2025年6月19日付の共同通信社が、

『貸金庫での現金保管不可に 全銀協、規定見直し』

と題した見出し記事を報じていました。

 

個人的には、銀行の貸金庫を利用したことはありませんが、この全国銀行協会の方針は、「現金の保管はマネーロンダリングに利用される」などともっともらしい説明をしていますが、おそらく本音は、「銀行員の不祥事を管理することはできないので、貸金庫サービスを、全国銀行協会として縮小します」ということです。

 

つまり、銀行の一機能であったはずの「貸金庫における現金保管業務からの撤退」であり、マネジメント不全を宣言したようなものではないかと思います。

 

以下に、この記事を引用し、この全国銀行協会の方針について、考察します。

 

《以下、記事の引用》

全国銀行協会(全銀協)は、2025年6月19日に、加盟銀行向けの指針を見直し、貸金庫での現金保管ができないようにすると発表した。

三菱UFJ銀行やみずほ銀行などの貸金庫で行員による窃盗事件が相次いだことを受け、再発防止を目指す。現金を入れていないことを顧客が約束する申告書の例も策定した。

 

現金保管は、マネーロンダリング(資金洗浄)に悪用される危険性も指摘されており、現金を「格納できないもの」として扱う。

指針は大手行や地方銀行などの加盟銀行が利用者向けの規定を作るために参考にしている。現金保管の禁止は全国の銀行に広がりそうだ。

 

全銀協会長として記者会見した三菱UFJ銀行の半沢淳一頭取は、三菱UFJ銀行で、2026年2月に現金の預け入れを禁止するよう規定を見直すと明らかにした。

20262月までの間に、利用者に現金の取り出しを求める。

半沢氏は「混乱を来すことがないよう、丁寧な対応をしていきたい」と述べた。

(記事の要約、ここまで)

 

《筆者の考察》

<本質的課題から逸脱した全国銀行協会の貸金庫における“現金保管不可”の方針>

全国銀行協会が2025年6月に発表した「貸金庫での現金保管の原則禁止」は、複数の銀行における行員の不正行為を受けた措置であり、銀行におけるマネジメントシステムのあり方を再考させる出来事である。

表面的には「現金保管を禁じる」という規定強化に見えるが、その本質はリスクマネジメント、内部統制、顧客信頼の維持という観点から、考察すべきである。

 

まず、マネジメントシステムにおいて最も重要なのは内部統制の確立と運用である。

貸金庫は原則として顧客の私有空間であり、銀行職員が内容にアクセスできないはずのサービスだが、今回の事件ではその管理プロセスの脆弱性が露呈した。

真に問われるべきは、貸金庫業務における職員のアクセス権限、監視体制、開錠プロセスの記録管理といった「プロセス管理」の不備である。

 

今回の措置は、現金という管理の難しい資産を排除することで、監視の負荷を軽減し、銀行側のリスクを最小化する「規制によるリスク回避策」であるが、これは予防ではなく回避であり、マネジメントシステムの改善とはいえない。

“真の改善”とは、人的不正を未然に防ぐ仕組みづくりと、その運用の継続的見直し(PDCAサイクルの実践)である。

 

また、ISO9001やISO27001といったマネジメントシステム規格の観点では、顧客要求事項への適合と利害関係者との信頼維持が求められる。

貸金庫は「安心・安全に重要物を保管できる」という付加価値を提供していたが、今回の措置はその一部機能を失わせることになり、サービス品質の後退とも取られかねない。

つまり、銀行は「自らが提供してきた価値の一部を放棄した」ことになる。

 

さらに、マネーロンダリング対策という側面が理由の一部にあるとしても、現金だけを排除することで抜本的な対策になるとは言い難い。

顧客の利便性を損なう一方で、銀行側が法的・管理的責任を免れやすくしており、公平性や説明責任(アカウンタビリティ)の不十分さを示唆している。

 

結論として、今回の「現金禁止措置」はマネジメントシステム的には本質的課題からの逸脱であり、むしろ必要なのは、

1)貸金庫開錠時の監視カメラや立会体制の強化

2)操作ログのトレーサビリティの確保

3)行員に対する職務分離と倫理教育の徹底

4)顧客との明確な合意形成と説明責任の遂行

である。

 

銀行にとって、マネジメントシステムの目的は「リスクをゼロにすること」ではなく、「リスクを識別し、統制可能な状態で管理し、顧客の信頼を維持すること」であるべきだ。

今回の措置がその目的に合致しているのかどうか、銀行自身が自問し、より根本的な組織的改善に取り組む必要がある。

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ964号より)


 

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