2025年8月7日付の読売新聞(電子版)が、

『キャリア官僚の初任給30万円超、優秀な人材確保へ…人事院勧告に首相「民間の賃上げ状況を反映」』

と題した見出し記事を報じていました。

かつては、東大生の就職先として「官僚」の人気が高かったですが、近年は、外資系コンサルティング会社に人材が流れていると言われています。

以下に、この記事を要約し、初任給を引き上げることで、この流れに歯止めが掛かるのか、などについて考察しました。

 

《記事の要約》

人事院は2025年8月7日、国家公務員の給与引き上げを国会と内閣に勧告しました。

月給は平均で3.62%(1万5014円)増、ボーナスは年4.65か月分へ0.05か月分の増額です。

特に中央省庁で採用されるキャリア官僚の初任給は、初めて30万円を超える見通しで、優秀な人材の確保を図る狙いがあります。

 

月給の上げ幅が3%を超えるのは1991年以来、実に34年ぶりのこと。

勧告通りに実施されれば、キャリア官僚の初任給(諸手当込み)は1万6400円増え、30万1200円となります。

川本裕子人事院総裁はこの日、首相官邸を訪れ、石破首相に勧告書を手渡しました。首相は「民間で広がる賃上げの流れを反映したものであり、公務員全体の人材確保に資する」と述べました。

 

比較対象となる企業規模も見直され、一般職員は従来の「従業員50人以上」から「100人以上」に、中央省庁職員は「東京23区に本社を置く500人以上の企業」から「1000人以上」に変更されました。

 

これにより、大卒の総合職の初任給は24万2000円(1万2000円増)、一般職は23万2000円に。

高卒の一般職は20万300円(1万2300円増)となります。

さらに、中央省庁の幹部や管理職には新設された「本府省業務調整手当」として月額5万1800円が支給される予定です。

(記事の要約、ここまで)

 

《筆者の考察》

<初任給引き上げの効果と今後必要な政府の対策>

 

国家公務員、特にキャリア官僚の初任給を引き上げることで、優秀な人材が官僚を目指すようになるのか・・・その効果には限界があると言わざるを得ません。

 

まず、月給30万円超という水準は確かに象徴的ではありますが、外資系企業や大手コンサル、IT企業などでは、初任給だけで年収500万〜600万円規模も珍しくありません。

グローバル市場で活躍できるトップ人材にとっては、数%の引き上げでは競争力に乏しく、民間との待遇格差は依然として大きいのが現実です。

特に「働き方」や「裁量の大きさ」といった要素も、民間の方が柔軟かつ魅力的です。

 

また、若手優遇の印象が中堅層の士気低下を招く可能性もあります。

長年働いてきた職員が報われない構造では、組織の健全な運営にも支障をきたすでしょう。初任給引き上げはあくまで一手段に過ぎず、制度全体の見直しが求められています。

 

では、優秀な若者にとって魅力ある官僚制度にするためには何が必要か。

以下に3点、政府が実施すべき追加対策を提案します。

 

1)政策立案の自由度と実行力の向上

政治主導の不明瞭な事業に振り回され、結果的に「やらない方が良かった」ような仕事に従事せざるを得ない現状は、極めて非効率です。

現場官僚に政策裁量を持たせ、実効性ある仕事ができる仕組みこそ、やりがいの最大化に繋がります。

 

2)長時間労働・残業体質の是正

官庁では深夜残業が常態化し、ワークライフバランスの確保が困難です。

働き方改革を徹底し、テレワークや裁量労働制度の柔軟な導入が急務です。

 

3)人事・給与制度の見直しと可視化

官僚キャリアの透明性を高め、成果に応じた昇進や評価制度を導入することで、意欲的な人材が報われる体制が必要です。

公費による海外留学など、特権的な制度も含め、見直しと公平性の確保が求められます。

 

結論として、初任給の引き上げは第一歩ですが、それだけで人材が戻るとは限りません。

給与、やりがい、働きやすさの三位一体で見直す構造改革こそが、持続的な官僚組織の再生に必要です。

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ971号より)

 

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