2025年12月1日付の北海道文化放送(UHB)が、

『【速報】日本製鉄の工場で火災“熱風炉”から爆発音―消防車など14台出動し消火活動―火が飛び散り鎮火のメド立たず〈北海道室蘭市〉』

と題した見出し記事を報じていました。

 

以下に、この記事を引用し、日本製鉄北日本製鉄所室蘭地区で発生した火災について、想定される事故原因と再発防止策および「日本製鉄北日本製鉄所室蘭地区」のISO45001を認証している認証機関(JISHA)が調査実施すべき事項について考察しました。

 

《記事の引用》

北海道室蘭市にある日本製鉄北日本製鉄所室蘭地区で、2025年12月1日、火災が発生しました。

12月1日午前1時ごろ、近隣住民から消防に「高炉付帯施設の熱風炉にて火災が発生した」などと通報がありました。  

消防によりますと、構内にある熱風炉で爆発が起き、火が飛び散って燃えているということです。

SNS上では、近隣住民から「爆発音が聞こえた」という声が上がっています。  

 

午前5時10分時点で、消防車など14台、消防隊員ら46人が出動して消火活動にあたっていますが、鎮火の目途はたっていないということです。  

なお、現時点でケガ人は確認されていません。  

消防が消火活動を続けています。

(引用、ここまで)

 

《筆者の考察》

<火災事故の想定原因>

日本製鉄北日本製鉄所室蘭地区の熱風炉火災は、現時点で原因は特定されていませんが、高温設備特有のリスクから、いくつかのシナリオが想定されます。

熱風炉は高炉に高温の空気を送る装置で、内部は高温ガスと耐火れんがにより数百度から千度近い環境になります。

ここに冷却水や雨水などが異常混入すると、水蒸気爆発が起き得る可能性があります。

また、長年使用した設備の経年劣化により、バルブや配管、耐火材が損傷し、可燃性ガスの漏えいや異常燃焼が発生した可能性もあります。

さらに、技術伝承の断絶と「見て覚えろ」文化の残存により、運転条件の微妙な調整や異常兆候の見極めが不十分だったリスクも否定できません。

 

<日本製鉄北日本製鉄所室蘭地区が実施すべき再発防止策>

再発防止策としては、まず設備側と人側の両面強化が不可欠です。

設備面では、熱風炉周辺の配管、バルブ、耐火れんが、計装類の総点検と更新計画の前倒しが必要です。

特に「水と高温」の接点となる冷却系統やドレン系統については、二重の遮断機構やインターロック、圧力や温度の異常検知に基づく自動停止ロジックを再設計すべきです。

同時に、万一爆発が起きても延焼と噴射物被害を最小化する防爆壁、遮へい、防油堤など受動的安全対策の見直しも重要です。

人と組織の面では、ベテランの経験を形式知化した標準手順への落とし込みと、シミュレーションや動画を用いた教育訓練の義務化が鍵になります。

単にマニュアルを作るだけでなく、「形骸化」を防ぐため、訓練結果の評価と資格認定、更新制を導入し、若手が危険を実感しながら身につける仕組みが求められます。

協力会社や期間工も含めた一体的な安全文化づくりも外せません。

 

<ISO認証機関の対応>

ISO45001認証を与えている認証機関(JISHA)が調査すべきポイントはより厳格です。

第一に、マネジメントシステムの中で、熱風炉や高炉付帯設備がどのように「危険源」として特定され、リスクアセスメントが行われていたかを検証する必要があります。

低頻度だが重大な爆発・火災シナリオがきちんと洗い出されていたのか、そのリスク低減方策が具体的な設備仕様・保全計画・運転手順に落ちていたのかを確認すべきです。

 

第二に、技術継承と要員力量の管理です。

氷河期世代の空洞化により、世代構成に偏りがある中で、ベテラン依存に陥っていなかったか、力量マトリクスや教育訓練計画が実態に即していたかを、現場ヒアリングも含めて点検することが求められます。

 

第三に、変更管理と老朽設備への対応です。改修や運転条件変更時にリスク評価が行われていたか、設備更新投資の遅れによるリスク増大を経営層にきちんとエスカレーションしていたかなど、ISO45001が求める「リスクと機会」の視点で経営レベルの関与も調べるべきでしょう。

 

第四に、緊急事態への備えと訓練です。爆発や大規模火災を想定した訓練が定期的に行われていたか、消防との連携体制や放水不可エリアでの対応手順が整備されていたかを検証することが重要です。

 

今回、人的被害が出ていないのは不幸中の幸いですが、製鉄所の中枢設備で起きた火災は、事業継続や地域経済にも大きな影響を与え得る「重大インシデント」です。

認証機関は「形式的な審査だったのではないか」と疑われないためにも、事故調査の結果を踏まえた特別審査や是正要求を行い、ISO45001が実効性ある仕組みとして機能するよう、日本製鉄と共に改善プロセスを進めていく責任があります。

 

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