2025年12月13日付の朝日新聞が、
『日本郵便、フリーランス法違反疑い 本支社380件、郵便局は調べず』
と題した記事を報じていました。
以下にこの記事を要約し、日本郵便におけるマネジメントシステムの不備を予想し、再発防止策について考察しました。
《記事の要約》
日本郵便が今秋、本社および全国13支社で、研修講師などの業務を委託しているフリーランスとの取引を調査した結果、フリーランス法違反の疑いがある取引が計380件確認されたことが分かった。
うち223人については、業務内容や報酬、支払期日などの取引条件が文書やメールで明示されていなかったという。
日本郵便では本社や支社に加え、全国の郵便局でもフリーランスとの取引が行われているが、郵便局分については今回の調査対象外であり、全社的な違反件数はさらに増える可能性がある。
フリーランス法は2024年11月に施行され、企業がフリーランスに業務を委託する際、業務日時、具体的内容、報酬額、支払期日などを明示することを義務付けている。
口頭発注による不利な条件の押し付けや報酬トラブルを防ぐ狙いがある。
公正取引委員会は2025年6月、同法違反を理由に小学館や光文社に勧告を出しており、これを受け、日本郵便でも同様の問題がある可能性が社内で浮上し、自主調査に踏み切ったという。
(要約、ここまで)
《筆者の考察》
<マネジメントシステム上の不備と再発防止策>
今回の日本郵便の事案は、単なる「現場の手続き漏れ」ではなく、マネジメントシステム全体に内在する構造的な不備が背景にあると考えられる。
第一に、法令要求事項の把握と展開が不十分だった点が挙げられる。
フリーランス法は施行前から周知されていたにもかかわらず、本社、支社、郵便局という多層構造の組織全体に統一的なルールや様式が行き渡っていなかった可能性が高い。
第二に、業務委託に関するリスク認識の甘さである。郵便という公共性の高い事業を担う一方、民営企業としての効率性を重視する中で、「慣行」や「口頭で十分」という意識が残存していたとみられる。
これは、利害関係者との関係性を適切に管理するというマネジメントの基本が、現場レベルで形骸化していたことを示唆する。
一方で、意見にもある通り、日本郵便が自主的な調査で問題を把握した点は、自浄作用が働いた結果とも評価できる。
重要なのは、これを一過性の是正で終わらせず、再発防止につなげることである。
具体策としては、まず業務委託に関する法令要求事項を明確に整理し、統一フォーマットによる契約・条件明示を義務化することが必要だ。
次に、本社主導での教育・訓練を通じ、管理職や発注担当者に「対等な取引」という意識を浸透させるべきである。
さらに、内部監査の対象にフリーランス取引を明確に位置付け、定期的に実態を点検する仕組みを構築することが不可欠だ。
郵便は国民生活を支えるインフラであり、過度な批判や見せしめではなく、制度全体を俯瞰した冷静な改善が求められる。
ISO思考に基づき、法令順守を「負担」ではなく「信頼の基盤」として再定義できるかが、今後の日本郵便の真価を問うことになる。
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