2025年3月6日付の読売新聞(電子版)が、
『また連結器トラブルのJR東日本「新幹線の信頼を大きく損なった」…電気系統の不具合で分離か』
と題した見出し記事を報じていました。
多くの方の記憶にあると思いますが、JR東日本の連結器トラブルは、2024年9月にも発生しています。
新幹線の連結部分が走行中に外れたトラブルは、2024年9月にも起っています。
このときの連結器トラブル原因は、連結部分を外すための非常用のスイッチの周りで、小さな金属の破片が見つかっていることから、“金属片が走行の振動などによって 連結器のスイッチの端子に触れてショートし、車両が切り離された”と推測されています。
なお、この金属片は、“新幹線の車両の製造時に発生した切りくず”と言われています。
各メディアの報道から、今回の連結器トラブルは、JR北海道が所有する車両のようですが、連結器の構造上のシステムがほぼ同じだとすれば、2024年9月に発生した連結器トラブルの再発防止が不十分だったと考えられます。
以下にこの読売新聞の記事を要約し、2024年9月の連結器トラブルの再発防止策が不十分になった理由と今後必要な対策について、考察しました。
《記事の要約》
2025年3月6日、東北新幹線「こまち」と「はやぶさ」の連結器が走行中に外れるトラブルが発生し、JR東日本の池田裕彦・新幹線統括本部長が謝罪した。
この事故は2024年9月にも発生しており、乗客の信頼を揺るがす事態となっている。
前回のトラブルでは、連結器を強制的に分離するスイッチの裏側に金属片があり、誤作動の原因となった可能性が指摘された。
そのため、JR東日本は連結運転を行う96編成を点検していた。
しかし、今回の事故では異なる原因が関与しているとされ、「こまち」側の電気系統の不具合が疑われている。
事故により、新幹線は緊急停車し、約3時間後に別々に大宮駅へ移動。乗客は後続列車に振り替えられたが、計277本の列車が運休・遅延し、約15万3,000人に影響を与えた。
鉄道工学の専門家は「立て続けのトラブルは異常事態であり、徹底した原因究明と対策が必要」と指摘している。
(記事の要約、ここまで)
《筆者の考察》
<連結器トラブルの再発要因と背景>
1. なぜ同様のトラブルが再発したのか?
JR東日本では2024年9月に連結器が外れるトラブルが発生し、その原因は金属片によるスイッチの誤作動と考えられていた。
そのため、同様のトラブルを防ぐために96編成の点検が行われたが、今回の事故では、異なる要因(電気系統の不具合)が関与していたと見られている。
この再発には以下の要因が考えられる。
1)点検・調査の精度の限界
2024年のトラブルを受けた点検では、スイッチ周辺の異物混入には対処したが、電気系統の異常については十分な検証がされなかった可能性がある。
また、ハードウェアだけでなく、制御プログラムや電気配線の劣化・誤作動の可能性も考慮すべきだったが、見落とされた。
2)設計・運用の問題
連結運転は1992年の400系以来長く実施されており、過去に大きな問題はなかった。
しかし、E5系・E6系以降で設計変更があった場合、その影響が十分に検討されていなかった可能性がある。
また、安全性を確保するためのシミュレーションや試験が不十分だった可能性がある。
3)安全管理よりも効率・利益を重視
JR東日本は不動産業や電子決済事業に経営資源をシフトし、鉄道本来の安全管理に十分な投資が行われていない可能性がある。
また、コスト削減の一環として、車両点検の頻度や詳細な検査が削られている可能性も否定できない。
2. 連結器トラブルの背景
今回の事故の背景には、鉄道の安全管理体制の変化や経営戦略の転換が影響している可能性がある。
(1) 技術継承の問題
JR東日本では、熟練技術者の退職が相次ぎ、若手への技術継承が十分に行われていないことが指摘されている。
ベテランの技術者が退職し、経験の浅い担当者が増えることで、問題の早期発見が難しくなっている。
(2) 経営資源のシフト
JR東日本は、鉄道以外の分野(不動産、商業施設、電子決済など)に力を入れており、鉄道の保守・点検に必要な人員や予算が削られている。
鉄道事業の利益率が低いため、不動産や電子決済などの収益性の高い分野に経営資源を集中させる傾向がある。
(3) 安全よりも業務効率を重視
駅窓口の削減やダイヤ改正による利便性低下が進むなか、鉄道の安全管理も効率化の名のもとにコスト削減が進んでいる可能性がある。
点検作業の簡略化が事故の発生率を高めているのではないか。
3. 今後の対応と課題
この問題を解決するためには、以下の対策が求められる。
1)点検・検査体制の強化
連結器の電気系統や制御システムの異常を徹底的に調査し、新たな点検基準を確立する必要がある。
単なる目視確認だけでなく、センサーを活用した監視システムの導入なども検討すべき。
2)経営資源の適正配分
不動産や電子決済事業と並行して、鉄道の安全確保のための投資を増やす必要がある。
コスト削減ばかりを優先せず、安全性を最重要視する姿勢に戻すべき。
3)異常時の対応策の強化
東京~大宮間がボトルネックとなっているため、大宮駅を代替発着駅とするシステムの構築が求められる。
BCP(事業継続計画)の観点からも、異常時に速やかに対応できる体制を整備する必要がある。
4)乗客への信頼回復策
今回のトラブルに関する詳細な調査結果を迅速に公表し、透明性を確保することが重要。
鉄道の安全性を維持するために、今後どのような対策を講じるのかを明確に示すべき。
4. 結論
2024年9月と2025年3月に発生した連結器トラブルは、単なる技術的な問題ではなく、JR東日本の経営戦略、技術継承の課題、安全管理の軽視といった構造的な問題が背景にあると考えられる。
特に、鉄道事業の利益率低下により、不動産・電子決済などの新規事業に経営資源が偏り、安全管理の優先度が低下している可能性が指摘されている。このままでは、さらなるトラブルの発生が懸念される。
JR東日本は「鉄道の安全確保」を最優先に据え、点検体制の見直し、異常時の対応策の強化、経営資源の適正配分を進める必要がある。信頼回復には、迅速な原因究明と、再発防止のための具体的な対策の実施が不可欠だ。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ949号より)
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