2025年5月8日付の毎日新聞が、

『東京・立川の小学校侵入 いじめ対応を巡るトラブルが背景か』

と題した見出し記事を報じていました。

以下にこの記事を引用し、日本において、「義務教育におけるいじめ対応」の課題とあるべき姿について考察しました。

 

《以下、記事の引用》(※筆者が日付、組織名を一部編集)

東京都立川市立第三小学校に男性2人が侵入し、教職員5人が暴行された事件を巡り、同校に在籍する児童が受けたいじめ被害を保護者が学校側に訴えていたことが関係者への取材で判明した。

暴行容疑で逮捕された40代男性は児童の30代母親の知人で、警視庁は学校のいじめ対応を巡るトラブルが事件の背景にあるとみて調べる。

 

立川市教育委員会によると、母親は、2025年5月8日午前9時15分ごろから同校で、児童間のトラブルに関する相談のため、担任と面談していた。

 

関係者によると、相談はいじめ被害についてで、学校側との話し合いはまとまらないまま母親は帰宅。その結果を40代の容疑者に伝えたところ、20代男性とともに来校した。

事件当時、母親も校内にいたという。

 

午前11時ごろ、両容疑者は2階の2年生の教室に入った後、1階の職員室に移動しガラスを割った。

その際に制止しようとした30~70代の男性教職員5人を殴ったり蹴ったりしたという。児童にけがはなかった。

 

立川市教育委員会は、5月8日に開いた記者会見で、児童の担任から直接話を聞けていないと説明し、「トラブルの内容については分からない」と答えた。

(記事の引用、ここまで)

 

《筆者の考察》

◆義務教育におけるいじめ対応の課題とあるべき姿

立川市立第三小学校で発生した教職員への暴行事件は、いじめ被害を訴える保護者の不満が発端とされている。

この事案は、いじめ問題への学校側の対応力の限界、家庭との信頼関係の欠如、制度としてのサポート不足といった、義務教育におけるいじめ対応の本質的な課題を浮き彫りにした。

 

第一に問題となるのは、学校の初期対応力の不足である。

立川市教育委員会は会見で、担任から事情を聞いていないと述べ、事件発生時点でいじめの詳細さえ把握できていなかった。

学校現場では、担任や管理職が過重な業務を抱えており、トラブル発生時の迅速かつ的確な対応が困難な構造的背景がある。とりわけ、いじめの訴えに対する認識が「遊びの延長」「誤解」と矮小化されることも多く、被害児童や保護者の不信を招きやすい。

 

第二に、保護者との信頼関係の崩壊が深刻だ。

今回の事件では、保護者が学校との話し合いに不満を持ち、第三者に相談した結果、暴力事件に発展した。

これは決して正当化されるものではないが、学校への不信と孤立感が保護者を追い詰めたことは否めない。

特に、学校側が「事なかれ主義」や保身的な対応に終始することが、対話の断絶を生んでいる。

 

第三に、いじめ対応の外部支援体制の未整備も顕著である。

現在、スクールカウンセラーやソーシャルワーカーの配置は進みつつあるが、常勤ではなく、関与も限定的だ。

いじめ問題には心理、福祉、法的観点からの多面的な対応が必要であり、スクールロイヤーや子どもの権利擁護機関のような外部専門家の常設が急務である。立川市のように、こうした第三者機関が整備されていない地域では、問題の客観的把握や再発防止策の提言が機能していない。

 

また、制度面での課題も大きい。

いじめの定義は曖昧で、保護者・教員・児童それぞれの立場で認識が食い違うことが多い。

自衛といじめの境界は曖昧であり、学校現場での「判断ミス」が新たな被害者や誤解を生みやすい。

さらに、対応の遅れや偏りは被害児童に「告発したことを後悔させる」心理的二次被害を与え、長期の不登校や自己否定につながることもある。

 

このような背景を踏まえ、あるべき姿としては以下が挙げられる。

・いじめ早期発見のための第三者窓口の整備(校内外両方に)

・常勤スクールソーシャルワーカー、スクールロイヤーの配置拡充

・学校内の教職員の対応能力向上のための実践的研修

・家庭との協働に向けた信頼関係構築のプロトコル整備

・加害児童側への心理的支援(カウンセリング)制度の法整備

・教育委員会と学校の情報共有・説明責任の明文化

 

最後に、事件の背景にある「暴力」ではなく、「孤立」と「無力感」が拡大しない社会を築くためには、教育現場に「共感と対話」に基づくいじめ対応の文化を根づかせることが急務である。

制度・人材・意識の三位一体の改革なくして、義務教育の安全と信頼は維持できないであろう。

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ958号より)


 

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