環境パフォーマンスとは、組織が自らの環境方針および環境目標に対して、どの程度成果を上げているかを示す指標です。

ISO 14001では、「環境側面」(組織活動が環境に与える要因)を特定し、それに基づく“著しい環境側面”(Significant Environmental Aspects)の改善が求められます。

 

金融機関は、製造業のように直接的な排出や環境負荷が少ない業種と見られがちですが、実際には2つの重要な側面から環境パフォーマンスを評価すべきです。

 

◆金融機関における2つの環境影響カテゴリー

1)オペレーショナルな環境負荷(電力使用、紙資源、通勤・出張、廃棄物など)

2)ファイナンスを通じた間接的な環境影響(環境に影響を与える投融資・資金の流れ)

 

以下に、「具体例」と「その取組み方」を詳しく説明します。

 

《具体例と取組み方》

1)オペレーション面の環境パフォーマンス向上

具体例1:電力使用量の削減(支店・本部ビル)

<取組み方>

・空調設定の最適化(冷房28℃・暖房20℃)

・スマートビル制御システム(BEMS)導入

・LED照明+人感センサー導入

・休日・夜間のPC・サーバールーム稼働管理

 

具体例2:ペーパーレス化の徹底

<取組み方>

・預金通帳の「デジタル通帳」化の推進

・社内稟議・文書・契約書の電子化(電子印鑑、DocuSign等)

・ATM明細の印刷省略推進とオンラインバンキング強化

注)大手都市銀行では、年間5億枚以上の紙削減につながるペーパーレス化が進められており、ISO 14001の環境側面として明確に管理されています。

 

具体例3:支店網・営業車の燃料消費とCO2排出

<取組み方>

・電動営業車(EV)への切り替え

・近隣支店間の統廃合によりエネルギー集中管理

・出張をオンライン会議に代替(年間1,000件以上)

 

2)投融資活動による間接的な環境影響の管理

具体例4:ESGリスクを考慮した投資・融資判断

<取組み方>

・投資先企業のCO2排出量・気候変動リスクの評価(TCFD対応)

・石炭火力発電所、森林伐採を伴うプロジェクトへの与信制限

・環境スコア付き投資商品・ファンド(グリーンボンド、ESG債券など)の拡充

 

注)日本の大手金融機関も、国際的な金融機関原則(Equator Principles)に準拠し、重大な環境影響を伴うプロジェクトには厳しい審査基準を適用しています。

 

具体例5:グリーンファイナンス・サステナブルファイナンスの拡大

<取組み方>

・再生可能エネルギー企業への融資比率を拡大

・地方自治体や中小企業向けの「脱炭素融資枠」の新設

・グリーンローンの環境モニタリング体制を構築(KPIの追跡)

 

3)廃棄物と機器更新による環境影響の低減

具体例6:ATM・PC等の廃棄管理

<取組み方>

・機器更新時にメーカーのリサイクルルートを活用

・硬貨選別機などの部品を再利用・再生

・重要データ消去に関する環境対応型の業者選定(ISO 14001認証取得企業を優先)

 

4)環境教育・従業員エンゲージメント

具体例7:全社員の環境意識向上

<取組み方>

・新入社員教育でのISO 14001/SDGs研修の必修化

・環境行動記録(節電・通勤方法等)を報奨制度に反映

・環境レポートを社員・顧客へ公表し、双方向的な環境対話を促進

 

◆ISO 14001導入による管理の高度化

ISO 14001を導入することで、金融機関は以下のような環境マネジメント体制を構築可能です。

・環境方針・目標の設定(例:2030年までにCO2排出を50%削減)

・著しい環境側面の特定と管理(ペーパーレス・エネルギー・投融資リスク)

・定量的モニタリングとマネジメントレビュー

・利害関係者(株主・顧客・ESG評価機関)との透明性ある情報開示

 

<総括:金融機関の環境パフォーマンスは社会的インパクトの源泉>

金融機関は単なる「事務業」ではなく、資金の流れを通じて社会の環境価値を形成するエンジンです。

そのため、自らの環境パフォーマンスの向上は、業務効率化やコスト削減に留まらず、ESG評価の向上、企業価値の向上、ひいては気候変動への金融的アプローチの中心的プレイヤーとなることを意味します。

 

ISO 14001を基盤とした環境マネジメントは、その目標達成に向けた強力な実践フレームワークとなるのです。

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ955号より)

 

【好評発売中!】

『サービス業のISO(設計・環境側面・危険源・気候変動)』(令和出版)2025年4月30日発売
『~マーケット・クライアントの信頼を高めるマネジメントシステム~ サービス業のISO (設計・環境側面・危険源・気候変動の実践ガイド)』 著:有賀正彦 - 令和出版

『できるビジネスマンのマネジメント本』(玄武書房)

https://www.amazon.co.jp/dp/4909566066/

 

【よかったらメルマガ読者登録お願いします♪】↓

(パソコンでアクセスしている方)

http://www.mag2.com/m/0000218071.html

(携帯でアクセスしている方)

http://mobile.mag2.com/mm/0000218071.html

Twitter:https://twitter.com/ariga9001