2024年2月23日に発行されたISOマネジメントシステム規格の追補では、「気候変動」について、「気候変動に関するISOロンドン宣言」を支持し、以下の内容が《追加》されました。
（以下、規格の引用。注：「XXXX」は、ISO9001、14001など）
4 組織の状況
4.1 組織及びその状況の理解
組織は，組織の目的に関連し，かつ，そのXXXXマネジメントシステムの意図した結果を達成する組織の能力に影響を与える，外部及び内部の課題を決定しなければならない。
《追加》 組織は，気候変動が関連する課題かどうかを決定しなければならない。
4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解
組織は，次の事項を決定しなければならない。
－XXXXマネジメントシステムに関連する利害関係者
－それらの利害関係者の，関連する要求事項
－それらの要求事項のうち，XXXXマネジメントシステムを通して取り組むもの
《追加》 注記：関連する利害関係者は，気候変動に関する要求事項をもつ可能性がある。
（引用、ここまで）
今回は、「組織は，気候変動が関連する課題かどうかを決定しなければならない。」について、「不動産業の場合」の「気候変動が関連する課題」の事例と「関連する利害関係者は，気候変動に関する要求事項をもつ可能性がある。」の事例を解説します。
《不動産業における気候変動の関連課題》
不動産業は、気候変動の直接的および間接的な影響を強く受ける産業の一つです。
以下はISO9001、ISO14001、ISO45001の視点から見た、生命保険業における気候変動の関連課題です。
1）ISO9001（品質マネジメントシステム）の視点:
不動産業において、気候変動は建物の構造や使用材料に新たな要求をもたらします。
例えば、気候変動による極端な気象条件に耐えうる建築基準への適応が必要です。
これにより、建物の品質管理プロセスにおいて、耐候性やエネルギー効率の高い材料の選定が重要になります。
2）ISO14001（環境マネジメントシステム）の視点:
不動産業界は、建築プロジェクトにおける環境への影響を最小限に抑える責任があります。
気候変動対策として、温室効果ガス排出量を削減するための取り組みが求められます。
これには、再生可能エネルギーの利用拡大や、建築物のエネルギー効率を向上させる技術の導入が含まれます。
3）ISO45001（労働安全衛生マネジメントシステム）の視点:
建築現場における労働安全にも、気候変動は大きな影響を与えます。
例えば、高温による熱中症のリスク増加や、強風による作業の危険性の増大など、労働条件の厳しさが増しています。
これに対応するため、適切な保護具の提供や緊急時対応プロトコルの整備が必要です。
《不動産業の利害関係者と気候変動》
不動産業界における主要な利害関係者は、投資家、顧客（テナントや購入者）、地域コミュニティ、政府や規制機関です。
これらの利害関係者が気候変動に関連する課題にどう関与しているかを考察します。
1）ISO9001の視点:
「投資家」
投資家は、気候変動リスクを考慮した不動産投資の安全性と収益性を求めます。
このため、不動産会社は気候変動に強い建物の開発や、リスク管理戦略を明確にする必要があります。
「顧客」
テナントや購入者は、エネルギー効率の良い、持続可能な住宅を求めています。
不動産業者は顧客のこのような要求に応じるため、省エネルギー設備や緑化施策を取り入れることが増えています。
2）ISO14001の視点:
「地域コミュニティ」
地域コミュニティは、新しい建築プロジェクトが地域の環境に与える影響に敏感です。
不動産開発において環境影響評価の透明性を保ち、地域住民との良好な関係を維持することが重要です。
3）ISO45001の視点:
「政府や規制機関」
政府は建築基準の厳格化を進め、気候変動対策を法規制に反映させています。
不動産業者は、これらの新しい規制に適合するための対策を講じることが求められます。
これらの視点から、不動産業界における気候変動対策は、技術革新、法規制の遵守、地域社会との連携を含む多方面にわたるアプローチが必要であることがわかります。
（※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ956号より）
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