2025年8月18日付の読売新聞が、

『消化器外科医の不足深刻…厳しい勤務で若手敬遠、「胃や腸のがん患者の命に関わる」学会に危機感』

と題した見出し記事を報じていました。

 

この問題は、難関資格である医師だけではなく、他の難関資格の獣医師や弁護士でも同じような状況が発生していると思います。

獣医師の場合は、多くが愛玩動物と言われる犬猫の獣医師を希望しており、酪農系の大型動物(牛やウマ)の獣医師希望は勤務体系より敬遠されるようです。

また、弁護士も、刑事事件は、報酬が低く、権利関係などの企業法務を希望する人が多いそうです。

要は、同じ資格でも、稼げる分野や仕事上のリスクが低い分野、勤務体系が安定している分野に偏在するわけです。

以下に、この記事を要約し、消化器外科医不足の解消法について、考察しました。

 

《記事の要約》

胃や腸などの手術を担う「消化器外科医」の不足が全国で深刻化している。

医師数はこの20年で約2割減り、2022年には約1万9千人にとどまった。

増加傾向にある麻酔科や内科と対照的で、手術体制の維持が危機に瀕している。

背景には、10時間を超える難手術や夜間・休日の緊急対応といった過酷な勤務環境がある。

報酬は他科と大きな差がなく、若手医師が「割に合わない」と敬遠する傾向が強まっている。

 

大学病院も対応に乗り出している。北里大では一人の患者を複数の医師で担当し、緊急対応を分担。

富山大は長時間手術を数時間ごとに交代制で執刀、広島大は若手医師の年俸を3割増やした。

学会は医師を地域拠点病院に集約し、休暇取得や経験蓄積を容易にする方針を示している。

厚生労働省も、待遇改善に取り組む医療機関への診療報酬加算を検討している。

 

学会理事長は「このままでは救急対応が困難になり、がん患者の命に直結する」と警鐘を鳴らす。

医療の持続性を守るため、早急な改善が求められている。

(記事の要約、ここまで)

 

《筆者の考察》

<消化器外科医不足の課題と必要な対策>

 

消化器外科医不足は、単なる人手の問題ではなく、日本の医療提供体制そのものを揺るがす社会課題である。

背景には「3K(きつい・汚い・危険)」の労働環境、待遇と責任の不均衡、制度設計上の歪みが複合的に存在する。

 

第一に、労働環境の厳しさが若手医師離れを招いている。

深夜や休日の緊急呼び出し、10時間を超える長時間手術、命に直結する高度な責任。それに見合う報酬や休暇制度が整わなければ、「美容外科や皮膚科へ流れる」のは自然な選択である。

実際、現役外科医からも「管理職になっても時間外手当が出ない」「疲弊を見て後輩が外科を避ける」との声が上がっている。待遇改善と働き方改革は急務である。

 

第二に、報酬体系の不整合である。診療報酬の実質的なマイナス改訂が続いた結果、外科系診療科は相対的に給与水準が低下した。

他職種との比較で「割に合わない」と感じる医師が増え、動機付けが弱まった。少なくともインフレ率に応じた報酬改訂、外科系に重点を置いた加算が必要だろう。

 

第三に、医師配置の偏在と制度的制約である。

自由化政策により医師数は増えても、診療科や地域の偏りが拡大した。地方の基幹病院では救急・がん手術が困難になりつつある。

学会が提案する「拠点病院への集約」は、労働負担を分散し経験蓄積にも有効だが、医師の偏在解消には国レベルでの人員調整や美容外科の開業制限など制度的介入も検討すべきだ。

 

第四に、テクノロジーの活用である。

AIによる術前診断や事務作業の自動化、手術支援ロボットの普及は、外科医の負担軽減に直結する。

既に一部大学病院では導入が進むが、導入コストを補助し、中小病院にも広げる政策が不可欠だ。

 

最後に、社会的な価値の再定義である。

消化器外科医は「患者の命を救う最後の砦」であり、その専門性は代替困難である。

報酬・待遇改善だけでなく、「やりがい」を次世代に伝える教育的工夫も求められる。指導医が手術の意義や達成感を共有することは、金銭以上に若手医師の心を動かす可能性がある。

 

結論として、消化器外科医不足の解決には、

1)待遇改善

2)報酬制度改革

3)人員配置の是正

4)技術革新の普及

5)社会的価値の発信

という多角的な施策が必要である。

これらを実行しなければ、救急・がん治療の遅延は避けられず、日本の医療体制の根幹が揺らぐだろう。

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ973号より)

 

 

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