2025年4月1日付の共同通信社が、
『経営統合の日テレ系4社、発足式 「放送の歴史に新ページ」』
と題した見出し記事を報じていました。
以下にこの記事を引用し、今後の地方テレビ局の経営のあり方について、考察しました。

《記事の引用》(※筆者が一部編集)
日本テレビ系の4社が経営統合した持ち株会社「読売中京FSホールディングス(FYCS)」が、2025年4月1日設立され、東京都港区の日本テレビタワー内の事務所で発足式が行われた。
石沢顕社長は「民間放送の歴史に新しいページを書き加える気持ちで、道を切り開いていきたい」とあいさつした。

経営統合した4社は、札幌テレビ放送(札幌市)、中京テレビ放送(名古屋市)、読売テレビ放送(大阪市)、福岡放送(福岡市)で、2024年11月に統合を発表していた。

石沢社長は日本テレビホールディングス(HD)の副会長も務める。
会長には中京テレビの丸山公夫会長が就いた。
(記事の引用、ここまで)

《筆者の考察》
◆経営統合の背景
まず、この統合の背景にあるのは、テレビ局を取り巻く経営環境の急激な悪化である。
少子高齢化・人口減少が進む中、地方テレビ局の視聴者数は縮小し、広告収入も減少傾向にある。また、若年層のテレビ離れが進み、YouTubeやNetflix、TVerなどインターネット動画サービスへのシフトが加速している。SNSの台頭も相まって、リアルタイムでテレビを視聴する習慣が崩壊しつつある。

さらに、地上波放送の設備維持や地域コンテンツの制作には依然として高い固定費がかかるため、地方局単体での運営は年々難しくなっている。
そこにCOVID-19の影響やウクライナ情勢による広告主の出稿抑制なども重なり、持続可能な経営モデルの構築が急務となった。

◆統合による効果と狙い
FYCS設立によって期待される効果は多岐にわたる。

1)スケールメリットによる効率化
共同でコンテンツ制作、番組編成、設備投資を行うことで、制作費や人件費を抑えることが可能になる。
また、営業やマーケティングも一元化され、スポンサー企業に対する提案力も向上する。

2)デジタル事業への本格参入
統合によって得られた資源を活用し、ネット配信、SNS戦略、TVerでのプレゼンス強化、独自アプリ開発など、新しい視聴形態への対応力を高める。
若年層の取り込みには不可欠な投資分野である。

3)地域連携による新たな収益源
各地域のイベント、スポーツ中継、行政・地場企業との連携を深め、リアルな地域コミュニティとの接点を活かしたビジネス展開が可能になる。(地域主導の番組・イベントも増加する可能性)。

◆今後の方向性と課題
今後、FYCSは日本テレビグループの中核的役割を担うと同時に、他系列・他地域にも波及する可能性がある。意見1にもあるように、四国や東北など、地理的に近接した複数のローカル局の広域統合は現実味を帯びてくるだろう。
また、系列をまたいだ水平連携の動きも出てくるかもしれない。

ただし、懸念点もある。統合により地域局の“個性”や“地域密着型コンテンツ”が薄れる可能性があることだ。
視聴者にとっての魅力は、東京制作の全国番組ではなく、地元ならではのニュースや情報である。効率化と地域性の両立が求められる。

さらに、コンテンツの質・信頼性を維持しながら、YouTubeやTikTokといった即時性・話題性が重視される世界でどのように存在感を発揮するか。
テレビ局としての“報道機関”としての矜持も問われている。

◆結論
FYCSの誕生は、地方テレビ局が生き残るための転換点であり、同時にテレビ業界の再編・統合時代の幕開けでもある。
今後は、収益性の改善と地域への貢献、そしてデジタル時代への適応を両立できるかが問われる。
ローカル局の未来は、単に東京の下請けではなく、“地域を元気にするメディア”としての価値を再構築できるかにかかっているだろう。

 

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