受信料強化時代のNHK“公共放送の揺らぐ存在意義と受信料制度の再設計”

2025年11月23日付の産経新聞が、

『問われるNHKの存在意義　受信料「未収」に法的強化、「公平負担」の大義も番組批判続く』

と題した記事を報じていました。

近年、NHK受信料の未払い世帯が増えているそうです。

NHKは、ご承知の通り「公共放送」ですから、受信設備がありながらの「未払い」は、「公平負担の原則」から脅威であり、支払っている者からすれば、不公平感は否めません。

以下に、この記事を要約し、「未収に対する法的強化」と「今後の公共放送における受信料のあり方」について、考察しました。

《記事の要約》

NHKが不払い対策を強化するため、本部に「受信料特別対策センター」を新設した。

対象となるのは、受信契約を結んでいながら1年以上支払っていない「未収」世帯や事業所で、NHKは簡易裁判所への支払い督促申し立てを大幅に増やす方針だ。

未収は令和元年度の72万件から174万件まで急増し、NHKは「受信料の公平負担」を掲げ、法的措置に踏み切った。

未収が再び増加した背景には、コロナ禍による対面営業の停止や、オートロック住宅の増加で訪問が困難になったことがある。

NHKは巡回訪問営業を取りやめた一方、郵便やインターネット広告、対象者を絞った訪問など、別の営業手法を模索している。

受信料を支払わない理由については「経済的事情」「不公平感」「番組への不満」などが挙げられる。

NHKが公表する「月刊みなさまの声」でも、放送・番組への意見は7割が「厳しい意見」で、番組内容や公共放送としての姿勢への疑問も根強い。

NHKは今月から「NHK ONE」で契約情報の登録を開始し、「公平な負担が公共放送の独立性を支える」と説明するが、視聴者の目は以前にも増して厳しく、公共放送の在り方が改めて問われている。

（要約、ここまで）

《筆者の考察》

＜「未収に対する法的強化」と「今後の受信料のあり方」＞

NHKが未収対策を強化し、法的手続きに踏み込むことは、一見すると強硬策に見える。

しかし、今回の対象はあくまで「契約済みで滞納している人」であり、通常の債務不履行への対応と考えれば、一定の妥当性はある。

実際、支払い督促件数が10倍に増えるといっても約2000件規模であり、174万件の未収全体から見れば、象徴的対応に近い。ただし、未収増加の背景には訪問営業の廃止などNHK自身の営業方針転換があり、単純に受信者側の問題だけとは言えない。

一方で、世論の不満の多くは「未契約層」から生まれている。

「見ていないのに払う義務があるのか」「放送法の仕組みが時代遅れ」といった批判であり、ネット時代においてテレビ保有＝受信料義務という制度は確かに整合性を欠きつつある。

スクランブル化や選択制を望む声が強いのもそのためだ。

また、「番組内容への不満」「公共放送が中立性を保てていない」という意見も多く、こうした信頼低下が未収増加の根本にあることは否定できない。

では、公共放送の財源はどうあるべきか。

意見の中でも分かれるが、共通しているのは「現行制度のままでは維持が難しい」という点である。

完全な自由契約制にすると支払いを選ぶ人が減り、公共放送が成立しなくなる可能性が高い。

一方、強制徴収を維持すれば不満と反発は続く。

ここで議論されるべきは「公共放送とは何か」「何を担わせるべきか」の再定義である。

選択肢としては

（1）ニュース・教育・災害情報など最低限の公共領域のみ国費＋低額負担で維持

（2）娯楽・ドラマなどは別チャンネル化し完全自由契約へ移行

（3）ネット時代に合わせ、スマホ等の“視聴実態”に紐づいた柔軟な徴収体系へ

などがある。

いずれにせよ、現在の「テレビを持つだけで義務」という仕組みは持続可能性を失っている。

未収対策の強化は一時的効果にすぎず、制度改革と番組の公共性回復こそが NHK に求められている。公共放送を守るには、信頼を取り戻すことが最大の「受信料対策」なのである。

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