2025年11月26日付の信越放送が、
『石綿除去しないまま電車を解体 鉄屑として売却「石綿ない車両データで契約書作成が原因」185系の暖房装置「周辺住民や環境に影響なし」長野・JR東日本』
と題した記事を報じていました。
以下に、この記事を要約し、JR東日本が車両解体処理方法を誤った原因と再発防止策を考察しました。
《記事の要約》
JR東日本は2025年11月26日、長野総合車両センターで廃車解体した185系電車の部品を、石綿(アスベスト)を取り除かないまま鉄屑として民間業者へ売却していたと公表した。
対象は12両分で、座席下の腰掛電気暖房器計380個に、絶縁テープやパッキンとしてアスベストが使用されていた。本来は分別し、石綿含有産業廃棄物として処理する必要があったが、処理手順が抜け落ちた。
JRによれば、部品を破断せず取り外し、売却先でも高温処理されていたため、周辺環境への影響は低いと判断。
しかし、石綿含有を見落とした原因は、解体作業を委託する際に、石綿を使っていない別車両のデータを基に契約書を作成したため、処理指示が漏れたことだった。
9月に図面確認でアスベスト使用が判明し、JRは労基署に報告。後に再発防止を求める指導を受けた。
(要約、ここまで)
《筆者の考察》
<JR東日本の誤処理の原因・影響・再発防止策>
今回の問題の根本原因は、「情報管理の不備」と「古い車両特有の有害物質への知識断絶」が重なった点にある。
JRは委託契約書を作成する際、アスベスト非使用の別車両データをそのまま流用したため、185系に特有の石綿含有部品の存在が契約や作業手順書に反映されなかった。
これにより、委託先はアスベスト除去が必要な作業であると認識できず、本来の分解・分別作業を省略する事態となった。
国鉄時代の車両にはアスベストが広く使われていたが、若い世代の技術者には直感的に想定が難しいという“世代ギャップ”も指摘される。
特に暖房器の絶縁体やパッキンなど、外観ではアスベストの有無がほぼ判別できない部位が多い。
見えない位置に使われていることも今回の見落としを助長したといえる。
また、石綿規制は工事規模や区分によって適用が複雑で、一般的な廃材処分と同列に扱われがちである点も構造的課題である。
影響について、JRは「周辺環境への影響は限定的」と説明するが、それは“住民への影響”であり、最も深刻なのは解体作業員への曝露リスクだ。
アスベストは粉砕時に飛散する確率が高く、分解作業を行う作業員はマスクや保護具なしで吸い込む可能性が高まる。
中皮腫や肺がんは潜伏期間が長く、数十年後に健康被害が顕在化することもあり、JRは今回の作業に従事した作業員への健康診断や長期的フォロー、必要に応じた賠償対応が不可欠である。
再発防止策としては、以下が重要になる。
第一に、車両ごとのアスベスト含有部品の「データベース化」と更新ルールの整備である。国鉄時代の車両は特に個体差が多く、図面確認を標準プロセスに組み込む必要がある。
第二に、委託契約書のひな形流用を禁止し、車両別のリスク評価を必須化すること。ISO思考でいえば「変更管理」「リスクアセスメント」が適切に行われていなかった典型例である。
第三に、作業員向けの教育強化である。
アスベストは今の若い技術者にとって“過去の物質”であり、存在を疑う力が失われている。
古い設備・車両を扱う際の“有害物質想定教育”が必要だ。
第四に、アスベスト規制の抜け穴に依存しない、独自の内部基準の設定である。
工事規模や分類に関わらず、解体時には必ずアスベスト調査を行うなど、外部の制度不足を補う仕組みが求められる。
結論として、今回の問題は単なる手続き漏れではなく、「組織の知識継承」「変更管理の弱さ」「有害物質リスクの形式的運用」という複合的な構造問題である。
再発防止は、情報管理の徹底と教育強化、そして現場作業員の安全を最優先にする姿勢が不可欠だといえる。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ987号より)
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