2025年12月15日付の毎日新聞が、

『3次会で上司からセクハラ、初の労災認定 大阪地裁「断るのは困難」』

と題した記事を報じていました。

以下に、この記事を要約し、業務上の食事会に関して会社と労働者が注意や配慮すべき点について、考察しました。

 

《記事の要約》

会社の業務後に行われた3次会で上司からセクハラを受け、精神障害を発症したとして、ITエンジニアの女性が労災認定を求めた訴訟で、大阪地裁は2025年12月15日、休業補償給付を不支給とした国の処分を取り消した。

中島崇裁判長は、「女性が3次会への誘いを拒否することは事実上困難だった」と指摘した。

代理人弁護士によると、2次会や3次会でのセクハラを理由に労災が認定されたのは初めてという。

 

判決によると、女性は有期雇用契約でIT関連企業の西日本支社に勤務していた。

2019年6月、東京出張を命じられ、業務後に会社主催の懇親会に出席。

その後、西日本支社長らと2次会、3次会に参加した。3次会はガールズバーで行われ、支社長の指示により女性店員とのキスや身体接触を強要された結果、女性は適応障害を発症した。

 

労災認定には、事業主の支配下にある状態で疾病が生じたことが必要とされる。

労働基準監督署は「3次会への参加は個人の意思」として労災を否定したが、裁判所は、出張前に支社長が業務後の予定を空けるよう指示していた点などから、3次会は出張行程の一部であり、事業主の支配下にあったと判断した。

さらに、正社員登用に影響力を持つ立場の支社長からの誘いを断ることは困難であり、セクハラ行為は業務に起因すると結論づけた。

(要約、ここまで)

 

《筆者の考察》

<「業務上の食事会」で会社と労働者が注意すべき点>

 

今回の判決は、「業務上の食事会」やその延長にある2次会、3次会が、形式上は私的行為であっても、実質的には業務の一環と評価され得ることを明確に示した点で重要である。

特に、上司と部下、正社員と有期契約社員など、立場に大きな差がある場合、「断れない空気」自体が業務上の支配関係と認定されるリスクがある。

 

企業側がまず認識すべきは、宴席はハラスメントの温床になりやすいという現実だ。

酒席は理性が緩み、閉鎖的な空間になりやすい。にもかかわらず「業務外」「自己責任」として管理を放棄すれば、結果的に法的責任や企業価値の毀損につながる。

会場選定、参加の任意性、終了時刻、二次会以降の扱いなどについて、明確なルールを設けることが不可欠である。

特に性的要素を含む店舗を業務関連の場に選ぶことは、リスク管理の観点から明確に排除すべきだ。

 

一方、労働者側も「嫌なら行かなければよい」という単純な話では済まない現実がある。

だからこそ、個人の我慢に依存するのではなく、組織として声を上げやすい仕組みが重要になる。匿名相談窓口や、宴席特有の事例を想定した研修は有効だろう。

 

「飲みニケーション」やアルコールを免罪符とする時代は終わった。

業務上の食事会は、業務リスクの一部として管理されるべき対象であり、ISO思考で言えば「人に関わるプロセスのリスク評価」が欠かせない。

企業は一発レッドカードの時代に入ったことを自覚し、不要な宴席は持たない、持つなら徹底管理するという選択を迫られている。

 

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