2025年5月15日付のSTVニュース北海道が、
『意識不明の男性1人死亡 タンクの修理作業中「硫化水素が発生するところに落ちた」北海道枝幸町』
と題した見出し記事を報じていました。
以下に、この記事を引用し、想定される事故原因と組織が実施すべき再発防止策について、報道されている情報を基に一般論として考察しました。
《以下、記事の引用》
北海道枝幸町新港町の工場で、2025年5月15日、作業事故があり40代の男性2人が病院に搬送され、このうち1人の死亡が確認されました。
消防によりますと、工場内に有毒ガスが充満したということです。
枝幸町新港町の工場で午後2時ごろ「硫化水素が発生するところに男性2名が落ちた」と通報がありました。
警察と消防によりますと、40代の男性2人が意識不明の状態で病院に搬送され、このうち1人の死亡が確認されました。
警察や枝幸漁協などによりますと、現場はホタテの干し貝柱を製造する工場で、2人は汚水排水を貯蔵するタンクのポンプを交換する作業をしていました。
男性1人がはしごを使用してタンクに入ったところ倒れ、もう1人が助けようとタンク内に入り倒れたということです。
この状況を、別の作業員が目撃していました。
警察が、事故の原因を調べています。
(記事の引用、ここまで)
《筆者の考察》
◆北海道枝幸町工場事故:硫化水素による労働災害、その原因と再発防止の要点
2025年5月15日、北海道枝幸町のホタテ加工工場で発生した硫化水素中毒による死亡事故は、産業現場における安全管理の根幹を問う深刻な事例です。
汚水排水タンクでポンプ交換中に作業者2名が意識を失い、うち1名が死亡。
事故は危険物質の特性に対する知識不足、作業手順の不備、安全装備の欠如といった複合的な要因により引き起こされた可能性が高く、今後の再発防止には制度・教育・現場体制の多角的な強化が求められます。
◆想定される事故原因
1)硫化水素の危険性への過小評価
硫化水素は腐敗した有機物から自然発生し、空気より重いため、タンクやマンホール、ピットなどに滞留します。
濃度が高まると「一呼吸で即意識喪失」に至る強い毒性を持ち、しかも高濃度では臭気を感じ取れず、感知が困難です。こうした性質に対する理解と警戒が現場で不足していたと見られます。
2)事前の濃度測定・換気の不実施
酸欠・硫化水素危険作業の基本である、作業前のガス濃度測定と送風換気が行われていなかったか、あるいは適切でなかった可能性が濃厚です。
また、濃度測定器や換気装置が準備されていたかどうか、あるいは使用手順が周知されていたかの検証も必要です。
3)資格者不在による作業実施の疑い
この種の作業は「酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者」などの有資格者の監督下でなければ行えません。
作業従事者がその資格を持っていたのか、作業指示が誰によってどのように出されたのかが問われます。
4)二次災害の構造的リスク
一人目の作業者が倒れた後、もう一人が救出に飛び込んで同様に被災した点は典型的な二次災害であり、緊急時の対応訓練不足やマニュアル不備が背景にあったことを示唆しています。
◆組織が実施すべき再発防止策
1)タンク内作業の制度的運用徹底
タンク・ピット内作業は特別教育と資格を要する「特定危険作業」として法定されています。以下の措置が必須です。
・作業前の硫化水素・酸素濃度測定(有資格者による)
・強制換気と作業計画書の作成
・防毒マスクやガス検知器など保護具の常備と使用
・安全監視員の配置と作業中の常時連絡体制の確保
2)リスクアセスメントと作業手順の再構築
定型的作業であっても、リスク評価(RA)と作業手順書の見直しは必須です。
作業手順の中に「入室前の濃度測定」「入室後の滞在時間」「脱出ルート」などの安全マージンを明文化する必要があります。
3)緊急時対応訓練とルールの周知徹底
「救助に入ってはいけない」「倒れた人がいてもまず換気と通報」が守られなければ二次被害が防げません。
これを年次訓練・OJT・KY(危険予知)活動で徹底的に反復教育することが重要です。
4)下請け・協力会社を含めた全体安全管理
本事故のように、下請け社員や派遣スタッフが作業する場合も、元請け企業が全体安全管理責任を負います。
作業開始前に「誰が、どの工程を、どう監督するのか」を明確にし、組織を超えた安全管理体制の可視化が必要です。
5)教訓の全社共有とヒヤリ・ハットの記録
事故原因や教訓を事故発生工場だけでなく、同一グループ全拠点に共有し、同種の作業がある部署で再点検を義務づけることも有効です。
「あのとき、何が足りなかったか」を風化させない企業文化が問われます。
◆まとめ
硫化水素による事故は、「見えない、臭わない、即効性がある」三重の危険性を持ち、産業界では繰り返し悲劇を生んできました。
現場の経験や慣れに依存する作業文化を脱し、「見えない危険にどう備えるか」という視点で安全管理を設計し直す必要があります。
失われた命を二度と繰り返さないために、全ての組織が「安全の当たり前」を見直すべき時です。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ959号より)
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