本日(2025年3月20日)は、日本を震撼させた地下鉄サリン事件から丸30年です。
当時、筆者は、東京の神谷町駅近くにあるオフィスビルに勤務するサラリーマンで、朝の通勤は、健康を兼ねて、JR新橋駅から徒歩で神谷町まで歩き、始業1時間ほど前から、電話が鳴らず静かなオフィスで仕事をするのが日課でした。
そのうち、救急車の走る音が聞こえるようになり、何事かと思いオフィスにあったテレビを点けて地下鉄で起きた惨状を知りました。
以下に、この地下鉄サリン事件を契機に、駅から無くなったもの、増えたものとその功罪について、まとめてみました。
(※参考:2025年3月19日付 乗りものニュースの記事)
《地下鉄サリン事件後に「消えたもの」「増えたもの」とその功罪》
1. 消えたもの
(1) 駅構内のゴミ箱
地下鉄サリン事件後、ゴミ箱は危険物を仕掛けられる可能性があるとして撤去された。
特に駅構内では不審物の発見が困難になることを防ぐため、ゴミ箱の数が大幅に削減され、一時的に完全撤去された。
その後、透明なパネルで中身が見えるタイプのゴミ箱が普及し、一部の駅で再設置されたが、2004年のマドリード列車爆破事件、2005年のロンドン同時爆破テロを受け、再び撤去が進んだ。
<功罪>
・テロ対策として、危険物の持ち込みや放置を困難にする効果があった。
・乗客のゴミの持ち帰り負担が増加し、結果として駅構内や電車内のポイ捨て問題が発生した。また、コロナ禍で衛生面の懸念が加わり、ゴミ箱の再設置が遅れた。
(2) コインロッカーの利用制限
事件後、コインロッカーも一時的に封鎖され、利用が制限された。
駅構内に設置されたロッカーは、荷物を置いて爆発物や有害物質を仕掛ける可能性があるとされたためである。
その後、警備体制の強化に伴い再開されたが、現在もテロ警戒レベルが上がると一時利用中止となることがある。
<功罪>
・不審物の持ち込みや長時間放置の防止に寄与し、テロリストによる駅構内での爆発物設置リスクを軽減した。
・一時的な不便が生じ、特に旅行者やビジネスマンにとって荷物管理が困難になった。
(3) 一般乗客の無防備な意識
1995年以前の日本では、テロ事件は遠い国の出来事であり、「駅構内は安全で、誰もが安心して利用できる場所」という意識が一般的だった。
しかし、事件以降、乗客も不審物や不審者に注意を払うようになり、「安全は保証されるものではなく、自ら確保するもの」という意識が強まった。
<功罪>
・乗客自身がテロや犯罪を防ぐ意識を持ち、不審物発見時の通報が増えた。
・「テロが日本でも起こりうる」という恐怖心が広まり、駅や公共交通機関の利用に対する不安が増大した。
2. 増えたもの
(1) 防犯カメラの大幅な増設
事件直後の1995年3月末から防犯カメラの設置工事が開始され、わずか8ヶ月で80駅に529台が設置された。
その後、東京メトロ全駅に拡大し、2004年までに約2400台に増設。
さらに、2008年以降はリアルタイム監視が可能なセキュリティカメラが導入され、2018年以降は車両内にも設置されるようになった。
<功罪>
・犯罪や不審者の監視が可能となり、駅構内でのテロや犯罪の抑止力が向上した。
・プライバシーの問題が懸念され、特に監視社会化への警戒感が高まった。
また、運用方法によっては過剰監視のリスクも指摘されている。
(2) 警備体制の強化
警察官や警備員が駅構内・車両基地・車内の巡回を強化し、サミットや国際会議の際には東京メトロの本社社員も警備に加わるようになった。
また、駅構内放送でも**「不審物を見かけたら駅係員までお知らせください」**といった注意喚起が常態化した。
<功罪>
・事件の再発防止に寄与し、異常事態が発生した際の対応速度が向上した。
・駅構内の過度な警備がストレスとなる利用者も増えた。
(3) 乗客の意識変化
事件後、乗客自身も「安全確保」に積極的に関与するようになった。
不審な荷物に気を配る、駅員に通報するといった行動が一般化し、社会全体の防犯意識が向上した。
<功罪>
・事件の抑止力が高まり、一般市民も防犯に貢献する姿勢が根付いた。
・乗客の警戒心が高まりすぎると、過剰な疑心暗鬼や偏見につながるリスクがある。
3. まとめ
地下鉄サリン事件は、日本の交通インフラの安全対策を抜本的に変える契機となった。
事件後に「消えたもの」として、ゴミ箱や無防備な意識が挙げられる一方で、「増えたもの」として、防犯カメラ、警備体制、乗客の警戒心がある。
これらの変化にはメリットとデメリットがあり、防犯意識の向上やテロ抑止と引き換えに、利便性やプライバシーが犠牲になる側面もある。
しかし、日本の鉄道は世界でもトップレベルの安全性を誇るようになったのも事実だ。
今後も、テロ対策を進めながらも過剰監視や利便性低下を避けるバランスが求められる。
安全を守るための「消えたもの」と「増えたもの」の功罪を冷静に評価しながら、より良い公共交通のあり方を模索し続けることが重要だろう。
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