2025年11月18日付の日刊SPA!が、
『クマ被害続出も過熱する報道に現役猟師・東出昌大が語る「クマはそんな危ないもんじゃない」理由/東出昌大』
と題した記事を報じていました。
筆者も、この東出氏の寄稿文の読みましたが、「一理あるな」と思ったのと同時に、「しかし、本州では、各自治体が把握しているより個体数が増えたことや少子高齢化による里山の荒廃」が原因で、「危ないもんじゃない」という東出氏の表現は、「現在の各地のクマ」に対して、世間に誤った情報を伝えてしまうのではないか、とも思いました。
以下にこの記事を要約し、東出氏の主張について、考察しました。
《記事の要約》
2025年4~10月のクマによる被害件数は176件、被害者は196人と過去最悪ペースとなり、全国で連日のように目撃情報や被害報道が流れている。
こうした状況のなか、猟師免許を持ち山に日常的に入る俳優・東出昌大氏が、現在の報道の過熱ぶりに疑問を呈した。
東出氏は、山で生活する実感として「クマには滅多に遭わない」と述べ、死亡者数も長年一定しており、特段増加しているわけではないと指摘する。
一方、メディアは「死の恐怖」が可視化されやすく“数字が取れる”ため、必要以上に恐怖を煽っていると批判した。
また、クマが人目につきやすくなった背景として、
(1)山の木の実の不作
(2)猟師の高齢化
を挙げる。
特に猟師の高齢化により、山を歩く従来型の猟は激減し、道路脇で鹿を撃つ「流し猟」が増加。
高齢の猟師では捕った獲物の回収が難しく、死体を放置する違法行為が現場で常態化している点を問題視する。
放置された鹿がクマを人里近くへ誘引する悪循環もあり得るため、若い猟師が増え、適切な管理が行われる環境が必要だと主張した。
東出氏は、クマを一方的に“危険な仮想敵”として吊し上げるのではなく、人と自然が共存できる方向を模索すべきだと訴え、猟師として命を扱う仕事への思いと現場の課題を語った。
(要約、ここまで)
《筆者の考察》
<東出氏の主張への主な反論理由と一般市民が学ぶべき点>
東出氏の寄稿に対して、世間の反論は大きく3つの軸に整理できる。
【1】“個人の経験(N1)”を全体化している点への批判
もっとも大きい指摘は、東出氏の「山で滅多に出会わない」という体験を、社会全体のリスク評価に一般化している点である。
実際には、2025年は人身被害196人、死亡15人と深刻な状況であり、特に市街地・住宅地での襲撃が急増している。
社会政策や危機管理では“部分最適は全体最適にならない”。少数の経験を過度に一般化すると、実態を誤認し対策が遅れる恐れがある。
【2】被害者の実情を軽視しているように受け取られた点
「そんなに危ないものではない」という東出氏の言葉は、すでに命を落とした人・重傷を負った人の現実から乖離しているという批判が多い。
実際、近年の被害は「山での遭遇」だけではなく、配達中、庭先、温泉など“人の日常空間”にまで拡大している。
負傷者の多くは顔面損傷・視力喪失など重度の後遺症を負うケースも少なくない。
この点で東出氏の表現は「危機感の欠如」と受け止められ、批判を招いた。
【3】現場を知らないのではないか、という疑念
東出氏は山での経験に基づき語っているが、被害が多発している秋田・岩手の深刻な現場を踏まえていないという意見もある。
都市周辺部にクマが現れる新たな現象を“従来の山の常識”で語ることの危険性が指摘されている。
<一般市民が学ぶべき点>
一方で、東出氏の主張には、市民が学ぶべき重要な視点も含まれている。
【1】「報道の過熱」は常に疑って良い
メディアが「恐怖」「残酷さ」を強調しやすいのは事実であり、リスクを正しく理解するためには、
・被害件数の推移
・地域差
・原因と構造
を冷静に見る必要がある。
“恐怖だけの判断”は政策を誤らせる危険がある。
【2】構造的な要因(餌不足・猟師高齢化)に目を向けること
東出氏が示した「猟師高齢化による獲物放置」「流し猟の増加」は、現場のリアルな課題として極めて重要だ。
山の資源・野生動物・人間社会は相互に影響するため、
・若手猟師の育成
・獲物管理の適正化
・山間部の生態系の変化
など、構造的な改善が不可欠である。
【3】個人の感情だけで“仮想敵”を作らない
確かにクマは危険だが、「憎悪の対象」として叩くだけでは問題解決にならない。
人身被害を減らすには、
・地域の防護(電気柵・ごみ管理)
・山林管理
・人間側の行動変容(出没マップの確認)
など、多面的なアプローチが必要だ。
<結論>
東出氏の主張は「危険を過小評価しすぎ」と批判される一方、報道の偏りや猟師高齢化といった「見落とされがちな構造問題」を提示した点は評価すべきである。
重要なのは、恐怖に流されず、感情的にクマを敵視するのでもなく、データと構造的視点に基づき、冷静で実効性のある対策を社会全体で考える姿勢である。
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