2025年11月25日付のYahoo!ニュースに、国際政治学者の六辻彰二氏が、

『“中国の禁輸措置は日本にとって悪い話ではない”の論理 韓国とオーストラリアの経験から』

と題した寄稿文を投稿していました。

以下に、この寄稿文を要約し、六辻氏が唱える「中国の禁輸措置は日本にとって悪い話ではない」について、考察しました。

 

《記事の要約》

高市早苗首相の台湾有事に関する発言を受け、中国は日本への団体観光自粛や日本産海産物の輸入禁止を相次いで再開した。

日本の観光や水産業にとって影響は小さくない。

 

ただし、シンガポール南洋理工大学のダイラン・ロウ准教授は、中国が政治対立時に経済圧力をかけるのは韓国など他国にも見られた構図であり、その結果、各国が経済の多角化を進めた点に注目する。

ロウ氏は「中国の圧力は、各国が依存先を見直す契機となり、必ずしも悪いものではない」と指摘する。

 

中国の禁輸は、相手国にダメージが出やすく、自国への影響が最小限となる分野を狙い撃ちする形で行われてきた。

韓国は2017年に米軍のTHAAD配備を巡って中国が韓流ドラマや団体観光を禁じた際、東南アジアからの観光客誘致に注力。エンタメ産業もNetflix中心にグローバル市場で成功した。

 

また、オーストラリアは2020年に新型コロナの独立調査を主張したことで、中国が同国産ワインや綿花を禁輸した。しかし業界は輸出先を多角化し、現在はベトナムが最大の輸出先となっている。

 

こうした例が示すのは、国際環境が悪化しても、構造的な依存を見直すことで経済は持続性を高められるということだ。

中国側も同様に、依存先のリスクが米中対立やトランプ関税で顕在化した経験を持つ。

 

六辻氏は、日本も今回の禁輸を「対中デリスキング(依存度低減)」の好機と捉えるべきだと指摘する。

しかし、民間に任せるだけでは不十分で、政府の計画的な支援が不可欠だ。台湾有事を念頭に置くなら、今回の禁輸規模は序章に過ぎないとの警鐘を鳴らす。

(要約、ここまで)

 

《筆者の考察》

六辻氏が主張する「中国の禁輸は日本にとって必ずしも悪い話ではない」という見立てには、一定の説得力がある。

特に、韓国やオーストラリアが中国による経済圧力を逆手に取り、むしろ構造改革や市場の多角化を進めて強くなった事例は示唆的である。

ただし、この見立ては「中長期的にはメリットがあるが、短期的な打撃は確実に存在する」という前提を置く必要がある。

 

まず、ビジネスの世界で「特定国への依存はリスク」というのは冷静な判断だ。

中国は政治と経済が一体化しており、政争がビジネス環境を一変させる。

そのため、今回の禁輸はむしろ日本企業が「当然やるべきだったリスク分散」を急がせる役割を果たしている。六辻氏の指摘は、この構造的リスクへの“気付き”を促す意味で妥当だと言える。

 

ただし、地政学リスクは中国側の弱体化や台湾有事リスクの高まりと絡むため、単なるデリスキングでは足りない。

中国依存は経済面だけでなく安全保障とも結びつくため、日本はより急速に脱中国を進める必要があるとの主張には現実味がある。

六辻氏の見立ては「経済構造」への視点が中心だが、「安全保障リスクの増大」という補助線を入れると、脱中国の必要性はさらに強まる。

 

一方、日本は隣国として「完全に門戸を閉ざさない姿勢」も必要だ。

資本主義国家として、健全な取引関係を維持するための余地は残しておくべきで、感情的なデカップリングは逆効果になりかねない。

六辻氏も「多角化」を主張しているので、完全断絶ではなく依存度の適切なコントロールという方向性では一致している。

 

また、中国ビジネスはそもそも政治リスクを前提にするべきであり、今回の禁輸は日本が必要としていた「検証の機会」だった面もある。

特に訪日観光依存の是正、水産物の輸出先多角化、留学生政策の再検討など、日本側が抱えていた構造問題を見直すタイミングでもある。

 

総合すると、六辻氏の見立ては「禁輸=悪」ではなく、「禁輸=構造改革の契機」という冷静な分析として評価できる。

一方で、台湾有事の可能性や中国経済の不透明感を踏まえると、企業任せではなく国家戦略としての脱中国・多角化支援が不可欠である。

今回の措置は“痛みを伴う好機”であり、日本がどれだけ戦略的に動けるかが今後の命運を分けると言える。

 

 

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