製紙業の環境パフォーマンスとは、原料調達から抄紙・加工・出荷までの一連の工程における環境影響(エネルギー使用、水資源消費、排水負荷、廃棄物、温室効果ガス、臭気、騒音など)を定量的に把握し、環境方針に則して継続的改善を図ることを指します。
特に製紙業は、大量の水・エネルギーを使用する典型的なプロセス産業であり、環境負荷の大きさゆえに、環境マネジメントシステム(EMS)を通じたパフォーマンス管理が極めて重要です。
《環境パフォーマンスの具体例と取組み方》
(1)用水と排水の管理
<課題>
製紙には大量の水を使用し、BOD(生物化学的酸素要求量)やSS(懸濁物質)を含む排水を発生。
<取り組み>
・閉ループ循環システムの導入により工程内再利用率を向上。
・高度処理設備(活性汚泥処理、膜処理)を活用し、排水BOD基準を超過しないよう維持。
・処理水の一部を冷却や洗浄用に再利用。
(2)エネルギーとCO2排出の削減
<課題>
ボイラー用燃料(重油、石炭等)による二酸化炭素排出が多い。
<取り組み>
・バイオマスボイラー導入、コージェネレーション(熱電併給)活用により、電力・蒸気の自給自足比率を高め、Scope1排出原単位(tCO2/t紙)を低減。
・ISO50001との統合運用も検討。。
(3)古紙利用率の向上と森林資源保護
<課題>
森林由来のバージンパルプ使用による生態系への影響。
<取り組み>
・古紙パルプの使用比率目標(例:80パーセント以上)を設定し、インキ除去設備の高度化で品質維持と歩留まりを両立。
・FSCまたはPEFC認証紙の採用も併用し、トレーサビリティを確保。
(4)化学薬品の管理と削減
<課題>
漂白剤、樹脂、コーティング剤などの化学薬品による水質・大気影響。
<取り組み>
・塩素系漂白剤の無塩素化(ECFまたはTCF方式)への移行。
・薬品使用量のモニタリングを月次で実施し、安全データシート(SDS)に基づいた保管・使用・緊急時対応を訓練。
(5)臭気と騒音の苦情対応
<課題>
蒸解工程や排気ファンからの悪臭、設備音が近隣に影響。
<取り組み>
・臭気分析による発生源特定、酸化方式や活性炭吸着による処理。
・作業時間の調整や防音壁設置で騒音値を85デシベル未満に抑制。地域住民向けに年1回の説明会を開催し、信頼構築。
(6)廃棄物(スラッジ、破紙など)の減量と有効利用
<課題>
汚泥や裁断くずなどが産業廃棄物として排出される。
<取り組み>
・汚泥の燃料化や建材原料化、裁断くずの内部リサイクル促進。
・廃棄物総発生量と再資源化率を月次で記録し、目標に対して進捗を評価
<まとめ>
製紙業の環境パフォーマンスは、設備と化学の最適制御、高度処理技術の導入、資源循環、バイオマス活用の推進など、多岐にわたる施策を統合的に展開する必要があります。
ISO14001を基盤に、定量的KPI(例えば、BOD mg/L、tCO2/t製品、古紙比率、リサイクル率)を設定・レビューし、内部監査と外部利害関係者との対話を通じて、透明性と信頼性を高めていくことが肝要です。
このような取組みを継続することにより、製紙業は単なる環境負荷の低減にとどまらず、「持続可能な紙づくり」という価値を市場・社会へ発信することが可能となります。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ970号より)
【好評発売中!】
『サービス業のISO(設計・環境側面・危険源・気候変動)』(令和出版)2025年4月30日発売
『~マーケット・クライアントの信頼を高めるマネジメントシステム~ サービス業のISO (設計・環境側面・危険源・気候変動の実践ガイド)』 著:有賀正彦 - 令和出版
『できるビジネスマンのマネジメント本』(玄武書房)
https://www.amazon.co.jp/dp/4909566066/
【よかったらメルマガ読者登録お願いします♪】↓
(パソコンでアクセスしている方)
http://www.mag2.com/m/0000218071.html
(携帯でアクセスしている方)
http://mobile.mag2.com/mm/0000218071.html
Twitter:https://twitter.com/ariga9001