2025年9月23日付の朝日新聞が、
『夜怪しまれ、朝怒られ 国勢調査員の苦労 専用袋を身につけ訪問』
と題した見出し記事を報じていました。
以下にこの記事を要約し、生活習慣が変化している日本において、国勢調査の課題と対応策について考察しました。
《記事の要約》
5年に一度行われる国勢調査が始まった。人口や世帯の実態を把握し、政策立案の基礎資料となる最重要の統計調査だ。
しかし京都府内では調査員の確保が難航し、府は今回初めて一般募集を行った。
国勢調査は10月1日時点で国内に住む全員が対象で、回答は郵送やインターネットも可能だが、調査書類は原則として調査員が戸別訪問で配布する。
京都府内の対象は約122万9千世帯。
2020年の前回調査では約1万4600人を確保したが、高齢化や地域コミュニティの衰退で人材難が深刻化している。
報酬は数万円だが、防犯意識の高まりもあり、調査員の敬遠傾向が続く。
宇治市では600人の目標に対し550人にとどまり、1人が50~70世帯を複数担当する事態に。
府はホームページや広報紙で募集を行い、約170人から応募があった。だが現場の負担は大きい。
京都市で130世帯を回る81歳男性は「夜遅くは怪しまれるし、昼間は留守宅ばかり」と語る。空き家の増加や不在宅が多く、最低3回の訪問が必要とされている。
一方で、回答はネットでも可能で、府は植物園や商業施設で体験イベントを実施。西脇知事も「極めて重要な調査。
協力をお願いしたい」と呼びかける。
調査の必要性は揺るがないが、高齢の調査員に依存する従来方式には限界が見え始めている。
(要約、ここまで)
《筆者の考察》
国勢調査は国家の政策基盤を支える不可欠な統計だが、日本社会の変化に制度が追いつかず、いま「制度疲労」が顕著になっている。
調査員の高齢化、なり手不足、住民の防犯意識の高まりが重なり、現場には過度の負担が集中している。
記事では81歳の調査員が130世帯を担当する例が紹介されており、身体的・精神的なリスクを抱えながら活動している現状は看過できない。
姫路市では心臓病を抱えた調査員が死亡する事例もあった。善意と使命感に依存する仕組みは限界に達している。
課題の一つは「訪問中心の方式」である。
防犯意識の高まりから、初対面の訪問者に家族構成を問われること自体に不信感を抱く住民は少なくない。
特殊詐欺の多発が背景にあり、調査員証や公式手提げ袋だけでは十分な安心感を与えられない。
訪問自体が住民・調査員双方にストレスをもたらし、制度への信頼性を損ねている。
しかし、全面的なデジタル化にも限界がある。高齢単身世帯の中には、スマホやパソコンを持たず、郵送の投函も困難な人々が少なくない。
調査員が直接訪ねて説明し、記入や回収を支援することが不可欠な場面も残る。つまり、現時点では「訪問は不要」と切り捨てられない現実がある。
こうした状況を踏まえ、今後の国勢調査には以下の対応が求められる。
第一に、デジタル回答を基本としつつ、アナログ対応を補完的に位置づける「ハイブリッド型調査」への移行である。
行政手続きで活用されているマイナンバーカードや住民票情報をベースに、世帯情報を事前に把握し、確認や補足を中心に調査員が活動する方式が考えられる。
第二に、調査員制度そのものの見直しである。高齢者の善意に頼るのではなく、自治体が若年層や学生アルバイトを含めた多様な担い手を育成する仕組みを導入すべきだ。
加えて、報酬体系や安全対策を強化し、調査員が安心して活動できる環境を整える必要がある。
第三に、住民への広報・周知の徹底である。テレビCMやポスターに加え、SNSや行政アプリを通じて「調査員の訪問は正規のもの」であることを伝えるとともに、不在時はポスト投函やオンライン回答が可能であると分かりやすく周知すれば、不信感の軽減につながる。
国勢調査は日本の人口動態や社会変化を正確に把握する「国家の羅針盤」である。だが現行方式のままでは、調査員・住民双方に過重な負担と不安を強いる。
高齢化社会とデジタル社会の狭間にある現実を直視し、制度設計を抜本的に見直す時期に来ている。
調査の信頼性を守るためには、効率性と安全性を両立させる新しい仕組みへの移行が不可欠だ。
【好評発売中!】
『サービス業のISO(設計・環境側面・危険源・気候変動)』(令和出版)2025年4月30日発売
『~マーケット・クライアントの信頼を高めるマネジメントシステム~ サービス業のISO (設計・環境側面・危険源・気候変動の実践ガイド)』 著:有賀正彦 - 令和出版
『できるビジネスマンのマネジメント本』(玄武書房)
https://www.amazon.co.jp/dp/4909566066/
【よかったらメルマガ読者登録お願いします♪】↓
(パソコンでアクセスしている方)
http://www.mag2.com/m/0000218071.html
(携帯でアクセスしている方)
http://mobile.mag2.com/mm/0000218071.html
Twitter:https://twitter.com/ariga9001