環境パフォーマンスとは、組織がその活動・製品・サービスを通じて環境に与える影響を、事前に定めた目標に照らしてどの程度低減・最適化できているかを測るものです。
ISO 14001では「環境側面の特定」「著しい環境側面の管理」「継続的改善」が求められます。
システムインテグレーター(SIer)は、ICTを基盤にした業務システムの設計・構築・保守・運用を担う産業で、製造業のような直接的排出源ではないものの、以下のような間接的かつ構造的な環境負荷を持っています。
・データセンターの電力消費
・エンドユーザー向けシステムの省エネ設計の可否
・社員の移動・出張・通勤によるCO₂排出
・オフィス・サーバー室のエネルギー管理
・ICT機器や配線機材の廃棄
《環境パフォーマンスの具体例と取組み方》
以下に、SI業に特有の7つの環境側面と、それに対する具体的な取組みを示します。
1)社内ICTインフラの電力使用量(直接的側面)
<具体例>
社内サーバー・ネットワーク機器・PCによる電力消費
<取組み方>
・仮想化技術(VMware等)によるサーバー台数削減とラック電力の抑制
・社内クラウドから外部グリーンデータセンターへの移設(再エネ利用型)
・社員のPCに省電力モード/夜間自動シャットダウン設定を適用
※グリーンデータセンターのCO₂排出係数は、従来型より最大60~70%低減可能(※経産省調査より)。
2)エンドユーザー向けシステムのエネルギー効率(間接的側面)
<具体例>
システムインテグレーターが設計・納入する業務システムの処理効率や待機電力
<取組み方>
・業務アプリの軽量化、DB処理の最適化によりCPU使用率を削減
・IoTやエッジデバイスの選定時に「環境性能(電力/廃材)」を評価基準に含める
・RFP(提案依頼書)段階で「システムの環境配慮設計方針」を明示
3)オフィス・プロジェクトルームのエネルギー管理
<具体例>
大規模なプロジェクトルームや検証スペースでの空調・照明使用
<取組み方>
・LED照明とCO₂センサー連動型換気システムの導入
・稼働率に応じたゾーン管理(プロジェクト終了時のブロック停止)
・オフィスの「グリーンビルディング認証(BELS)」取得
4)移動・出張によるCO2排出
<具体例>
全国拠点での顧客訪問やオンサイト作業、長距離出張
<取組み方>
・原則としてWeb会議を推奨し、訪問頻度を見直す
・出張距離と移動手段によるCO₂排出量の月次集計と報告(Scope3対応)
・EV社用車への更新(社内のカーボンフットプリント削減)。
5)使用済みICT機器・ケーブル等の廃棄(電子廃棄物)
<具体例>
プロジェクト終了後の検証機材やテストサーバーの処分
<取組み方>
・メーカーの回収・再資源化スキーム(PCリサイクルマーク等)を利用
・廃棄前に「再利用可能機器リスト」を作成し、他プロジェクトへ横展開
・配線材やプラケースの素材分別とリサイクル率のモニタリング
6)システム設計時のライフサイクル思考の導入
<具体例>
開発・運用・保守・廃棄まで含めた環境影響の設計段階での判断
<取組み方>
・LCA(ライフサイクルアセスメント)の簡易版を活用し、設計フェーズで影響評価
・システム導入後10年間の運用電力・更新頻度をKPI化し、顧客と共有
・「環境設計指針書」や「グリーン設計レビュー」の社内標準を策定
7)社員の意識啓発と環境教育
<具体例>
設計者や営業担当者が環境配慮の価値を理解していない
<取組み方>
・環境マネジメント教育を技術者研修・営業研修に組み込み
・開発部門に「グリーン設計表彰制度」を導入し、成果と意識の両立を促進
・全社員に対する月次の「環境アクション報告書(簡易)」提出を義務付け
◆ISO 14001によるPDCAマネジメント体制
システムインテグレーターが環境パフォーマンスを向上させるには、以下のISO 14001型の運用が有効です。
<Plan(計画)>
使用電力、出張距離、廃棄物量などをKPI化し、目標設定
<Do(実行)>
節電化、Web会議導入、廃棄物管理制度の整備
<Check(確認)>
月次報告・環境監査・自己点検による成果確認
<Act(改善)>
目標未達項目の分析と、次年度計画への反映
<総括>
◆システムインテグレーターは「環境設計者」である
システムインテグレーション業は単なるソリューション提供者ではありません。
実質的には、デジタル社会のインフラと利用エネルギーを設計・制御する責任主体です。
ゆえに、自社の業務だけでなく、提供するシステム全体のライフサイクルを通じて環境影響を意識する姿勢こそが、今後のSI企業に求められる環境パフォーマンス管理の核心です。
ISO 14001の導入と活用は、環境性能の“見える化”と継続的改善を通じて、企業価値・顧客信頼・サステナビリティの同時実現を支える、強固な戦略基盤となるのです。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ958号より)
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