環境パフォーマンスとは、組織または個人の活動が環境に与える影響に対して設定した目標や方針に、どれだけ到達しているかを定量・定性的に評価することです。

 

動画クリエイターは一見「デジタル完結型」の職業のように思えますが、制作活動全体のライフサイクルを見渡すと、複数の環境負荷を伴う業種であることが明らかになります。

ISO 14001の観点では、「使用エネルギー」「機器のライフサイクル」「移動手段」「廃棄物」「クラウドストレージのCO₂排出」などが、環境側面として管理対象になります。

 

《環境パフォーマンスの具体例と取組み方》

以下に、動画クリエイターとしての活動における代表的な環境側面(例)と、それに対する現実的かつ効果的な取組み方を7つ紹介します。

 

1)映像編集・機器使用に伴う電力消費(CO₂排出)

<具体例>

動画編集用PC・モニター・照明・冷暖房などの長時間稼働

<取組み方>

・高効率電源ユニット搭載のPC(80 PLUS認証など)を導入

・編集作業中は自動スリープ・スクリーンオフ設定を徹底

・照明機材をLED仕様へ変更し、演色性と省エネの両立を図る

・オフグリッド編集環境(ポータブル電源+太陽光充電)を部分導入

 

※編集時間が長い分、1台あたりのCO2排出量も年間で数十~百キログラムに及ぶケースもあるため、持続可能なエネルギー設計が重要です。

 

2)撮影時の移動による交通・燃料起因の環境負荷

<具体例>

車・飛行機・新幹線などによる遠隔地ロケ移動

<取組み方>

・公共交通機関やEVカーシェアの優先利用

・バーチャル背景や合成技術(グリーンバック)の活用により、現地ロケ回数を削減

・CO2排出量を計算し、カーボンオフセット(植林支援等)を自主的に実施

 

3)機材や周辺機器の製造・廃棄による環境負荷

<具体例>

カメラ、三脚、マイク、照明器具、ドローンなどの買い替え

<取組み方>

・新品購入ではなく、中古・リファービッシュ(再整備品)の積極活用

・機材のリース・レンタル活用で購入量を抑制

・廃棄時は小型家電リサイクル法に基づき適切なリユース・リサイクルを実施

 

4)クラウド利用によるサーバー由来のCO2排出

<具体例>

Google Drive、Dropbox、YouTube、Adobe Creative Cloudなどの使用

<取組み方>

・クラウドストレージ使用量の最適化(不要データの整理・削除)

・カーボンニュートラルを宣言するサービス(例:Google Cloud)への移行

・大容量の動画ファイル共有には一時的なリンク化などでストレージ保持期間を短縮

 

※クラウド1TBあたり、年間最大200KgのCO2が排出されるという試算もあります。

 

5)撮影現場で発生する廃棄物

<具体例>

弁当の容器、ペットボトル、レフ板等の簡易機材の破損品

<取組み方>

・撮影現場でのごみ分別ルールを明文化し、関係者に共有

・マイボトル・マイカトラリーの持参を推奨、または配布

・機材消耗品は修繕可能なもの、再利用可能な素材を優先的に調達

 

6)動画コンテンツ自体による環境啓発への貢献

<具体例>

環境配慮型ライフスタイルやサステナブル製品を紹介する動画

<取組み方>

・SDGsや脱炭素、エコロジーをテーマとしたコンテンツの企画・発信

・視聴者に具体的なエコアクション(節電、リサイクルなど)を提示

・自身の制作プロセスも含めた「エコな動画づくり」企画の展開

 

7)視聴者数拡大に伴う電力消費(動画視聴自体の影響)

<具体例>

1本の動画が100万回再生されると、相応のサーバー負荷が生じる

<取組み方>

・動画の解像度・長さを最適化(不要な高解像度化を避ける)

・再生時のループ防止を訴求し、バックグラウンド再生などの電力浪費を抑制

・YouTube等の省エネ配信設定(HDR・自動再生制御等)を利用

 

 

◆ISO 14001的アプローチによるマネジメント強化

動画クリエイターも個人または事業者として、以下のように環境パフォーマンス管理のPDCAサイクルを回すことが可能です:

 

・Plan(計画)

使用エネルギー・移動距離・機材廃棄などの環境側面を洗い出し、削減目標を設定

・Do(実行)

節電機材導入、移動最適化、クラウド利用ルール策定などを実施

・Check(確認)

毎月の電力使用量・移動距離・廃棄量を記録・分析

・Act(改善)

成果に応じて目標・運用方法を見直し、次の改善へつなげる

 

<総括>

~動画クリエイターの環境パフォーマンスは「表現力」と「責任感」の融合~

動画は視覚と感情に強く訴える媒体であり、情報伝達と社会啓発の力を兼ね備えた手段です。

だからこそ、動画クリエイター自身が環境負荷に敏感になり、制作・発信・使用機材・日常行動において持続可能性を追求することは、業界全体の信頼と価値向上に直結します。

 

環境パフォーマンスの向上とは、単に削減ではなく、「次世代へ託す映像文化の質」そのものでもあるのです。

ISO 14001の精神を、表現者としての責任に落とし込むこと。それこそが、真にサステナブルなクリエイターの姿と言えるでしょう。

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ957号より)

 

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