2025年2月26日付の時事通信社が、
『〔国際女性デー50年〕女性差別語、なぜ広辞苑に? 売れ残り・男勝り・内助の功… 担当者「誕生の背景考えて」』
と題した見出し記事を報じていました。
個人的には、女性差別用語だけでなく、差別用語は、差別に対する歴史を知る上で、広辞苑に残すべきものと思っています。
差別用語として、例えば、「めくら」、「かたわ」、「せむし」、「日雇い人夫」などのことばが使用されたドラマやアニメの再放送では、今では、必ず音声が加工されています。
幼稚園の頃に愛読した「ちびくろサンボ」が人種差別問題で、国内の出版社から事実上の絶版となったニュースを知ったときも「えー?!」という感じでした。
広辞苑に関しては、差別用語も残し、説明文の中で、“現代においては差別用語とされています”といった注釈を付ければいいと思います。
以下にこの記事を要約し、「差別用語」の今後について、考察しました。
《記事の要約》
広辞苑には「売れ残り」「男勝り」など、現在では差別的と解釈され得る言葉が多く収録されている。
岩波書店辞典編集部の奈良林愛さんは「辞書には日本語を記録し、正確に解説する使命がある」と説明する。
広辞苑は1955年の初版以来、日本語の辞書と百科事典の役割を果たしてきた。
2018年に発行された第七版にも、性別に関する言葉が多く含まれている。
例えば「売れ残り」(婚期を過ぎた未婚女性)や「オールドミス」(未婚のまま年を重ねた女性)には、「女性は早く結婚すべき」という価値観が反映されている。「男勝り」(女性の気性が男性以上に勝気なこと)や「女は化け物」(化粧や服装で女性は大きく変わる)といった表現も、性別に対する固定観念を示すものだ。
また、「内助の功」「夫唱婦随」のような表現には、家父長制の名残が見られる。
さらに「出戻り」は離婚後に実家へ戻った女性を指す言葉であり、男性には使われない。
奈良林さんは「差別的な言葉を辞書からなくしても、差別は解消されない。
むしろ、それらが生まれた社会の構造や背景を考えることが重要」と指摘する。広辞苑の編集部内でも、こうした言葉の掲載について議論があったが、「言葉の価値判断は読者が行うもの」という方針のもと、項目を削除することはないという。
辞書は単なる単語帳ではなく、言葉の歴史を記録するものだ。
過去の文学作品を正しく理解するためにも、従来の価値観を知ることは重要である。奈良林さんは「時代が変わる中で、言葉の意味や背景に意識を向けることが大切」と訴えている。
(記事の要約、ここまで)
《筆者の考察》
【差別用語の排除とその影響】
現代では、差別的とされる言葉の見直しが進んでいる。
企業の広告、マスメディア、辞書などでも、過去に一般的だった表現が修正・削除されるケースが増えている。
この傾向にはプラス面とマイナス面の両側面がある。
1. 差別用語を排除することのプラス面
1)社会の意識改革につながる
差別的な言葉を削除・修正することで、無意識のうちに広まる偏見を防ぐことができる。
例えば「オールドミス」や「売れ残り」といった表現が減ることで、結婚を女性の義務とする価値観の見直しにつながる。
2)公の場での適切な言葉遣いが促進される
企業の広告や公式発表では、特定の属性に対する配慮が求められるようになった。
これにより、過去には一般的だった差別的な表現が使われにくくなっている。
3)新たな価値観を生み出すきっかけになる
言葉の見直しは、社会の価値観の変化を反映している。
例えば「看護婦」→「看護師」、「スチュワーデス」→「客室乗務員」など、性別による職業の固定観念を排除する動きが進んでいる。
2. 差別用語を排除することのマイナス面
1)歴史や文学の理解が困難になる
例えば、過去の文学作品や歴史資料には、現在では差別的とされる言葉が多く使われている。 もし辞書からそれらの言葉が削除されると、過去の文章を正しく理解することが難しくなる。 言葉が持つ歴史的背景を知ることも、重要な学びの一つである。
2)言葉狩りが過剰になる可能性
「差別的だ」とされる表現が次々と削除されると、表現の自由が損なわれる恐れがある。
例えば「男勝り」など、本来は必ずしも悪意を持たない言葉まで排除されると、「何を言っても問題になる」という過剰な自主規制が生じる可能性がある。
3)価値観の多様性が失われる
言葉にはその時代の価値観が反映されているため、過去の表現を一律に排除することは、異なる価値観を知る機会を奪うことにつながる。
例えば、「内助の功」などは、現在では時代遅れとされるが、過去の社会構造を理解する上では有益な言葉でもある。
3. 今後の展望
差別用語の見直しは、単に言葉を削除すれば解決する問題ではない。
むしろ、言葉が生まれた背景や使われ方を学ぶことが大切だ。
1)辞書の役割の再確認
言葉の歴史を記録する役割を重視し、削除ではなく適切な注釈をつける方法が望ましい。
例えば「売れ残り」の説明に、「過去にはこのように使われたが、現在では差別的とされることがある」といった注釈を加える。
2)言葉の使い方に対する意識を高める
何が差別的なのかを考える機会を増やし、個人の意識を向上させることが重要。
「言葉を禁止する」のではなく、「どう使うかを考える」ことが、健全な社会につながる。
3)バランスの取れた表現規制
公共の場では差別的な表現を避ける一方、学術的な文脈では過去の言葉を学ぶことが許容されるべき。
「言葉を変える」ことが目的にならないよう、慎重な対応が求められる。
4. まとめ
差別的な言葉の見直しは、社会の意識改革や公平性の確保に貢献する一方、過度な規制は表現の自由や歴史的理解の妨げになる可能性がある。
言葉の削除ではなく、その背景を理解し、適切に使うことが、これからの時代にはより重要になるだろう。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ948号より)
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