2025年9月11日付の神奈川新聞が、
『湯河原 ニホンザルが凶暴化、全頭捕獲を調整 年間1万件超の生活被害』
と題した見出し記事を報じていました。
以下に、この記事を要約、このような事態になった原因と自治体や国が取組むべき対策を考察しました。
《記事の要約》
<湯河原町で猿被害が深刻化>
神奈川県湯河原町で、ニホンザルによる生活被害が深刻化している。
特に「T1群」と呼ばれる群れは町中での出没が増え、凶暴化も進行中だ。2024年には1年間で1万854件もの被害が確認され、町は群れの全頭捕獲を目標に県と連携して対応を進めている。
町は2025年2月から4月にかけて、住民430人と店舗・事務所18軒を対象に、過去3年間(2022~2024年)の被害状況を調査。
その結果、3年間で計2万6839件もの被害が確認され、人的被害も2194件発生していたことが判明した。
「体に乗りかかられた」が37件、「引っかかれた」が5件あり、通院が必要となったケースもあった。
町環境課は「人への危害が常態化しており、早急な対策が必要」と危機感を示す。
被害は宮下地区や宮上地区など山間部近くに集中。
宿泊施設が多い地域でもあり、観光業への悪影響が懸念される。
住民からは「家の周りを猿に囲まれて外出できなかった」「昔は逃げた猿が、今は全く逃げない」との声も上がる。
もし宿泊客が負傷する事態が続けば、町の基幹産業である観光業への打撃は避けられない。
(記事の要約、ここまで)
《筆者の考察》
<猿の凶暴化の原因と必要な対応策>
1)凶暴化の主な原因
湯河原町での被害拡大の背景には、複数の要因が複雑に絡み合っている。
(1) 人慣れと餌付けの影響
昭和30年代には観光資源として猿への餌付けが盛んに行われ、その結果、猿が人を恐れなくなった。
現在も観光客や一部住民による「無意識の餌やり」が続き、人の生活圏に猿が頻繁に侵入する要因となっている。
人間の食べ物は栄養価が高く容易に手に入るため、一度その味を覚えた猿は山に戻ることがなくなる。
(2) 法制度上の制約
猿の捕獲や駆除には法的許可が必要で、迅速な対応が難しい。
結果として、被害が拡大してもすぐに駆除できず、群れ全体がさらに人間を恐れない存在となる悪循環が生じている。
(3) 環境変化と個体数増加
山林の減少や農地放棄により、猿が人間の生活圏に侵入しやすくなった。
自然界での食料不足が、住宅地や観光地への出没を加速させている。
2)自治体・国が取るべき対応策
(1) 法制度の見直しと駆除体制の強化
現行の鳥獣保護法では、駆除に厳格な条件が課されており、現場で迅速な対応が難しい。
人間への危害が常態化している場合は、例外規定を設けて即時対応できる法改正が必要である。
また、駆除を担う猟師は高齢化が進んでおり、後継者不足が課題となっている。
専門人材の育成と、自治体内での常設チームの設置が不可欠だ。
(2) 捕獲後の群れ管理と個体識別
T1群のように特定地域で被害を繰り返す群れは、全頭捕獲後に個体数を適正管理する仕組みが必要だ。
GPS首輪などを活用し、行動範囲をモニタリングすることで、被害拡大を未然に防げる。
(3) 住民・観光客への教育と啓発
観光地では、餌やり禁止を徹底し、食べ物を連想させる行動を避けるよう広報活動を強化する。
ゴミの管理も重要で、コンビニや宿泊施設のゴミ置き場には防獣対策を施すべきだ。
また、観光客が撮影目的で猿に近づく行為を防止するため、警告看板や多言語の注意喚起が求められる。
(4) 長期的な共生戦略
猿は本来、地域の生態系を構成する重要な存在である。
すべてを駆除するのではなく、農作物被害防止柵や猿追い装置を活用し、人間と野生動物の適切な距離を保つことが理想だ。
ただし、既に人を恐れない個体については迅速な処分が不可欠であり、「間引き」を通じて共存を実現することが現実的な対応である。
《結論》
湯河原町での猿被害は、観光資源としての餌付けに始まり、法制度の制約と環境変化が重なって深刻化した。
凶暴化した猿は、もはや単なる野生動物ではなく、人命や地域経済を脅かす「害獣」である。
自治体や国は、迅速な駆除体制の構築と法制度の柔軟化を進めるとともに、住民・観光客への啓発を強化すべきだ。
野生動物と人間の距離を取り戻すことこそが、持続可能な観光地と安全な暮らしを守るための最優先課題である。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ976号より)
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