2025年4月10日付の茨城新聞が、
『つくば、河川のり面崩落 工事影響 パイプライン外れ漏水 茨城』
と題した見出し記事を報じていました。
この工事は、茨城県つくば市発注の河川改修工事です。
官庁発注工事ですか、施工計画書を作成していたと考えられますが、緊急事態として「パイプラインが外れ漏水する」ということを想定していたのか、個人的には関心があります。
以下に、この記事を引用し、つくば市と施工業者の再発防止策について考察しました。
《記事の引用》(※日付表記などを一部、筆者が編集)
茨城県つくば市は、2025年4月9日、つくば市発注の河川改修工事の影響で、つくば市北条の農業用パイプラインの一部が外れて漏水し、のり面が幅約10メートルにわたり崩落したと発表した。けが人はいないという。
パイプラインを管理する霞ケ浦用水土地改良区(同県下妻市)は、2025年4月21日に周辺の管路の通水作業を予定しており、つくば市は復旧工事を急いでいる。
崩落は、2025年4月7日午後1時ごろ、つくば市北条の八幡川で発生。つくば市道路整備課によると、工事業者が川幅を広げる工事を行っていた際、川に沿って埋設されていたパイプラインの一部が離脱し、あふれた水でのり面が崩れた。工事でのり面を削ったことで土圧が弱まり、パイプ同士の接続部が外れたとみられる。パイプの埋設位置は把握していたという。
つくば市は農業用水を利用する筑波土地改良区(つくば市北条)も含めて対応を協議し、4月9日から復旧工事を開始した。筑波土地改良区によると、事故が起きたパイプラインは補助用水の位置付け。
現場に隣接する大池公園野球場は、川側の一部の利用が制限されている。つくば市の担当者は「田植え前の通水に間に合うように、復旧工事を完了させたい」と話している。
(記事の引用、ここまで)
《筆者の考察》
<つくば市と施工業者の再発防止策>
今回の茨城県つくば市で発生した農業用パイプラインの離脱・漏水およびのり面崩落事故は、河川改修工事におけるリスク評価と緊急時対応の不備が顕在化した事例です。
ISO14001(環境マネジメントシステム)に基づく再発防止策を中心に、施工業者および発注者(つくば市)が講ずべき対策を以下に考察します。
【事故の本質とリスク要因】
本件では、パイプラインの埋設位置を把握していたにもかかわらず、のり面の削減によって土圧が弱まり、パイプの接続部が外れて漏水を引き起こしました。
これは、「既知の埋設物に対する構造的影響の見積りが不十分だった」ことを示しています。
また、漏水によってのり面が崩落したことは、緊急事態の発生リスクが過小評価されていたことを示し、ISO14001の「緊急事態への備えと対応」の不備が疑われます。
【再発防止策】
1)緊急事態の想定と対応手順の整備(ISO14001:2015 - 8.2)
・リスクアセスメントの強化:
施工前に「埋設インフラとの干渉」に関する包括的なリスク評価を実施し、掘削・切土作業による圧力変化・荷重変動の影響を解析(例えばFEM解析など)するべきでした。
・緊急時対応マニュアルの整備:
漏水・崩落といった事態が起こった場合の緊急遮断措置、周辺通水の停止、近隣施設(例:野球場)の利用制限に関する手順を事前に準備しておく必要があります。
・訓練とレビュー:
年1回以上の緊急事態対応訓練の実施と、訓練結果のレビュー(評価と改善)を行い、文書化・記録化します(ISO14001の要求事項に準拠)。
2)構造安全性と埋設インフラへの影響評価の徹底
・施工前の詳細な地盤・構造解析:
パイプラインの構造図・施工記録を元に、圧力・支持力・接続強度を数値化し、工事による地盤変化への耐性を定量的に評価する必要があります。
・工法の見直し:
埋設物に隣接する区間では、仮受け構造(支保工や巻立て土留めなど)を先行設置し、掘削の影響を最小限に抑えるべきでした。施工計画に第三者機関による技術レビューを入れることも有効です。
3)関係者間の連携と情報共有の強化
・改良区・市・施工業者の三者協議体制:
パイプライン管理者(霞ヶ浦用水土地改良区)と、補助用水利用者(筑波土地改良区)双方と、施工前から段階的な技術的協議を重ねておくべきでした。
通水スケジュールなどの業務計画と連動した工程管理が必要です。
・コミュニケーションルールの明文化:
工事中の異常発生時の通報・報告ルート、判断フロー、優先事項(田植え前の復旧など)を明文化し、全関係者に周知徹底することで迅速な意思決定が可能となります。
【まとめ】
本事故は、「想定されていたリスク」が「施工中に現実化」し、かつ「緊急対応体制の未整備」により被害が拡大した典型例です。
今後、つくば市と施工業者は、ISO14001のフレームワークに基づき、「緊急事態の事前想定・訓練・改善」のPDCAサイクルを確立し、文書化された管理体系の中で施工計画を立案・運用する必要があります。
また、農業インフラと都市インフラの重層的な関係が強い地域では、行政と地元団体の「協働による安全マネジメント」が鍵となります。
単なる「復旧」ではなく、「体系的な再発防止策の確立」が求められています。
【好評発売中!】
『できるビジネスマンのマネジメント本』(玄武書房)
https://www.amazon.co.jp/dp/4909566066/
【よかったらメルマガ読者登録お願いします♪】↓
(パソコンでアクセスしている方)
http://www.mag2.com/m/0000218071.html
(携帯でアクセスしている方)
http://mobile.mag2.com/mm/0000218071.html
Twitter:https://twitter.com/ariga9001