2025年11月23日付のテレ朝NEWSが、
『高まる日中の緊張 渡航自粛の影響は?予約キャンセルで「約4000万円の損失」も』
と題した記事を報じていました。
以下にこの記事を要約し、中国の日本への渡航自粛による今後の日本の観光地への影響やリスクヘッジの観点からの課題などについて考察しました。
《記事の要約》
G20サミット出席のため高市総理が南アフリカに、到着(2025年11月23日(日本時間))した。
初参加となる今回、焦点は中国側と接触できるかだ。
台湾情勢を巡る高市総理の国会答弁をきっかけに日中関係は急速に冷え込み、中国政府は自国民に日本への渡航自粛を呼びかけている。
サミット開幕式で高市総理は「複合的危機に直面する国際社会において、G20は責任を共有し課題解決に取り組むべきだ」と強調。
一方、中国の李強首相は無表情のまま反応せず、会期中に両者が接触するかが注目される。
一方、観光地の現場では複雑な様相だ。富士山五合目には渡航自粛呼びかけから1週間たった今も中国人観光客の姿が多く見られる。
個人旅行者は「治安も良く、政治と旅行は別」と話し、例年並みの来訪が続く。
しかし、航空会社が日本便を減便すると報じられる中、団体旅行への影響は広がっている。
都内の観光バス会社では大型バスのキャンセルが相次ぎ、4000万円規模の損失が発生。
団体比率が高い施設やホテルでも予約減が始まり、富士山麓の宿泊施設では個人客からのキャンセルも出ているという。
観光客総数の約9割を占めるのは個人旅行者だが、団体向けの交通・宿泊・飲食業は減便の影響を受けやすい。
さらに、日中関係の悪化は観光業にとどまらない。中国側は日本企業と中国商務部長の会合、日中韓文化相会合などを相次いで延期。
中国国内で予定されていた日本関連のイベントや映画上映も次々と中止されている。
背景には「戦狼外交」と呼ばれる強硬姿勢があるとの指摘もあるが、経済面では中国側も日本企業の投資減が痛手になるため、いずれ軟化せざるを得ないとの見方もある。
国際社会が緊張する中、日中双方が対話の糸口を探る重要局面を迎えている。
(要約、ここまで)
《筆者の考察》
中国の日本への渡航自粛呼びかけは、観光地によって影響に濃淡があるものの、長期的には日本の観光モデルの脆弱性を改めて露呈した。
一般論として、日本が直面する課題は「依存構造」「事業リスク管理」「観光地の質の再設計」の三つに集約される。
まず、中国人観光客の9割は個人旅行者であり、中国政府の政治的メッセージがそのまま旅行者の行動に直結するわけではない。
SNSによる情報収集が一般化し、政治と旅行を切り離す消費行動も多い。
しかし、団体ツアーは航空会社の減便や旅行会社の買取仕入れとの関係からキャンセルの影響を受けやすく、観光バスやビジネスホテルなど「団体依存の高い事業者」では損失が顕在化しやすい。
次に重要なのが、「中国依存リスク」への対応不足だ。
過去にも政治的理由で突然の制限が繰り返されてきたにも関わらず、一部事業者ではリスク分散が進まず、“一本足打法”のまま経営を続けた結果、今回の混乱を増幅している。水産物輸出業界が禁輸後に販路転換を進めた例と比べると、観光事業者の戦略差が際立つ。
ただし、今回の渡航自粛は一部では「オーバーツーリズムの緩和」という副作用も生み、地域住民の生活環境が改善したという声もある。
観光産業と地域住民の利害調整が不十分であった日本にとって、観光客数“量”から“質”への転換を促す契機とも言える。
今後、観光事業者が取るべきリスクヘッジとしては以下が挙げられる。
1)需要源の多国籍化
東南アジア、欧州、豪州などへ販売チャネルを広げ、特定国への依存率を下げる。
既にマレーシア向けツアーへの転換を進めた事例は良い例である。
2)個人旅行者向けの受入体制整備
中国人観光客の主流は個人旅行者であり、言語案内、交通手段、オンライン予約環境などの強化が不可欠。
3)地域との調和を重視した観光政策の構築
住民の生活と観光の共存、観光税の活用、混雑分散の仕組みづくりが求められる。
4)政治リスクを事業計画に組み込む
突発的な渡航制限は繰り返され得る。収益構造、契約条件、キャンセル規定の見直しなど、経営モデル全体を“地政学的リスク前提”に再設計する必要がある。
最終的に、中国経済に振り回されない観光業への移行こそが、日本が取り組むべき根本課題である。
渡航自粛が示した脆弱性を教訓に、観光産業は持続可能な形へ進化を求められている。
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