関西テレビが、2025年9月15日付に、
『「ペイを選んでポイントつけて…」複雑すぎる日本のキャッシュレス 弱者のために現金必要 あるべき姿は?』
と題した見出し記事を報じていました。
以下にこの記事を要約し、キャッシュレス弱者のために決済方法のあるべき姿について、考察しました。
《記事の要約》
<神奈川県、収入印紙販売を終了へ キャッシュレス推進の一環>
神奈川県は2025年9月末をもって、運転免許更新やパスポート申請時に使用する「県収入印紙」の販売を終了すると発表しました。
これは公的手続きのキャッシュレス決済推進を目的とした取り組みです。
近年、警察による駐車違反反則金の支払いや各種公的機関でキャッシュレス導入が進んでいますが、その一方で、手数料負担や運用上の課題から「現金のみ」に戻る小規模店舗も増加しており、キャッシュレス化が進んでいるのか後退しているのか、現状は複雑です。
東洋大学の川野祐司教授は、日本のキャッシュレス化が停滞している理由について、「コストは目に見えやすく、メリットは見えにくい」と指摘します。
店舗側は機器導入やスタッフ教育、手数料負担などがすぐに実感できる一方で、現金管理の負担軽減といった利点は数値化しにくく、積極的な導入が進まないといいます。
さらに、日本ではQRコード決済方式が乱立しており、統一規格がないことが大きな課題です。
シンガポールでは一つのQRコードで複数の決済が可能ですが、日本では「何ペイですか?」と確認するやり取りや、複数アプリの操作が必要になり、「現金の方が早い」という逆転現象が起きています。
また、日本特有の「98円」「998円」といった細かな価格設定はキャッシュレスと相性が良いものの、現金では硬貨準備や釣銭管理に手間がかかります。
海外では現金支払い時に切り上げや切り捨てを行う「ラウンディング」が導入されており、日本でも将来的に一円玉廃止の議論が進む可能性があります。
川野教授は「キャッシュレスは現金をなくすことが目的ではなく、むしろ現金を維持するための手段でもある」と強調します。
視覚障害者や高齢者など、キャッシュレス利用が難しい人にとって現金は不可欠であり、両者が共存する社会を目指すことが重要だと述べました。
(要約、ここまで)
《筆者の考察》
<日本のキャッシュレス決済が複雑な理由と、弱者に優しい決済方法とは>
1)日本特有の乱立構造
日本のキャッシュレス環境は、QR決済、電子マネー、クレジットカード、ポイントカードが複雑に乱立しています。
レジ前には数十種類のロゴが並び、店員が「○○ペイでお願いします」と確認する手間が発生。
シンガポールのように統一規格を導入していないため、利用者も店舗も混乱しやすい状況です。
ポイントカード提示と決済アプリが分離していることも効率を下げる要因で、一体化されたシステムが求められます。
2)店舗側の手数料負担
小規模店舗にとって、決済手数料は大きな負担です。
特に低価格帯の商品を扱う店では、売上の数%が手数料で失われるため、利益を圧迫します。
また、キャッシュレス売上が口座に入金されるまでのタイムラグも資金繰りを難しくし、現金決済を維持する理由となっています。
この課題を解消するには、国や自治体が手数料補助や端末貸与を行い、店舗の導入コストを下げることが不可欠です。
3)高齢者や非デジタル層への配慮
高齢者やスマホを持たない人、視覚障害者などはキャッシュレス操作に不安を抱えています。
特に役所での手続きは「誰もが利用できるユニバーサルな環境」が求められ、現金支払いを完全に廃止すべきではありません。
また、視覚障害者向けには、音声ガイドや統一デザインを活用した操作支援が有効です。
4)「現金を残すためのキャッシュレス」
現金を完全に排除するのではなく、現金とキャッシュレスを共存させる戦略が必要です。
キャッシュレスが普及すれば、現金流通量が減り、現金管理コスト(両替手数料やATM維持費)が削減されます。
その結果、現金利用者にもメリットが還元され、弱者に優しい社会が実現します。
5)あるべき決済環境
・統一規格の導入
QRコードやポイントシステムを一元化し、利用者の混乱を防ぐ。
・店舗支援
小規模店への手数料補助や端末無償貸与を実施。
・ユニバーサルデザイン
音声ガイド、シンプルなUIで高齢者や視覚障害者も安心して利用できる設計。
・現金維持
最低限の現金支払い窓口を残し、誰もが安心して暮らせる社会を守る。
<結論>
日本のキャッシュレス決済が複雑なのは、乱立する決済方式と店舗負担の大きさが原因です。
政府と自治体は、統一化と支援策を同時に進めることで、「現金を残すためのキャッシュレス化」を実現すべきです。
現金とキャッシュレスが支え合う社会こそ、誰もが安心して買い物できる未来への鍵となるでしょう。
【好評発売中!】
『サービス業のISO(設計・環境側面・危険源・気候変動)』(令和出版)2025年4月30日発売
『~マーケット・クライアントの信頼を高めるマネジメントシステム~ サービス業のISO (設計・環境側面・危険源・気候変動の実践ガイド)』 著:有賀正彦 - 令和出版
『できるビジネスマンのマネジメント本』(玄武書房)
https://www.amazon.co.jp/dp/4909566066/
【よかったらメルマガ読者登録お願いします♪】↓
(パソコンでアクセスしている方)
http://www.mag2.com/m/0000218071.html
(携帯でアクセスしている方)
http://mobile.mag2.com/mm/0000218071.html
Twitter:https://twitter.com/ariga9001