2025年9月19日付の「TBS NEWS DIG」(Nスタ)が、

『19年連続で日本人受賞「イグ・ノーベル賞」 日本人受賞者が多いワケは“懐の広さ”?【Nスタ解説】』

と題した見出し記事を報じていました。

以下に、この記事を要約し、日本人受賞者が多い背景と今後について考察しました。

 

《記事の要約》

ノーベル賞のパロディーとして、思わず笑い、同時に考えさせる研究をたたえる「イグ・ノーベル賞」の今年の受賞者が発表され、日本人の受賞が19年連続となった。

生物学賞を受けたのは、黒毛の牛をシマウマのように白い縞模様に塗装する「シマウシ」研究。アブなど吸血性昆虫の接近を抑え、家畜のストレスや感染症リスクを下げ、殺虫剤の削減にもつながる可能性を示した。

研究を担ったのは農研機構の兒嶋朋貴研究員らのチームだ。

 

同賞では、長年にわたり自爪の伸びる速度を記録した文学賞や、アルコール摂取が外国語発話に与える影響を確かめた平和賞など、独創的な試みが毎年並ぶ。

日本からは、話し続ける人の発話を遅延音で乱す装置(2012年・音響学賞)、バナナの皮の滑りやすさを摩擦係数で実証(2014年・物理学賞)、ヘリウムでワニの声が高くなる仕組みを用いて発声の共鳴を示した研究(2020年・音響学賞)など、科学的厳密さとユーモアを両立させた仕事が続いている。近年は、ドアノブやペットボトルキャップを回す際の指の使い方を統計化した工学研究(2022年)など、生活や設計への応用を見据えたテーマも目立つ。

奇抜に見えて実は実用の芽を秘める――それがイグ・ノーベルの面白さであり、日本勢の強みでもある。

(記事の要約、ここまで)

 

《筆者の考察》

<日本人受賞が多い理由と今後の受賞者予測>

日本人の受賞が続く背景には、三つの土壌がある。

 

第一に「問いの立て方」の多様性だ。

身の回りの素朴な違和感を学術の言葉に置き換え、測定し、検証する姿勢が広く共有されている。

生活と研究の距離が近い国民性は、身近な現象を緻密に追い込むテーマ選定を生みやすい。

第二に「継続と執念」。長期観察や地味なデータ収集を厭わない粘り強さは、ユーモラスな題材であっても再現性と統計的裏づけを確保し、審査側に“笑って納得”させる力になる。

第三に「受け皿の広さ」。大学・研究機関や企業ラボに、基礎と応用の間を行き来する小規模テーマを許容する風土が残っている。

研究資金の潤沢さでは劣っても、自由度と裁量が研究者の独創性を支えてきた。

 

一方で、受賞の質的変化も見逃せない。

近年は、単なる話題性よりも、工学設計、人間工学、動物福祉、感染症対策といった社会実装の芽を含む研究が選ばれる傾向が強い。

日本の強みはまさにこの“生活起点の知”。家畜の健康管理、製品のUI設計、高齢社会の動作支援、音や匂いと行動の関係など、生活に密着した“測って確かめる”分野は今後も受賞が見込める。

 

では、次の受賞候補はどこか。
予測の鍵は、

・誰も測っていないが測れそう
・笑えるが役に立つ
・低コストで長期継続可能

の三条件だ。

 

具体的には、
(1)ヒトと動物の境界にある行動学―例えば、家畜の模様・装飾・音刺激が害虫や捕食回避に与える影響の定量化。
(2)超高齢社会の“ささやかな不便”の工学化―瓶・袋・ボタン・段差など日常操作の力学を統計化し、負担を減らす設計指針を示す研究。
(3)気象・騒音・匂いとパフォーマンス―通勤経路や屋内環境の微小因子が仕事や学習、睡眠に与える影響をユニークな計測で可視化する試み。
(4)スポーツと遊びの科学―子どもの遊具や街角運動の“最小努力で最大効果”を解明する研究。

いずれも笑いの入口と社会的効用の出口を併せ持ち、日本の研究現場が得意とする領域だ。

 

課題もある。
研究時間の圧縮、短期成果偏重、競争的資金の大型化は、奇抜で小粒だが価値ある“問い”を育ちにくくする。
教育現場と地域ラボが小規模テーマを試す余白を確保し、若手が「変な研究」を正面から書き上げられる審査と評価軸を整えることが、受賞継続の条件となる。
イグ・ノーベルは“笑って終わり”ではない。
笑いが好奇心を呼び、好奇心が測定を生み、測定が生活を少し良くする――この循環を支える環境がある限り、日本からの受賞は続くだろう。
次の受賞者は、今日も身の回りの「なぜ?」を、真顔で数えている。

 

 

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