2025年6月8日付の産経新聞が、
『出生前診断で「異常なし」、生まれた子はダウン症 30代夫婦が病院に起こした訴訟の行方』
と題した見出し記事を報じていました。
記事を読んで、一審の地裁判決は、病院側の主張を認めたようですが、個人的には、「ダウン症を検査するには、超音波検査だけでは限界があり、羊水検査などが必要」であることを、患者(オーストラリア人夫婦)にしっかりと説明しなかった病院側に、瑕疵があると(一般論ですが)私は考えます。
記事では、患者は、「胎児の異常の検査はできますか」と聞いており、医療知識が医療従事者と比較すれば格段に浅い患者側は、「ダウン症を含めた胎児の異常」について、病院側(担当医師)に確認したことは、確実です。
医師にとっては、超音波検査のみで、ダウン症の可能性が分かるのは11~13週のみで、しかも診断には経験が必要で、患者が質問した「17週目」は、「超音波検査によるダウン症の診断は事実上不可能」であることは、医療従事者にとっては「常識」でも、患者側にとっては「常識」ではありません。
したがって、担当医師は、検査を受けた17週目では、「超音波検査によるダウン症診断は無理であること」をきちんと患者に伝えるべきだったと思います。
つまり、診断方針について「言った言わない」という問題が生じないよう、文書化が必要だと思います。
以下に、この記事を要約し、医療機関が取るべき対策を考察しました。
《この記事の要約》
大阪市内の病院で出生前診断を受けた30代の外国人夫婦が、検査で「異常なし」とされたにもかかわらず、生まれた子どもがダウン症だったとして、病院を相手取り損害賠償訴訟を起こした。
問題となったのは、妊娠17週で受けた精密超音波検査が、ダウン症を調べるには適さない時期だったことと、病院側の説明の不十分さである。
夫婦は「遺伝学的検査を希望したが、適切な説明がなかった」と主張し、1100万円の損害賠償を請求。
これに対し病院側は、ダウン症への懸念や遺伝学的検査の希望は聞いていないと反論した。
大阪地裁は2025年5月、「説明不足や注意義務違反はなかった」として病院側の主張を全面的に認め、夫婦の訴えを退けた。
主なやりとりが口頭で行われたため、証拠に乏しいことが判決の判断に影響した。現在、夫婦は控訴中である。
出生前診断の精度や種類が向上する中、医療機関には検査前の丁寧な説明と患者支援体制の強化が求められている。
(以上、記事の要約)
《筆者の考察》
<病院側が今後取るべき対応策>
今回の訴訟が示す最大の教訓は、「検査内容とその限界に関する説明責任」と「患者との認識の共有不足」である。
特に、診断可能な時期を過ぎた超音波検査に関して、染色体異常の判定が困難であるという医学的な限界を、患者が理解できる言葉で明確に伝える必要がある。
今後、同様のトラブルを未然に防ぐために、病院側が取るべき対応は以下の通りである。
1)事前説明の文書化と多言語対応の強化
口頭のみの説明では「言った・言わない」の争いになりやすい。検査前には、説明内容を記した文書(インフォームドコンセント文書)を患者に提示し、署名を得ることで証拠化を図る。
また、外国人患者への対応には、英語などの多言語での説明書や、通訳・翻訳アプリの活用を制度化する必要がある。
2)出生前検査の選択肢と特徴の明示
超音波検査、NIPT、羊水検査といった検査方法の違いや精度、実施可能な時期、リスク、費用などについて、患者が比較検討できるような説明資料を整備すべきである。
「検査精度99%」といった誤解を招く表現は厳に慎み、常に医学的根拠に基づいた数値を提示する。
3)検査前カウンセリングの必須化
患者が出生前診断にどのような意図・期待を持っているかを明確にし、その期待と実際の検査の機能・限界に齟齬がないかを確認するための「事前カウンセリング」を全例義務化すべきである。
特にNIPTや羊水検査に進む場合は、訓練を受けた医師・助産師による支援体制が不可欠だ。
4)「選択」の伴走支援
出生前診断の結果は、生命倫理や家族の意思決定に直結する問題である。
結果に応じてどう対応するかの道筋を患者と一緒に考える「伴走型支援」体制を構築することが求められる。
検査実施後の心理的サポートや、陽性時の福祉相談窓口との連携も必要である。
以上の対応を通じて、医療の信頼性と患者の安心を高め、同様のトラブルを未然に防止することが医療機関の責務である。
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