環境パフォーマンスとは、組織がその環境方針に沿って、意図した環境成果をどれだけ実現しているかを示す「定量的・定性的成果」です。
特に核燃料製造業では、取り扱う物質の性質上、放射性物質の漏洩や被ばく防止に加え、通常の産業と同様の大気・水質・廃棄物管理も高度に求められます。
ISO14001では、以下の要素を「環境パフォーマンス」に反映させることが推奨されています。
・排出物の管理（放射性・非放射性）
・資源使用の最適化（電力・冷却水など）
・廃棄物の削減と安全処理
・緊急事態への備え（災害・漏洩事故など）
・利害関係者との透明性ある情報共有
核燃料製造業にとって環境パフォーマンスは、コンプライアンス以上に「社会的信頼の維持」と「国際的規制順守」の要でもあり、企業の存続に直結します。
《環境パフォーマンスの具体例と取組み方》
【例1】ウラン粉じんの封じ込めと空気中濃度管理
＜指標＞
作業環境中のウラン粉じん濃度（mg/m3）、ISOクリーン度、フィルター交換頻度
＜取組み方＞
・作業ブース・グローブボックスの密閉化と陰圧維持
・HEPAフィルターによる多段階排気浄化
・作業員エリアの連続モニタリングと警報装置設置
・濃度上昇時の自動シャットダウンと作業手順見直し
【例2】使用済み試薬・汚染器具の廃棄管理
＜指標＞
低レベル放射性廃棄物の発生量（kg/月）、分別回収率（％）
＜取組み方＞
・可燃性・不燃性・液体等での厳格な分別管理
・ドラム缶への固化処理（セメント・アスファルト固化）
・ドラム缶管理番号によるトレーサビリティの徹底
・保管期限と最終処分場搬出スケジュールの管理
【例3】冷却水および排水中の放射線量と化学物質の監視
＜指標＞
排水中の放射能濃度（Bq/L）、COD、重金属濃度（ppm）
＜取組み方＞
・二重バリア構造（一次冷却系・二次冷却系の独立性）
・排水処理設備に活性炭吸着・逆浸透膜・イオン交換塔の組合せ
・排水放出前のサンプリングと法令基準との照合
・国の監督機関および地域住民への定期的な公開報告
【例4】電力・資源使用効率の改善
＜指標＞
製品1単位あたりの電力消費量（kWh/kgU）、使用水量（m3/日）
＜取組み方＞
・夜間の蓄電池活用によるピークカット
・真空系や冷却系機器の高効率モデルへの更新
・雨水利用や中水再利用の拡充
・ISO50001と連携したエネルギーパフォーマンス指標の運用
＜結論＞
核燃料製造業における環境パフォーマンスは、単なる「排出の最小化」ではなく、環境リスクの予防管理、厳格なモニタリング、トレーサビリティ、ステークホルダー対応といった多面的要素の統合管理を指します。
ISO14001の活用は、その体系化されたアプローチによって、重大な環境影響を持つ業種である核燃料製造においても、以下を可能にします。
・環境側面とリスクの可視化
・環境目標の定量的達成管理
・継続的改善と外部監査による信頼性向上
このような取組は、原子力利用の安全と社会的受容性を支える根幹です。
今後は、ISO14001に加えてISO14064（温室効果ガス管理）、ISO45001（労働安全）との統合的な運用を進めることで、より高度なマネジメントが求められるでしょう。
（※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ974号より）
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