2025年6月25日付の毎日新聞が、

『トライグループが水俣市に謝罪 教材に“水俣病は遺伝”と誤表記』

と題した見出し記事を報じていました。

 

昭和時代に授業で公害病について教育を受けた者なら、「水俣病は、後天性の病で、遺伝する病気ではない」ということは、常識ですので、トライがオンライン教材で、「遺伝する」と表記していたことは、驚きです。

 

以下に、この記事を引用し、なぜ、このような誤表現が生じたのか、考察しました。

 

《以下、記事の引用》

「家庭教師のトライ」の運営会社トライグループ(東京)がオンライン教材で水俣病を「遺伝する」と誤って表記した問題で、同社の幹部らは、2025年6月25日、熊本県水俣市を訪れて高岡利治市長と面会し、謝罪した。

 

誤りがあったのは映像授業サービス「Try IT」の中学生向け社会の教材。妊娠中の母親が摂取したメチル水銀が胎盤を通じて胎児に取り込まれ、生まれてきた子どもが水俣病を発症する事例の説明で「遺伝」と表現していた。
教材は2015年にアプリで公開。2016年から動画投稿サイト「ユーチューブ」でも配信し、2025年5月に非公開とするまでに再生回数は計延べ7万回を超えた。

 

同社の幹部らは2025年6月25日午後、水俣病の患者・被害者団体でつくる「水俣病被害者・支援者連絡会」や、誤表記などの問題を受けて発足した「水俣・差別偏見を考える会」とも面会する予定。

(記事の引用、ここまで)

 

《筆者の考察》

今回の「家庭教師のトライ」による水俣病を「遺伝する」と表記した教材誤記問題は、単なる表現ミスでは済まされない、歴史的・社会的背景を踏まえた極めて深刻な問題である。

 

第一に、誤った内容が10年近くもの間、教育コンテンツとして公開され続け、累計7万回以上再生されたという事実は、教材監修体制の欠如と検証プロセスの不在を如実に示している。
水俣病はメチル水銀による後天的な中毒性疾患であり、「胎児性水俣病」は母体を経由して胎児が被ばくする「胎内被曝」によって生じるものだ。
これを「遺伝」と誤認させる記述は、科学的誤謬であるだけでなく、水俣病患者とその家族に対して長年続いてきた差別や偏見の助長に直結する。
これは単なる教育上の誤りではなく、人権の問題でもある。

 

なぜこのような誤りが起きたのか。その要因として考えられるのは、以下の通りである。

 

1)教育・科学知識の理解不足

制作担当者が水俣病に関する基本的知識を有していなかった可能性がある。
これは教育事業者として致命的な問題であり、チェック体制の機能不全を示している。

 

2)教材作成時の検証体制の不在

動画教材においても、医療・公害などの社会的テーマを扱う場合には、専門家や学識経験者の監修を必須とすべきである。
今回、それが行われていなかった可能性が高い。

 

3)社内体質の問題

過去の報道やネット上の情報からも指摘されているように、同社には労務管理上の問題や企業倫理に疑問を抱かれる事例が少なくない。
今回の件も、そうした「ずさんな企業体質」の一端とみなす向きも多い。

 

このような経緯を踏まえ、トライが今後取るべき再発防止策としては、次の三点が最低限必要である。

 

(1)教材制作における専門家監修の義務化

医療、公害、歴史、倫理など社会的・科学的な重大テーマを扱う教材には、必ず第三者の専門家による事前レビューと監修を実施すべきである。
これは自主基準にとどめず、外部評価委員会によるガバナンス体制の整備を含むべきである。

 

(2)既存教材の全点点検と公表

過去に制作・公開されたすべての教材に対し、誤情報や不適切な表現がないかを再点検し、その結果と対応策を報告書として社会に公表すべきである。
透明性を確保することが、信頼回復の第一歩である。

 

(3)被害者・関係団体への誠意ある謝罪と協議

熊本県水俣市および関係団体への形式的な謝罪だけで済ませるのではなく、水俣病に関する差別や偏見を払拭する教育への協力や、謝罪文の全国配信、関連教材の共同制作など、実効性ある償いと再発防止活動を行うべきである。

 

最後に、今回の件を通じて社会全体が改めて認識すべきは、「教育の責任の重さ」と「差別の根深さ」である。
トライは教育を提供する立場として、その社会的責任を痛感し、誤りを過ちで終わらせず、「正しい学び」の回復をもって信頼再構築を図るべきである。それが、誤った情報で傷つけられた人々への唯一の誠意ある対応となる。

 

 

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