2025年2月13日付のNBC長崎放送が、
『空港バスのトランクに20代女性を閉じ込め1.5キロ走行 JR長崎駅前』
と題した見出し記事を報じていました。
以下に、この記事を要約し、この問題の再発防止策に関して考察しました。
《記事の要約》
2025年2月8日、長崎空港発の高速バスで、20代の女性客がトランクルーム内に閉じ込められるというトラブルが発生した。
バスはJR長崎駅前から約1.5キロ走行し、女性は約13分間にわたってトランク内に取り残されたが、幸いケガはなかった。
◆事故の経緯
長崎バスによると、問題が起きたのは2月8日午後10時36分、長崎駅前交通広場での乗客降車時だった。
バスは午後9時46分に長崎空港を出発し、乗客53人を乗せて運行していた。
長崎駅前でバスが停車し、乗客が次々に降車。
その際、20代の女性客が自身の荷物を取り出そうと、トランクの奥に入り込んだ。
最後に降りた男性客は女性に気づかずトランクの扉を閉めた。
運転手は、男性客の「トランクを閉めた」合図のみを確認し、トランク内を直接確認せずに発車。
女性は約13分間、密閉状態のトランク内に閉じ込められたまま、バスは1.5キロ走行。
終点に到着後、ようやく女性の存在が発覚した。
◆長崎バスの対応
この事態を受け、長崎バスは、「発車前にトランクルーム内の安全確認を行う手順が徹底されていなかった」と認め、今後は全運転手に対しマニュアルの厳守を徹底すると発表した。
(記事の要約、ここまで)
《筆者の考察》
1. 事故の原因
1)トランクの開閉が「乗客任せ」になっている
高速バスでは乗務員がトランクを開閉する場合もあれば、なし崩し的に乗客に任されているケースも多い。
特に、短中距離路線では運転手が運賃の確認などに追われており、トランクの管理まで手が回らないことがある。
今回も乗客がトランクを閉めたことで運転手が確認を省略し、閉じ込め事故につながった。
2)トランクルームの安全確認手順が徹底されていない
バス会社のマニュアルでは、本来発車前に運転手がトランクルーム内を確認する手順があるはずだ。
しかし、実際には時間的制約や業務負担のために省略されるケースが多い。
他社のバスでも2023年に同様の事故が発生しており、トランク閉扉時のチェックが現場レベルで徹底されていないことが再発の原因となっている。
3)乗客がトランクルームに入り込む危険性
バスのトランクは奥行きが2m以上あるため、乗客が奥に入り込んでしまうと、周囲から視認しにくい。
乗客がトランクルーム内で荷物を探している間に、他の乗客が扉を閉めてしまい、そのまま発車するという事故は、構造的に発生しやすい状況である。
4)トランクルームに「置き去り防止装置」がない
近年、バスの客席では、降車時に置き去り防止装置(運転手の確認ボタンを押さないと警報が鳴る仕組み)が普及しつつある。
しかし、トランクルームには同様の安全装置が設置されていない。
トランクには監視カメラやセンサー、緊急脱出装置がほとんどないため、閉じ込められた際に外部と連絡を取ることができない。
2. 再発防止策
1)運転手の「目視確認」を義務化
バス会社は、「乗客がトランクを閉めた」だけでは発車できないルールを徹底し、運転手自身がトランクルームを目視確認する義務を課すべきである。
「トランクを開け、目視で乗客の取り残しがないことを確認するまで発車してはならない」という規則を強化する。
2)トランクルームへの「置き去り防止装置」の導入
トランクルームにもセンサーや監視カメラを導入し、
・内部に人がいる場合、警報が鳴る仕組み
・運転席のモニターでトランク内を確認できるカメラの設置
を進めるべきである。
3)乗客の注意喚起と利用ルールの明確化
乗客がトランクルームに入ること自体が危険なため、「トランクの奥に入らないように」というアナウンスや掲示の強化が必要である。
バスの利用案内に「トランクルーム内には絶対に立ち入らないでください」という注意書きを追加し、乗客への啓発を行う。
4)トランクの開閉は運転手が行う
トランクの開閉を乗客に任せるのではなく、運転手が責任を持って行う体制にすることが望ましい。
現状ではコストや時間の制約があるため、完全な実施は難しいが、少なくともバス会社側でルール化し、可能な限り運転手が管理するべきである。
3. 今後、同様の事故が発生する可能性
1)バスの人手不足と業務負担の増加
近年、バス業界の人手不足が深刻化しており、運転手は運賃の確認、運行スケジュールの厳守、乗客対応など多くの業務を抱えている。
そのため、確認作業が省略されるリスクが依然として高く、同様の事故が発生する可能性がある。
2)他のバス会社でも同様のリスク
2023年に、他社で同様の閉じ込め事故が発生しているように、これは長崎バスだけの問題ではなく、全国の高速バスに共通するリスクである。
特に観光シーズンや大型荷物の持ち込みが多い時期には、閉じ込め事故のリスクが高まる。
3)緊急時の対応が不十分
現状のトランクルームには緊急脱出装置やSOSボタンが備わっていないため、万が一閉じ込められた場合、乗客が自力で脱出する手段がない。
長時間の閉じ込めによる窒息や体調悪化といったリスクも懸念される。
4. まとめ
今回の事故は、トランクルームの管理が乗客任せになっていたことと、運転手の確認不足が重なって発生した。
しかし、この問題は長崎バスに限らず、全国のバス会社に共通する構造的な課題であり、今後の再発防止策が急務となる。
今後、同様の事故を防ぐためには、
・運転手による「目視確認」の徹底
・トランクルームへの「置き去り防止装置」の導入
・乗客の利用ルールを明確化し、注意喚起を強化
・トランクの開閉を運転手が管理する仕組みの導入
が必要である。
バス業界全体で安全対策を見直し、利用者の安全確保を最優先に考えた運行体制を整えることが求められる。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ946号より)
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