2025年3月16日付の読売新聞オンラインが、
『VWやBMWにベンツも業績総崩れ…EV不振と中国での競争激化に加え、今後はトランプ関税も』
と題した見出し記事を報じていました。
欧州各国や欧州の自動車メーカーは、「環境対策」という名目で、ガソリン車から電気自動車に政策的に、一気に舵を切りましたが、個人的には、「やっぱりな・・・」という思いです。
自動車走行中の環境性能は、確かに電気自動車はすぐれていますが、“電気は何から作っているか”というライフサイクルを考えれば、電気自動車が「環境対策」には必ずしもなりません。
また、世界的に日本メーカーの販売が伸び、技術的に電気自動車対応が遅れている「日本車メーカー排除」が急激な電気自動車への転換の背景にはあると言われていますが、電気自動車にシフトすれば、価格的に中国メーカーが優勢です。
以下にこの記事を要約し、今後について予測してみました。
《記事の要約》
欧州自動車メーカーの業績が大きく落ち込んでいる。電気自動車(EV)の販売低迷や、中国市場での競争激化が主な原因だ。
さらに、米トランプ政権の関税政策による影響が懸念され、経営環境は一層厳しくなると予測される。
2024年12月期の決算では、欧州大手5社がいずれも大幅な減益を記録。
フォルクスワーゲン(VW)は、中国市場での販売台数が1割減、BMWも13%減少した。ステランティスは北米市場での販売台数が25%減少し、メルセデス・ベンツのEV販売も2割以上落ち込んだ。ルノーはハイブリッド車(HV)が好調だったものの、日産自動車株の売却損が利益を圧迫した。
こうした状況を受け、各社はコスト削減やエンジン車(HVを含む)の開発強化にシフトしている。
VWは3万5000人の人員削減に合意し、アウディのEV工場を閉鎖。メルセデス・ベンツも生産能力を縮小し、エンジン車の開発を強化する方針を示している。
また、トランプ政権の関税政策が欧州メーカーにとって大きなリスクとなる。カナダやメキシコから輸入される自動車には25%の関税が課される予定で、VWは約1.3兆円、ステランティスは約2.6兆円の売上減少が見込まれる。
これに対応するため、各社は米国内での生産を拡大する方針を決定。VW傘下のアウディはVWの米工場活用を検討し、ステランティスはイリノイ州の工場を再開。メルセデス・ベンツもアラバマ州での生産を強化する。
しかし、生産移管には時間がかかるため、短期間での対応は困難だ。
さらに、EU域内からの輸入車に対する関税引き上げの可能性もあり、欧州メーカーにとっては引き続き厳しい状況が続く見通しだ。
(記事に要約、ここまで)
《筆者の考察》
<欧州メーカーの経営戦略と4年後の自動車市場の予測>
1. 欧州メーカーの今後の経営戦略
1)EVシフトの見直しとエンジン車の開発強化
欧州メーカーはこれまでEV戦略を推し進めてきたが、販売低迷を受けて戦略を修正し始めている。
・VWやメルセデス・ベンツはエンジン車(HV含む)を強化し、EVとのバランスを調整する。
・EVの投資を一時的に抑制し、既存のガソリン車・HVの改良を進めることで、利益の確保を図る。
2)コスト削減と事業再編
・VWは大規模な人員削減を実施し、コスト構造を見直す。
・生産拠点の統廃合を進め、EV工場を閉鎖するなど経営のスリム化を図る。
3)米国市場への適応
・トランプ政権の関税政策に対応するため、米国内の生産拡大が不可欠となる。
・VW、ステランティス、メルセデス・ベンツは米国内での工場新設・拡張を進め、現地生産比率を高める。ただし、生産移管には時間がかかるため、短期的には関税の影響を受ける。
4)中国市場での競争激化への対策
・中国ではBYDなどの現地メーカーの躍進により、VWやBMWの販売が大幅に落ち込んだ。
・中国合弁企業との提携を強化し、現地のEV技術を取り入れる。
・低価格EVの開発や現地向け車種の充実を図る。
2. 4年後の世界の自動車市場の予測(2029年)
1)トランプ政権の関税政策が世界の貿易構造を変える
・米国の関税政策により、世界の貿易が分断され、各国が自国生産を強化する動きが加速する。
・米国に輸出する欧州車は高価格化し、競争力を失うため、米国市場では日本メーカー(トヨタ、ホンダなど)が有利になる可能性が高い。
2)EV市場は低成長、HVが再評価される
・バッテリーコストの高騰や充電インフラの遅れから、EVの普及は想定よりも鈍化。
・HVやプラグインハイブリッド(PHEV)が再評価され、欧州メーカーもHV技術に再投資する。
3)中国市場の変化
・中国メーカーがEV市場を主導し、欧州メーカーはシェアをさらに奪われる。
・中国国内での競争に敗れた欧州メーカーは、東南アジアやインド市場に活路を求める。
4)欧州メーカーは「プレミアム路線」に集中
・VWやメルセデス・ベンツは高級車・高性能車に特化し、ブランド価値を維持する戦略を取る。
・中価格帯の車種は日本や中国メーカーに押され、縮小傾向に。
<結論>
欧州メーカーは、EV一本化戦略を見直し、エンジン車(HV)の開発を強化しつつ、コスト削減と現地生産の拡大に取り組むことになる。
しかし、トランプ政権の関税政策は、短期的に欧州メーカーに大打撃を与え、EV市場の成長鈍化と相まって戦略の再考を迫る。
4年後の2029年には、EV市場の伸び悩み、中国市場での競争激化、米国市場の高関税化が進み、欧州メーカーは「プレミアム路線」と「地域別戦略の最適化」にシフトせざるを得なくなると予想される。
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