2025年11月20日付の共同通信社が、

『出産無償化に保険新枠組み創設へ 厚労省調整、法改正』

と題した記事を報じていました。

以下に、この記事を要約し、少子化対策への効果などを考察しました。

 

《記事の要約》

厚生労働省は、出産費用の無償化に向けて、公的医療保険の中に新たな枠組みを設ける方向で調整を進めている。

2025年11月20日の社会保障審議会部会で議論され、2026年の通常国会に関連法案を提出する方針だ。ただし、提出後も制度設計を続ける必要があるため、無償化の開始は当初目標の2026年度から遅れる見通しとなっている。

 

現在は「出産育児一時金」50万円が支給されているが、正常分娩は自由診療のため、医療機関が自由に価格を設定できる。

そのため自己負担額には地域差がある。無償化により保険が適用されれば、価格は全国一律となる。経済的不安を軽減し、少子化対策につなげる狙いがある。

 

一方、産後のお祝い膳や記念撮影など、医療以外の付帯サービスは保険適用外とする案があり、利用者の自己負担は残る可能性がある。

その負担軽減のため、一定の現金給付を組み合わせる案も検討されている。

 

厚労省は、病気やけがと同様の1〜3割の窓口負担方式ではなく、新たな形の保険制度を構築する方針だ。

(要約、ここまで)

 

《筆者の考察》

<期待される効果と懸念点>

 

出産費用の無償化は、少子化対策として政府が打ち出す中核施策の一つであり、「出産にかかる初期費用の不安」を軽減する点で一定の効果が期待される。

現在の自由診療では地域差が大きく、自己負担も変動するため、全国一律の保険適用となれば公平性が高まり、若い世代の心理的ハードルを下げる意義は大きい。

また、医療サービス以外の付帯サービスを有料に分離する方針は、医療の本質部分と快適性の区別を明確にし、無償化による費用膨張を抑える点で妥当といえる。

 

しかし、制度の持続性を巡る懸念は根強い。最大の論点は、無償化が「少子化の根本改善」につながるかどうかだ。

多くの意見が指摘する通り、少子化の背景には、長期的な育児・教育費の負担、共働き世帯の働き方の厳しさ、休職・キャリア断絶リスク、婚姻率の低下など、構造的な問題が横たわる。

出産費用は人生全体の育児コストの中では比較的小さく、無償化だけで出生率が大きく反転するとは考えづらい。

 

さらに、財源の公平性も課題である。今回の制度は公的保険を活用する方向だが、「税や保険料を支払っている人に限定すべき」との声が強い。

特に、短期滞在の外国人や留学生による“出産目的の来日”への懸念が多く挙がっており、一定の在住年数や納税実績を条件にするなど、対象者の線引きは不可避だろう。医療制度の国際的な悪用を防ぐ観点からも、制度設計に丁寧な区分が必要となる。

 

また、所得向上・雇用安定といった基盤整備を同時に進めなければ、「産むは易し、育てるは難し」の状態は解消されない。

現役世代の賃金改善、保育・教育の継続的な支援、職場の柔軟な働き方改革、男性育休の浸透など、総合的な政策パッケージとして進めることが不可欠である。

 

出産無償化はスタート地点として重要だが、単体では限界がある。

出産から育児・教育までの長期支援、働き方や社会構造そのものの改善と組み合わせて初めて、出生率改善の実効性が高まると言える。

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ986号より)

 

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