環境パフォーマンスとは、組織が設定した環境目標をどれだけ達成できているかを示す指標であり、環境に対する取り組みの成果を定量的・定性的に評価するために用いられます。
ビル管理業は、建物の維持・管理・運用を担う業種であり、その活動はエネルギー使用、水資源の管理、廃棄物処理、空調や照明設備の運転など、多岐にわたる環境負荷と密接に関わっています。
ビルのライフサイクル全体での環境負荷低減に貢献するためには、適切な管理・改善が不可欠です。
以下に、「具体例」と「その取組み方」を詳しく説明します。
《具体例と取組み方》
1)エネルギー使用量の最適化
ビル管理業において最も大きな環境負荷は、空調、照明、昇降機などの電力使用です。
・具体例:BEMS(ビルエネルギーマネジメントシステム)の導入
BEMSを導入し、電力・ガス・水の使用量をリアルタイムで監視・分析することで、エネルギーの「見える化」を図ります。
これにより、無駄な電力使用を発見・是正することが可能になります。
・取組み方:空調・照明の自動制御システムの導入
季節や時間帯、使用状況に応じて照明や空調を自動制御するシステムを導入し、快適性を維持しながらエネルギーを最適化します。
例えば、不在エリアの照明をセンサー連動で自動消灯する仕組みが効果的です。
2)設備機器の高効率化と更新管理
古くなった設備はエネルギー効率が悪く、環境負荷が高くなります。
・具体例:高効率空調機・LED照明への更新
定期的なエネルギー診断を実施し、老朽化した設備を省エネルギー型の機器に更新します。
特に、インバーター付き空調機器やLED照明などは、エネルギー削減に大きく寄与します。
・取組み方:LCC(ライフサイクルコスト)視点での投資判断
初期コストだけでなく、運転・維持管理にかかるトータルコスト(環境負荷も含む)を考慮して設備更新を計画することが重要です。
3)水資源の効率的な管理
トイレや冷却塔など、水の使用もビル運用の中で大きな要素です。
・具体例:節水型設備の導入
節水型トイレ・自動止水蛇口の導入により、水の使用量を大幅に削減できます。
・取組み方:雨水利用・中水利用システムの活用
ビル屋上に雨水貯留タンクを設置し、トイレ洗浄水や植栽の散水に再利用することで、水道使用量の削減と都市型洪水対策の両立が図れます。
4)廃棄物の適正管理とリサイクル
ビル内で発生するごみ(オフィス、店舗、テナント等)を適切に処理・分別することもビル管理業の重要な役割です。
・具体例:分別回収の徹底とリサイクル率の向上
各フロアに分別回収ステーションを設置し、テナントに対して廃棄物の分別指導を行います。
事務用品や段ボール、缶・ビン・ペットボトル等の回収・リサイクル体制を整備します。
・取組み方:廃棄物データの記録と報告
定期的に排出量を記録・分析し、テナント向けにフィードバックすることで、意識向上とリサイクル率の向上が図れます。
5)建物全体の環境認証取得の支援
ビル管理会社が主導して環境配慮型の建物運用を行うことで、環境性能評価認証の取得が可能となります。
・具体例:CASBEEやBELSの取得支援
建築環境総合性能評価(CASBEE)や建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)など、環境性能を可視化する認証の取得を支援し、ビルの資産価値と環境評価を向上させます。
・取組み方:認証要件に基づいた管理体制の整備
設備管理、清掃、修繕、テナント対応など、日常業務に環境配慮の視点を取り入れ、認証項目に合致する運用を実施します。
6)教育・啓発活動による行動変容の促進
ビル管理スタッフやテナントの行動が、ビル全体の環境パフォーマンスに大きく影響します。
・具体例:省エネ・リサイクルに関する研修会の実施
施設管理者や清掃員を対象に、省エネ運用や廃棄物分別の研修を定期的に実施し、業務の中での環境配慮を徹底させます。
・取組み方:テナント向けの情報発信
月次でエネルギー使用量や廃棄物排出量の報告書を配布し、行動変容を促すとともに、環境目標達成への協力を呼びかけます。
《まとめ》
ビル管理業における環境パフォーマンスの向上には、ISO 14001(環境マネジメントシステム)の導入が有効です。
この規格に基づいて「環境方針」を策定し、PDCA(計画・実行・評価・改善)のマネジメントサイクルを回すことで、持続的な環境負荷の低減が実現可能になります。
ビル管理会社として、建物の環境性能を最大化することは、テナントや利用者からの評価向上、建物価値の維持、さらには地域社会への貢献にもつながります。
環境パフォーマンスを経営の重要要素と捉え、継続的な改善に取り組むことが、持続可能な都市づくりの一翼を担う鍵となります。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ952号より)
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