環境パフォーマンス(Environmental Performance)とは、組織がその事業活動によって環境へ与える影響を、設定した環境方針や目標に基づいて、どの程度低減・最適化できているかを評価する指標です。
ISO 14001においては、環境パフォーマンスを改善するために「環境側面」の特定と「著しい環境側面」の管理が求められています。
飲食業は、調理・接客・仕入・廃棄といった日々の運営が、エネルギー消費、食品ロス、水使用、プラスチック容器、廃油処理、CO2排出など多様な環境負荷と直結している業種です。
また、顧客の行動(食べ残しや容器使用)にも環境影響が及ぶため、単に「店側の努力」では完結しない複合的な構造を持ちます
《環境パフォーマンスの具体例と取組み方》
以下に、飲食店が管理すべき主要な環境側面と、それに対する取組みを分かりやすく分類して示します。
1)食品ロス(廃棄食材)の削減
<具体例>
仕入過多・調理過剰・注文キャンセル・食べ残しによる可食廃棄
<取組み方>
・予約・POSデータ・曜日別販売実績に基づいた需要予測による仕入最適化
・小盛・ハーフサイズメニューの導入と顧客選択権の確保
・残飯の定量測定と、月次での「ロス比率」KPI化
・廃棄食材を堆肥化するコンポスト機導入またはフードバンクとの提携
※日本では飲食業由来の食品ロスは、年間52万トン(環境省 令和4年推計)に上るため、業界責任が問われます。
2)エネルギー使用(電気・ガス)の最適化
<具体例>
厨房機器(冷蔵庫、フライヤー、オーブン)、照明、空調の使用
<取組み方>
・厨房設備のインバーター化やIH機器化によるピーク負荷削減
・換気・空調のゾーン制御、ドア開閉時間の短縮(冷気漏れ対策)
・高効率LED照明、CO2センサー連動型換気装置の導入
・「1日ごとの電力使用量」を見える化し、異常値を分析
3)水資源の管理
<具体例>
食器洗浄機、手洗い、製氷、野菜洗浄での大量使用
<取組み方>
・節水型蛇口やセンサー式水栓、節水トイレの設置
・食器洗浄工程のすすぎ温度・回数の最適化
・食材の事前仕分け・下処理における流水時間の短縮指導
・月間水使用量の推移を記録・公表し、目標を設定
4)プラスチック廃棄物の削減
<具体例>
テイクアウト容器、ストロー、カトラリー、ラップフィルム
<取組み方>
・バイオマスプラスチック容器・紙容器への切替
・「容器持参割引制度(BYO)」を導入し、リピーター強化と環境配慮を両立
・レジ袋の無料配布停止と、法令に基づいた素材表示
・プラスチック使用量を品目別に数値管理し、年度削減目標を設定
5)廃油・廃棄物の適正処理
<具体例>
フライヤー油、汚れた調理紙、使い捨てクロスなどの産業廃棄物
<取組み方>
・廃油リサイクル業者と契約し、バイオディーゼル燃料(BDF)化
・ごみの4分類(可燃・資源・プラ・危険物)を従業員に徹底教育
・ゴミ重量を週次で記録し、ロス発生源の分析
・清掃業務でも使い捨て製品を極力減らし、布タオル・モップへ移行
6)原材料調達の環境配慮
<具体例>
環境負荷の高い肉類や遠隔地輸送を伴う食材の多用
<取組み方>
・地産地消・季節食材の使用により輸送によるCO2排出の低減
・認証制度(MSC認証、フェアトレード認証など)のある食材を選定
・一部のメニューで、植物性食材(プラントベース)を採用し、多様な選択肢を提供
・食材別のLCA(ライフサイクルアセスメント)情報を収集・参照
7)顧客・従業員への環境啓発と行動促進
<具体例>
客やスタッフが環境意識を持たないまま消費・調理・清掃を行う
<取組み方>
・メニューや店頭ポスターで「環境配慮型店舗」であることを可視化
・社員研修にISO 14001やSDGsの要素を盛り込み、「気づきの共有」を促進
・「エコアクションポイント」を導入し、節水・ゴミ減らしなど行動に応じて評価
・SNSや公式HPで「取り組み実績」を発信し、ステークホルダーの信頼獲得
◆ISO 14001に基づくマメにメントシステム構築の意義
飲食業がISO 14001を活用して環境パフォーマンスを体系的に管理することは、以下のような効果をもたらします:
<項目> <内容>
環境側面の特定 食品ロス、水、電力、廃棄物などの影響源を明確化
環境目標の設定 例:食品廃棄▲20%、水使用量▲10%、CO2排出▲15%
PDCA運用 月次モニタリング → 改善策立案 → スタッフ教育と評価
社会的信用 ESG投資・自治体補助金・採用ブランディングにも貢献
<総括>
◆飲食業の環境パフォーマンスは“おいしさ”と“地球へのやさしさ”の両立
飲食店が提供する「食」は、単なる商品ではなく、食材、エネルギー、水、輸送、包材、そして人の行動すべての結晶です。
だからこそ、飲食業は他産業と比べても環境パフォーマンスの影響力が極めて広範であり、かつ社会への波及効果も大きい業種です。
ISO 14001の精神を経営に統合することで、「おいしさの裏にある責任」も伝えることができ、持続可能な飲食文化の担い手として、次世代への信頼と価値を創出することが可能です。
これは、味覚以上に“未来の味”をつくる営みとも言えるでしょう。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ959号より)
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