2025年10月20日の信濃毎日新聞(デジタル版)が、

『「現場任せにしないで」「綱渡り状態」 放課後に小学生預かる「子どもプラザ」施設職員の悲鳴』

と題した記事を報じていました。

 

動物と違い、人間は、幼児期から児童までは、保護者の助けを借りなければ、安全に育ちません。

しかし、社会背景から、女性が社会進出し、また、「近所の人に子どもを預ける」という習慣も現実的に難しくなり、保育園や学童施設にあずけなければ、一般的には、共働き家庭の育児は難しくなりました。

先日、夫婦ともに国会議員の寺田学氏(立憲民主党所属の衆議院議員)が“子育てに専念すること”を理由に次回選挙に出馬しないことを表明した報道がありました。

世帯収入がある程度、確保されていれば、まともに子育てするなら、寺田氏のような選択は、当然なのかもしれません。

 

以下に、この記事を要約し、学童施設の課題と今後について、考察しました。

《記事の要約》

共働き家庭の増加により、放課後や長期休暇中に小学生を預かる「放課後子ども総合プラン」の需要が急増している。

長野市では82施設が運営されているが、人手やスペース不足が深刻化し、現場は限界に近い。

 

長沼児童センターでは夏休み中、最大で50人以上の子どもを5人の職員で対応しており、「1人が休めば運営が成り立たない」と館長は訴える。

地域ボランティアの協力でイベントを企画しているが、職員の高齢化や慢性的な人手不足が続く。

 

古牧子どもプラザでは、夏休み中100人を超える日もあり、冷房のない廊下で過ごす子どももいた。

「子どもにつらい思いをさせてしまった」と館長は嘆く。市内の他施設も同様で、学校内の限られたスペースをやり繰りしながら運営している。

学校との協力で体調不良児に別室を確保するなど工夫も進むが、改善には限界がある。

 

市こども政策課は「学校の空き教室を活用して運用面で対応したい」と説明。施設の拡張や改修は容易ではないが、今後の学校改修工事に合わせて改善を検討するという。

 

放課後は子どもにとって家庭と学校の間をつなぐ重要な時間。安心して過ごせる環境づくりが、「子育てしやすいまち」実現の鍵となる。

登録児童は10年間で1.2倍に増加し、特に児童数の多い地区では留守家庭児童に利用を制限している現状だ。

(要約、ここまで)

 

《筆者の考察》

学童施設が抱える最大の課題は、需要急増に対して人員・設備・財源が追いついていないことである。

少子化の一方で共働き家庭は増加し、放課後の居場所としての役割が拡大した結果、施設は定員超過や人手不足に直面している。

 

現場では「1人休めば運営困難」という脆弱な体制の中、高齢の職員が支え続けている。

待遇の低さも深刻で、支援員の多くが非正規・低賃金であり、離職や担い手不足を招いている。

安全面でも、子どものトラブルや怪我のリスクが高く、保険や研修体制の整備も追いついていない。現場任せでは、子どもの安全も職員の安心も確保できない状況だ。

 

さらに、施設による格差も拡大している。

冷房のない狭い部屋や廊下で過ごす子どもがいる一方で、広いスペースと地域連携に恵まれた施設もある。

放課後の体験格差が子どもの成長格差に直結する可能性があり、自治体による実態調査と均衡化が急務だ。

 

今後想定されるのは、
1)共働き世帯のさらなる増加による需要拡大
2)スタッフ高齢化による人員確保難
3)安全トラブルや事故リスクの増大
の三点である。
これらに対応するには、現場の「善意頼み」から脱し、制度的・構造的な支援が必要だ。

 

子育て世帯には、利用料の適正化と家庭内支援の見直しも求められる。あまりに低料金に依存すれば、サービスの質や安全が犠牲になる。多少の負担増を社会全体で分かち合う意識が重要である。

 

国と自治体には、
1)支援員の待遇改善(常勤化・処遇加算)
2)施設拡充と改修の財政支援
3)人材確保のための研修・資格制度整備
4)学校との連携強化と空き教室活用の制度化
5)放課後支援を教育政策の一部として位置づける
などの施策が求められる。

 

放課後は、子どもにとって学びと心の安らぎを取り戻す時間である。
子どもを「預かる」から「育てる」空間へと進化させるためには、家庭・地域・学校・行政が連携し、子どもの目線に立った持続可能な仕組みを築くことが不可欠である。
 

 

 

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