2025年7月17日付で、心理学者の舟木彩乃氏が、
『職場のグレーゾーンハラスメントどうする?「平均的な労働者の感じ方」とは』
と題した見出し記事を投稿していました。
個人的には、○○ハラスメントを意識するあまり、職場におけるコミュニケーション不全が発生していると思います。
「○○ハラスメント」を意識した業務管理は、価値観の変化とともにある程度必要ですが、コミュニケーション不全対策を取らなければ、結果として、お客様からの苦情や業務品質低下を招き、組織が衰退していくと感じています。
以下に、この記事を要約し、近年の「○○ハラスメント」について良い点と問題点について考察しました。
《記事の要約》
近年、職場でのハラスメントに対する意識が高まる一方で、その基準や受け取り方に大きな差が生じています。
ハラスメント研修や面談を通じて見えてくるのは、世代間や企業規模によって、「何をハラスメントと感じるか」の認識に違いがあることです。
たとえば、上司が「飲み会はふつう全員参加だよ」と発言しただけで、半強制と受け取られグレーゾーンのハラスメントと見なされる場合もあります。
また、先輩が椅子の上着を直した行為が、相手にとってセクハラと感じられることもあるのです。
セクハラに関しては、通常の業務において性的言動は不要であり、言動があった時点で平均的な労働者でもセクハラと感じるケースが多いとされます。
一方、パワハラは「優越的な関係」「業務上必要かつ相当範囲を超える言動」「精神的苦痛」など複数の要素が重なった場合に成立します。必要な指導であっても、相手が不快と感じればパワハラと認識される可能性があります。
こうした「グレーゾーンハラスメント」は、明確な基準がないことが問題です。
各組織では、匿名アンケートの実施などを通じて、社員同士の感じ方のすり合わせを行い、ハラスメントの範囲を明文化することが望まれます。
最終的には、平均的な労働者の感覚を基にしつつも、個々のとらえ方を丁寧に汲み取る姿勢が重要といえるでしょう。
(記事の要約、ここまで)
《筆者の考察》
<“○○ハラスメント”という価値観についての良い点と問題点>
近年「マタハラ」、「パワハラ」、「セクハラ」、「モラハラ」、「グレーゾーンハラスメント」など、○○ハラスメントという言葉が職場や日常の会話にあふれている。
こうした概念には、ハラスメント防止や被害者支援という面で大きな意義がある一方、行き過ぎや乱用による弊害も顕在化している。
まず良い点から整理すると、ハラスメントという共通の言葉が広まったことで、これまで見過ごされがちだった「いじめ」、「嫌がらせ」、「不適切な指導」が社会問題として可視化されたことが挙げられる。
法令やガイドラインが整備される中で、企業や組織は研修を義務化し、相談窓口を設置して被害者や目撃者が声を上げやすい環境を作った。
たとえばパワハラ被害を受けた場合、「自分だけが弱いわけではない」、「相談しても否定されない」と感じるだけでも、心の負担が軽減される。
グレーゾーンハラスメントの考え方も、「何が境界か分からない」と放置されていた微妙な言動をみんなで話し合う機会を生むことで、組織の暗黙ルールを可視化し、透明性を高める役割を果たしている。
また、ハラスメントの概念は多様性やインクルージョンの推進とも連動している。
セクシュアルマイノリティへの配慮や、中途採用者・転勤者へのサポートなど、組織風土を見直すきっかけとなり、働きやすさや定着率の向上につながるケースも少なくない。
しかし一方で問題点も多い。
第一に「乱用のリスク」である。些細な言動までハラスメント扱いされると、職場のコミュニケーションが萎縮し、「叱るべき指導」や「活発な議論」が失われる恐れがある。
たとえば、注意しただけで「パワハラだ」と訴えられると、管理職は部下を育成すること自体をためらうようになる。
結果として、組織の生産性が低下し、問題解決機会まで失われかねない。
第二に「被害認定の基準が不明確」な点だ。記事にあるように、セクハラは「業務上通常ない性的言動」であれば平均者もハラスメントと捉えるが、パワハラは三要件を満たすかどうかの判断が曖昧だ。
部下の受け止め方は十人十色であり、「ため息」「無言の圧力」にも感じ方の差が大きい。
グレーゾーンを明確にしようとしても、アンケート結果や個別事例をすり合わせる作業は時間とコストがかかり、経営者や人事部の負担を増大させている。
第三に「ハラスメントを盾にした権利乱用」の懸念も指摘されている。
何でもハラスメントに当てはめる「ハラスメントハラスメント」になれば、真に困っている被害者の声が埋もれ、組織に不要な混乱を招く。
たとえば、業務上必要な注意や期限の催促すら「モラハラ」だと申告されると、ルール維持が困難になる。
これらを踏まえ、組織や社会が取るべき対応策は以下の三点に整理できる。
1)基準の明確化と共有
企業ごとに「平均的労働者の感じ方」を測る基準を策定し、研修や就業規則に反映する。
匿名アンケートを通じた現状把握と、具体的事例をもとにしたQ&A集の作成が有効だ。
2)双方向のコミュニケーション強化
ハラスメント相談窓口に加え、定期的な部門ミーティングや1on1など、上司と部下が意見を交換する仕組みを設ける。
不快感を感じた際にはまず対話の場を持ち、誤解や価値観の相違を解消できる文化を醸成する。
3)適切な研修とフォローアップ
「何がハラスメントか」を一方的に教えるのではなく、ロールプレイやケーススタディを通じて、相手の立場に立った行動を体験的に学ぶ。
研修後は、実際の職場で一定期間フォローアップし、定着度を確認・改善する。
○○ハラスメントは、働き方改革や多様性推進といった時代の要請から生まれた前進的な概念だ。
しかし、「何でもハラスメント」で組織を委縮させるのでは本末転倒だろう。
ハラスメント防止の本来の目的は「誰もが安心して働ける環境をつくる」ことであり、そのためには基準の整備、対話の場づくり、研修の質向上を通じて、ハラスメントへの過剰反応と無理解のいずれも排除するバランス感覚が求められている。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ968号より)
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