらず、「環境パフォーマンスの見える化と社会への説明責任」を果たすことが、今後の化学製品製造業の競争力にも直結するのです。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ975号より)
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