2025年10月22日付の読売新聞が、
『発火事故多発のモバイルバッテリー販売、中国企業の日本法人に行政指導…「アンカー・ジャパン」』
と題した記事を報じていました。
以下に、この記事を要約し、行政指導の効果などについて、考察しました。
《記事の要約》
経済産業省は2025年10月21日、モバイルバッテリーの発火事故が相次いでいることを受け、中国系の日本法人「アンカー・ジャパン」に対して初の行政指導を行った。
指導では、年内をめどに全製品の点検と製造・品質管理体制の報告を求め、監督を強化する。
アンカーは国内シェア約32%を誇る最大手で、2022年12月以降に販売したモバイルバッテリー約41万台とスピーカー約11万台、計52万台を自主回収すると発表した。
これらの製品からは41件の発火事故が報告され、製造時に電極体切断で生じた粉じんが混入し、ショートする可能性が指摘されている。
同社はこれ以前にも、2019年以降8回にわたり約50万台を自主回収しており、累計で100万台規模に達する。経産省は重大な安全管理上の問題とみなし、今回の行政指導に踏み切った。
モバイルバッテリーは海外製が大半を占め、粗悪品の流通も目立つ。
政府は2026年4月から自主回収とリサイクルの義務化を予定しており、経産省は今回の対応を契機に、他社にも品質管理の徹底を促す方針だ。
リチウムイオン電池はスマートフォンや小型家電など広く使用されており、安全性の確保が急務となっている。
(記事の要約、ここまで)
《筆者の考察》<行政指導の効果>
今回の行政指導は、単なる1社への指摘にとどまらず、電池を扱うすべてのメーカー・輸入業者に対して「品質管理の新たな基準線」を示すものとなる。
アンカーは「中華系でも品質が高い」というブランドイメージを確立していたが、累計100万台ものリコールを経て、企業体質の見直しを迫られることとなった。
経産省の狙いは、こうした“信頼のブランド”に対する行政指導によって、業界全体に緊張感を与える点にある。
効果としてまず期待されるのは、製造段階での安全基準の底上げである。
粉じん混入によるショートなどの不具合は、製造工程管理やクリーンルームの整備など、比較的技術的な改善で防止できる。
指導後はアンカーが再発防止策を示すことで、他の中国・東南アジア系メーカーにも波及し、品質競争が促されるだろう。
次に、消費者側のリテラシー向上が進む可能性がある。
利用者が「バッテリーは消耗品であり、使い方次第で危険にもなる」という理解を深めることは重要だ。
行政指導を通じて事故原因や対象製品が明確に公表されれば、消費者の安全意識を喚起し、安価な粗悪品への警戒感を高める効果がある。
また、報道・表示の透明化も進むと考えられる。
これまで事故ニュースで社名を伏せて報じる慣行は、消費者保護の観点から見直しが求められる。
行政指導の過程で社名公表が進めば、事業者に「隠せないリスク」というプレッシャーが働き、結果的に品質管理体制の強化につながる。
一方で、制度面での課題も残る。
2026年4月から義務化されるリサイクル制度は、販売段階の責任を明確化する一方で、膨大に流通する既存製品をどう回収するかという課題がある。
「防爆袋」などの現実的な安全対策も、並行して検討すべきだろう。
総じて今回の行政指導は、メーカーへの規範形成・消費者教育・制度整備という三位一体の動きを促す契機となる。
特に、リチウムイオン電池を「社会インフラの一部」として扱う安全文化を醸成できるかが、行政指導の真の効果を左右するだろう。
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