2025年6月6日付のテレ朝NEWSが、
『「点呼なしは日常茶飯事」酩酊状態で配達も…日本郵便の運送事業許可取り消しへ』
と題した見出し記事を報じていました。
当初、この報道を知ったときは、「一般貨物自動車運送事業の許可取消しは、新規申請が5年間できないし、国交省は、大鉈を振るったな」と思いました。
ただ、報道内容をよくチェックすると「郵便局間を輸送する約2500台のトラックが使えなくなる」とのことなので、「日本郵便は、自社便は、そんなに多くないんだな」と理解しました。
つまり、日本郵便は、「“貨物利用運送事業”の登録または許可(※一般貨物自動車輸送事業の許可が取り消されれば、貨物利用運送事業の登録)で傭車を使って貨物輸送すれば、影響は限定的ではないか」と予想しました。
要は、自社便から子会社などを利用した傭車便利用で貨物輸送業務はできるので、実質的な問題は少ないと思います。
ただ、日本郵便の自社便ドライバーは、子会社に出向か、転籍という対応になるので、もしかしたら、日本郵便としては「社員として雇用していたドライバー職を整理でき、車両管理の手間が減る」と前向きに捉えているのかもしれません。
以下に、このテレ朝NEWSの報道を要約し、「日本郵便のずさんな運行管理の体質がなぜ生まれたのか」、「今後どのような再発防止が必要なのか」、「日本郵便が一般貨物自動車運送事業の許可を取り消されることによって生じる影響」について、考察しました。
《以下、記事の要約》
日本郵便は年間126億通の郵便物と10億個以上のゆうパックを取り扱うが、国土交通省は同社の一般貨物自動車運送事業の許可を取り消す方針を明らかにした。
全国3188局のうち75%にあたる2391局で、運転手への点呼が適切に行われていなかったことが理由である。
点呼は飲酒や体調の確認を義務付けられており、安全確保の基本であるにもかかわらず、社内調査で構造的な不備が明らかとなった。
実際に飲酒配達や点呼時の虚偽報告も判明し、4月には全国で20件の飲酒運転が報告されている。
処分対象の約2500台の貨物車は、郵便局間の中継輸送に使用されており、許可取り消しで5年間使用できなくなる。
軽車両やバイクなどは対象外だが、国交省は追加処分も視野に入れている。
日本郵便は委託や子会社を活用し輸送体制の再構築を図るが、物流インフラの一角を担う企業の管理体制のずさんさが社会に波紋を広げている。
(要約、ここまで)
《筆者の考察》
<なぜ、日本郵便は、ずさんな管理体制になったのか>
今回の問題は、単なる現場の怠慢ではなく、日本郵便という巨大インフラ企業の構造的な管理体質の崩壊を示している。
なぜ「点呼」という基本的な安全確認が蔑ろにされてきたのか。その背景には、郵政民営化以降の経営効率重視と慢性的な人手不足、そして現場への過重な業務負担がある。
もともと郵便局は官営時代からの「地域のインフラ」として全国に張り巡らされており、公共性の高い役割を担っていた。
しかし2007年の民営化以降、収益確保が最優先されるようになり、労働環境の改善や安全管理に対する投資が後回しにされたと考えられる。
実際、現場では「人員が足りず、点呼の時間すらない」という声や、「点呼は管理者がいるときしかやらない」など、モラルハザードが常態化していた。
<日本郵便の再発防止策>
再発防止にはまず、経営トップの責任ある姿勢とともに、点呼の制度化・可視化が不可欠である。
すでに導入された「防犯カメラによる録画点呼」は一定の効果が期待できるが、それが形骸化しないよう、第三者機関による監査や監督官庁の定期的なチェックが必要だ。
また、管理者や配達員の教育体制、通報制度の整備など、現場のガバナンスを再構築する仕組みが求められる。
<一般貨物自動車運送事業の許可の取消しの影響>
運送事業の許可取り消しによって生じる最大の影響は、ゆうパックの集荷業務や局間輸送の混乱である。
ただし、専門家や関係者によれば、日本郵便輸送などの子会社や傭車ネットワークを活用すれば、短期的な混乱はあるものの、致命的な物流麻痺には至らないとされている。
しかし、国民の信頼は大きく損なわれた。
郵便物や荷物を安心して預けられる存在であるはずの日本郵便が、基本的な法令すら守れていなかったことは、公益性の高い企業として深刻な問題である。
今回の処分は、単なる法令違反への制裁ではなく、「物流業界全体への警告」とも受け止められるべきである。
今後、郵便配達という公共サービスを民間企業に任せ続けるべきか、あるいは一定の再公営化や制度的支援が必要なのか、根本的な議論が求められる段階に来ている。
再発防止には、制度改革と現場改革を並行して進める覚悟が必要である。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ962号より)
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