「製材業」における環境パフォーマンスとは、原木の搬入から製材、乾燥、出荷に至る一連の工程において、事業活動が環境に与える影響を的確に把握・管理し、環境方針に則った目標の達成度を継続的に改善していくことを指します。
ISO14001では、環境パフォーマンスを「測定可能な成果」として定義し、単なる法令遵守に留まらず、環境影響の低減、資源効率の最適化、持続可能な林業との調和が重視されます。
製材業は森林資源を原料とするため、木材利用の効率、廃材の処理、排水処理、粉じん・騒音の管理、エネルギー使用など、幅広い環境側面を抱えています。
それぞれの環境側面に対し、計画・実行・点検・改善(PDCA)を繰り返すことが求められます。
《環境パフォーマンスの具体例と取組み方》
(1)木材の歩留まり向上(原材料利用効率)
<課題>
原木から製品になる割合が低いと、森林資源の浪費となる。
<取組み>
・原木の直径や形状に応じた最適な切断パターンをCADで設計。
・オペレーターへの技能教育により加工ミスを削減。
・歩留まり(製品体積/原木体積)を月次で記録し、基準値との差異を評価。
(2)端材・おがくずの有効活用
<課題>
副産物の処理が焼却や埋立て中心の場合、環境負荷が高い。
<取組み>
・端材はバイオマス燃料やパレット材として外販。
・おがくずは農業資材(堆肥原料や畜産用敷料)として地域に提供。
・「廃棄物量(トン)/月」の削減をKPIとし、リサイクル率も併記。
(3)ボイラー・乾燥機のエネルギー使用
<課題>
乾燥工程における燃料使用(重油・ガスなど)から温室効果ガスが排出。
<取組み>
・バイオマスボイラーへ更新し、製材副産物を燃料化。
・乾燥炉の断熱性能改善や、低温乾燥方式への切替を実施。
・CO2排出量(kg-CO2/立方メートル製材)を年次比較。
(4)排水の管理と水資源保全
<課題>
製材後の洗浄や場内清掃で発生する排水に木粉や油分が含まれる。
<取組み>
・排水沈殿槽や油水分離装置を設置し、基準内排水を徹底。
・雨水の場内循環利用を試行し、水使用量を20パーセント削減。
・排水質(SS、pH、油分など)を週次でモニタリング。
(5)騒音・粉じんの抑制
<課題>
製材機、チップ化装置の運転による騒音や浮遊粉じんが周囲環境に影響。
<取組み>
・騒音は消音ボックスの導入や作業時間の制限で対応。
・集じん装置やミスト噴霧による粉じん抑制を実施。
・騒音測定(dB)や粉じん濃度(mg/立方メートル)を外部委託で定期測定。
《環境パフォーマンス向上の管理手法》
1)環境側面の評価
LCA(ライフサイクルアセスメント)や環境影響評価を用いて、優先度の高い影響を抽出。
2)目標と指標の設定
単位あたりのエネルギー、廃棄物、排出量を具体的数値で管理(例:kg-CO2/立方メートル製材)。
3)従業員教育
環境意識向上と業務改善のため、全従業員に環境教育を年2回実施。
4)内部監査とレビュー
PDCAを定着させるため、四半期ごとに内部監査、年1回のマネジメントレビューを行う。
<まとめ>
製材業における環境パフォーマンスは、単に「環境に配慮しているか」ではなく、「どの資源をどのように使い、どのような影響を及ぼしているか」を定量的に評価し、継続的に改善していく経営能力そのものです。
資源としての森林を未来に繋ぐためにも、製材業者は環境負荷の見える化とその低減に真摯に取り組むことが求められます。
ISO14001を効果的に運用することで、事業の信頼性と持続可能性を高めることができます。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ969号より)
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