2025年3月30日付の朝日新聞が、
『「令和の百姓一揆」 農家が所得補償求め、都心をトラクターでデモ』
と題した見出し記事を報じていました。
以下にこの記事を引用し、考察しました。
《記事に引用》
歴史的な米価格の高騰でも好転しない生産現場の現状を訴えようと、東京都心で、2025年3月30日、米農家や酪農家らによるデモ行進「令和の百姓一揆」があった。約3200人(主催者発表)が参加し、表参道や原宿をトラクター約30台と進み、欧米並みの農家への所得補償の実現などを呼びかけた。
午後2時半頃、ほら貝の音の後にまずトラクターなどが東京都港区の青山公園を出発。その後、参加者らが行進を始め、「農家を守ろう」「農家に補償を」などと声を上げ、渋谷区の代々木公園まで歩いた。
山形県の農家で、実行委員会代表の菅野芳秀さん(75)が「いま農村では『農終い(のうじまい)』という言葉が交わされている。農家を守りながら消費者と連携し、食と農と命を大事にする日本に変えていかなければ」と呼びかけた。
(記事の引用、ここまで)
《筆者の考察》
<令和の百姓一揆と日本農業の未来:危機の中にある再生の可能性>
2025年3月30日、東京・表参道で「令和の百姓一揆」と題されたデモが行われ、全国の米農家や酪農家ら約3200人がトラクターと共に行進し、農業の危機的な現状と政策転換の必要性を訴えました。
歴史的な米価の高騰が報じられる一方で、生産現場の実態は全く報われていない。
こうした現実が、ついに声を上げる形となって現れたのです。
このデモの大きな意味は、「農業はもはや農家だけの問題ではない」という点にあります。
日本の農業は現在、エネルギー高、資材高、担い手の高齢化など多重の危機に直面しており、このまま放置すれば10年後には国内の食料自給そのものが立ち行かなくなる可能性があります。
つまり、農業の存続は日本の食卓と直結しており、消費者全体の問題でもあるのです。
今回のデモは、欧州各地で農業補助金削減や環境規制に反対する大規模な農民運動と軌を一にしており、「欧米並みの所得補償」を強く求める声が中心にあります。
現状、日本の農家の多くは、自然災害や資材高騰、動物被害といった“外的要因”と常に戦わされており、そのリスクを国がほとんど補償してこなかったという構造的問題があります。
とりわけ問題なのは、価格高騰が流通段階で起こっており、生産者が恩恵を受けていないという点です。
流通業者や小売に利益が偏る中、農家には採算が合わない価格での買取が押し付けられ、米農家では30kgの袋で3000円という“赤字前提”の取引も行われているとの声もあります。
こうした状況では、次世代が農業を継ぐはずもなく、「農終い(のうじまい)」という言葉が現実味を帯びてくるのは必然です。
では、日本の農業はどこへ向かうのか。今後は次のような構造的転換が求められます。
1)所得補償制度の強化
欧州連合のように、農業が持つ多面的機能(環境保全や地域社会の維持)に対して直接支払いを行う制度が必要です。
農業は単なる産業ではなく、安全保障インフラであるという認識が欠かせません。
2)農業のデジタル化と省力化
高齢化が進む中、スマート農業やロボット導入による効率化が必要ですが、初期投資が重く中小農家には手が届きません。
ハイテク農機の貸与や導入支援など、公的な介入が不可欠です。
3)流通構造の見直しと「中抜き」の是正
農家が正当な価格で取引できるよう、JAを含めた流通の透明化と公正な価格形成メカニズムの整備が必要です。
4)企業参入と担い手支援の促進
農業に参入しやすい環境を整備し、大手企業や地域住民の協働を進めることで、新しい担い手を創出する必要があります。
都市部との「二拠点農業」なども注目されるでしょう。
5)消費者との連携強化
地産地消や契約栽培を通じて、消費者と農家が直接つながる仕組みを広げ、「誰がどんな思いで作っているのか」が見える関係を築くことが、信頼回復にもつながります。
今回のデモは、単なる不満の表明ではなく、「農を守ることは、命と未来を守ることだ」というメッセージを都市に届ける試みでした。
これをきっかけに、政府と消費者が農業の現実に正面から向き合い、持続可能な農業社会の再構築に踏み出せるかが問われています。
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