2025年11月28日付の北海道放送が、
『北電泊原発の再稼働、鈴木直道知事が容認「当面取り得る現実的な選択」北海道議会で表明』
と題した記事を報じていました。
以下にこの記事を要約し、北海道の鈴木知事が原発再稼働を容認した背景と今後の影響について、考察しました。
《記事の要約》
北海道電力・泊原発3号機の再稼働をめぐり、北海道の鈴木直道知事は2025年11月28日の道議会で、再稼働を「当面取り得る現実的な選択」と述べ、容認する考えを初めて明確に示した。
地元4町村のうち、泊村、神恵内村、共和町はすでに同意を表明。岩内町も議会で同意の意見書を可決しており、近く正式に表明するとみられる。
鈴木知事は12月上旬に泊原発を視察し、地元首長と意見交換した上で最終判断を下す方針で、議会会期末の12月12日までに同意を正式決定する見通しだ。
知事が「現実的な選択」とした理由は、北電が再稼働後の電気料金値下げを公表したこと、安全対策が新規制基準に適合していること、さらに脱炭素電源の確保によって道内経済の成長や温室効果ガス削減につながる点を挙げている。
(要約、ここまで)
《筆者の考察》
<鈴木知事が再稼働を容認した背景と今後の影響>
鈴木知事が泊原発3号機の再稼働に踏み切った背景には、道内の急速な電力需要増、生活コスト高騰、そして産業構造の転換という3つの要因がある。
まず、北海道ではAI普及やデータセンターの誘致、さらには半導体大手・ラピダスの立地が進み、年間数十億kWh規模の新たな需要が生まれつつある。
泊3号機が稼働していた3年間で北電の電力供給の2割強を担っていた事実は重く、その停止によって北電は大量の石炭・ガス火力に依存してきた。
これが、道民の電気・ガス代の急騰につながり、家計への負担は深刻化している。
再稼働により北電は電気料金の値下げを打ち出した。
これは生活者だけでなく、企業にとっても大きい。北海道の電力コストは本州より高く、企業の投資判断に直結する。
脱炭素を意識する企業にとっても、安定した非化石電源の確保は経営上の必須条件だ。
知事が「現実的」としたのは、再エネ単独では昼夜・季節変動に耐えられず、急増する需要をカバーできないという現実的な制約だと言える。
他方、原発には地震大国・日本ならではの深刻なリスクがある。
泊原発は最新の新規制基準に適合したとはいえ、「絶対安全」はあり得ない。福島第一の教訓から、住民避難計画や通信の確保など“ソフト面の安全”は依然として課題が残る。
規制委の判断が再稼働の空気に沿って進んだのではないか、という不信感も根強い。
では、今後の影響はどうなるか。
まず短期的には、電気料金の抑制効果が最も大きく、道民生活と企業活動の安定につながる。
半導体やデータセンターの立地が進む可能性も高まり、北海道経済にとって追い風となるだろう。再エネとの組み合わせにより、CO2排出削減にも寄与する。
一方で、原発依存への政策転換は、道民の間に安全性への不安と政治的な分断を生む可能性がある。再稼働後に小さなトラブルでも起きれば、反対世論は一気に高まるだろう。
また、ドイツの例のように、脱原発政策がエネルギー高騰と火力依存を招いたことを踏まえれば、日本全体でも「原発の再評価」が進む可能性がある。
北海道が先行する形で全国的なエネルギー政策にも影響を与える展開も想定される。
結論として、今回の知事の容認判断は“経済・脱炭素・エネルギー安定化”を重視した現実的判断である一方、原発の持つ本質的リスクと道民の不安をどう丁寧に解消するかが、今後の最大の課題となる。
地方自治体としての説明責任、安全監視の透明化、避難計画の実効性確保が伴わなければ、再稼働は真の「現実的選択」にはならない。
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